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046:まずは薬草採集です①


 翌日、俺とスーはギルドからの依頼で草原に来ていた。


『 Eランク依頼(クエスト):薬草採集 』


 ローランドの冒険者として俺の初仕事だ。


「場所はこの辺りだな」


 チャンスイの町から北に進んだ場所には魔力濃度の高い森がある。

 その森の魔力のせいなのか、近くには良質な薬草が多く生えているらしい。


 森はそこまで危険ではないがモンスターも生息しているらしく、危険エリアとしてギルドに管理されている。

 そのため許可なく侵入できるのはCランク以上の冒険者からとの事だ。


 俺のランクは、今はまだ最低ランクであるEランク。


 なので森の近くの草原で薬草を探す事にした。


「スー、家の中で待っていても良いんだぞ? この辺りはモンスターと遭遇する可能性もあるエリアだからな」


 こんな時に移動式の我が家はとても便利で、外壁を要塞レベルの装甲にしてあるから家の中なら安全なのである。

 馬車を借りる必要もないから移動も楽だ。

 レンタルする馬車なんかよりよほど快適だしな。


「わたしはご主人さまのおそばにいたいです。それにご主人さまの奴隷として、立派にお仕事の役に立てるようになりたいのです」


 そう言うと思った。

 だからスーでも安全に手伝えそうな薬草採集を選んだんだからな。


「そうか。じゃあ薬草を集めるのを手伝ってくれるか?」


「はいなのです!」


 スーはふわふわの尻尾を揺らして笑顔でうなづく。


 しかしパーティ恐怖症か……。


 こうしてスーと一緒にいても平気なのはパーティではないからだろうか。


 それともスーが奴隷だと宣言してくるから、口では友達だなんて言っていても無意識にそう認識してしまっているのかもしれない。

 いや、そもそも友達だから平気なのだろうか。


 よく分からないな。


 しかし奴隷制度なんてなくなれば良いと思っているハズの、そんな俺の唯一のパートナーが奴隷の少女だとは……皮肉なものだ。


 リリルルは次の仕事があるらしく、朝から忙しそうにギルドに戻っていった。


 なんでも未クリアの高難易度ダンジョンの調査を任されているらしい。


「今回の調査範囲は比較的には安全らしいですが、ダンジョン自体はかなり危険な所なのですわ。なのでアナタが一緒にいてくれたら心強かったのですけれど……次の調査までにはアナタを攻略してみせますわよ! 覚悟して待つのですわよ、ルード!!」


 との事らしく、少しだけ名残惜しそうな表情だった。


 リリルルもパーティの仕事をがんばっているのだから、俺も目の前の仕事をがんばろう。


「じゃあまずは探す薬草の種類を教えるぞ」


「はいなのです!」


 今回の依頼で指定されていたのはイヴサン草という一年草の一種だ。


 温かくなると赤い小さな花を咲かせるが、その直前が葉っぱにもっとも栄養価が溜まる状態になるタイミングだと言われている。

 ちょうど少し暖かくなってきた今くらいの時期だ。


 薬草としては旬の時期というわけだ。


「これがサンプルなんだが……もっとわかりやすいように実際に生えている物を見てみようか」


「はいなのです!」


 良い返事だな。

 やる気は十分そうだ。


 イヴサン薬はハイエアでもよく使われている薬草だ。

 いろんな回復薬や痛み止め薬に調合される人気の薬草だから俺もよく知っている。


 生息地が幅広く、手に入りやすいのもポイントだろう。


 なので探すのに魔術を使うまでもないのだが、念のためイヴサン草がどれくらい生えているか周囲を【調査】(サーチ)しておく。

 ターゲットを絞ってからあたりを見渡すと、そこら中に隠れているのが見て取れた。


 よし。

 これならスーでも探せるだろう。


 まずは一番近い場所に行き、実物を見つけた。

 ちぎってスーに渡す。


「これだな。この小さい葉っぱの植物だ。今の時期だとこんなピンクの蕾が付いているものが多い」


 毒性などはないから安全だ。


「なるほど。クンクン……少し独特の匂いがするのです。この匂い、覚えたのです」


 確かに独特の匂いがあるが、良く気づいたものだ。

 俺も知識としては知っているが、この場では周辺の草の匂いに混じっているから魔術でも使わないとわからない。


 いや……そういえば、狼系のモンスターは嗅覚が鋭いんだったな。

 獣人もその特色を受け継いでいるというから、もしかしたら集中したスーの嗅覚は普通の人間の100倍以上になるかも知れない。


 するとスーはトテトテと駆け出し、しゃがみこんだ。


「あっ! ありましたなのです!」


 イヴサン草は背が低い植物なので他の雑草に紛れる。

 だから初心者には見つけにくいのだが、それをスーはあっという間に見つけてしまったのだった。


「すごいな……」


「えへへ、わたしすごいのです? 褒めてくれるのです?」


 再びトテトテと駆けて俺の側まで戻ってきたスーは、そう言って頭を差し出すのだった。


「あぁ、すごいぞ」


「えへへ……なのです」


 頭をなでてやるとスーは幸せそうに眼を細め、そして元気百倍といった様子で再び薬草探しに草原を駆けだした。


 これ、今回は俺の出番は無いかもしれないなぁ……。

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