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036:パーティ恐怖症①


「約束のパーティについてだが、リーダーの子が明日ここに来る予定だ。その時に顔合わせも含めて正式に推薦をさせてもらうよ」


「そうか。わかった。特に用事もないからな」


 残りの登録手続きを終えて、晴れて俺は冒険者となった。


 とはいえそれで急にお金がもらえるわけでもない。

 冒険者として稼ぐには依頼をこなす必要がある。


 推薦の話はすでにサヴィニアとエナンから相手のパーティに通してくれているらしいが、まずは今日の日銭を稼がなければならない。


 無一文の身として遊んでるわけにもいかないのでさっそく依頼を探す事にした。


 エナンと一緒に受付カウンターに戻り、俺が受けられる仕事を探してもらう。


「まずはEランクのお仕事からですね。お一人様(ソロ)向けの簡単な依頼もありますよ」


「薬草採取か。駆け出し冒険者の定番だな」


 ダンジョンに入る必要もない簡単な依頼だ。

 これならパーティを組まなくても安全にクリアできるだろう。


「Aランクパーティに加入できれば一気に受けられる依頼の幅が増えるんですけどね。ルードさんには簡単すぎると思いますが、今日はこれで我慢してください」


「いや、仕事が受けられるだけありがたいさ」


 こういった依頼からコツコツやっていくのも楽しいかもしれないな。


 そうしてEランクの薬草採取依頼を受けようとしていた時、ギルドの扉が「バーン!」と豪快に開け放たれた。


 自然とギルド中の視線が集まる。


 そこに現れたのは美しい金髪をなびかせた少女だった。


 わかりやすい豪華な鎧を着ていて、見るからに金持ちっぽい。


 少女はキョロキョロとギルド内を見渡して……そして俺と目が合った、気がした。


 だが相手は見たこともない少女だ。

 勘違いだろうと視線をカウンターに戻す。

 

 ズンズンズンズン……


 ん?

 なんか足音が近づいてきてるような……


 気配を感じて振り返ると、目の前に少女の顔があった。

 吐息を感じるほどの、鼻先が触れ合うほどの距離だ。


「アナタがルードですのっ?」


 少女の大きな紅の瞳に俺の顔が映っている。


「そうだが……」


「やっぱりアナタですのね! 一目見て分かりましたのっ! オーラが違いますわっ」


 グイっと手を掴み引き寄せられた。


 そしてその手が少女の胸元に押し付けられ……硬い。

 鎧が硬いし冷たい。


 なんだろう。

 損した気持ちだ。


「えーと……」


「どちらさまでなのです!?」


 俺の代わりにスーが聞いてくれた。

 少女との間に割ってはいる。


 腰の刺突剣(レイピア)と重厚な装備からして女騎士だろう。


 だが俺に知り合いは少ない。

 そして友達もいない。


「こいつはリリルル。ウチに所属するAランクパーティ『勇猛なる猪牙』(ラッシュタスク)のリーダーだ」


 答えたのはサヴィニアだった。

 いつの間にか女騎士の後ろに立っていた。


「Aランクパーティ……」


「察しの通りさ。君を推薦したパーティだよ」


「そうか。だが顔合わせは明日だと聞いていたが」


「そんなの待ちきれませんわっ! エナンから話を聞いてすぐにでも会うべきだと判断したのですっ!」


「……という事らしい」


 サヴィニアも「やれやれ」と肩をすくめている。

 リリルルはかなりのじゃじゃ馬みたいだ。

 

適応狂い状態(バーサーカーモード)のサヴィニアを圧倒したらしいですわねっ! それも圧倒的な不利な状況を一瞬でくつがえしたとかっ! 『魔術師殺し(メイジキラー)』をどうやって突破したんですのっ!? そもそも魔術師なのにどうしてサヴィニアの刺突が見切れましてっ!?」


 リリルルが俺の手を取り直してグイグイくる。

 質問攻めだ。 


「こら、ルードさんが困ってますよ。落ちついてください!」


 エナンにもなだめられ、やっとリリルルが俺から離れてくれた。


「あら、つい興奮してしまって……ごめんあそばせ!」


 全く悪びれた様子もなくそう言い放つ。

 

「でも決まりですわっ。ワタクシの眼に狂いはありません……今すぐ加入してくださいなっ!」


「えっ?」


「パーティですわよっ。我ら『勇猛なる猪牙』はアナタを大歓迎いたしますわっ!」


 そうか。

 そのためにわざわざ来てくれたのか。


 俺に向けられたリリルルの手。

 その手を握り返さない理由なんてなかった。


 新しいパーティ。

 そこが俺の新しい居場所になるんだよな。


 そう考えると過去の記憶が蘇ってくる。


 リーダーだった勇者トラン。

 舞うような美しい剣技を自慢とし、薔薇の勇者を名乗る男。

 ちょっとイタい言動もあったが、それでも周りを納得させる実力があった。


 トランの相棒である武闘家のスフォウ。

 モンスターを拳一つで仕留めるボーイッシュな格闘の達人。


 メイ。

 無口だったり口が悪かったりしたけど、攻撃魔術を極めた魔女っ娘な魔術師。


 シーン。

 腹黒だが貴重な回復魔術を使いこなす美しい聖女。


 そして俺の代わりに入ったパフ。

 あったことはないが、補助魔術の専門家で俺なんかより高レベルの存在らしい。


 Sランクパーティとして活躍しているのだろう。

 そこに俺の居場所はなかった。


 あ、ヤバ。

 なんか思い出したら気持ち悪くなってきた。


「オエエエエエエエ…………」


「ぎゃーーーーですわっ!!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が卑屈でないところ。自信と謙虚さが両立している。 [気になる点] やっぱり主人公の消された過去が気になりますね。 [一言] ゼロの魔術師改めゲロの魔術師に(泣)
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