030:冒険者登録テスト 実力測定①
「では、次は実力測定……魔術の実技テストに移りましょう。こちらが登録テストの本番ですからね」
そうして俺たちはギルド内の中庭のような場所に案内された。
「いつもは先ほどの部屋で行うのですが……ルードさんの魔力は底知れないですから。念のため野外で行います」
俺の魔術が暴発するとでも思われているのだろうか。
それは心外だ。
というか信用ないな、俺。
もしかして水晶2つも壊したの、根に持たれてるのか……?
「というわけで、用意しました。テスト用のターゲット、スライムボールのファイブくんです」
少しはなれたところに的が用意されていた。
平べったく加工されたスライムボール……よく魔術の練習に使用されるターゲットだ。
これはハイエアでもよく見かけたな。
エナンが指さしたファイブくんは見たことのない金色をしているが、珍しいタイプだろうか。
「ルードさんにはあのターゲットを魔術で攻撃してもらいます。魔術の内容は基本の攻撃魔術ならお好きなものを選んでいただいて大丈夫ですよ。属性は問いません」
「あれを壊せば良いのか?」
このスライムボールはその名の通り、スライムの粘液を素材に作られる。
スライムは魔術攻撃に弱いモンスターであるため、スライムボールも基本的には魔術で簡単に破壊できる物だ。
そしてスライムの粘液は魔力を流しにくい性質も持つため、命中した箇所が分かりやすい。
だから魔術の威力ではなく、その精度を確認するためによく使用される。
「良いですよ。壊せるものなら?」
エナンは自信満々にそう答えた。
予想とは違う反応だ。
いや、なんだかさっきも見た気がするな。
自信満々のこの表情。
笑顔で固定されてると思いきや、意外と感情がわかりやすいぞ、この子。
「簡単には壊れないのか?」
「フフフ……そうです。ファイブくんは簡単には壊れません! なぜならファイブくんはゴールデンスライムから作られた超特別なスライムボールだからです!」
ゴールデンスライム……。
聞いたことがあるな。
たしか危険度Aランクに指定される珍しい小型スライムだ。
通常のスライムはEランク程度で、スライム系上位である巨大なスライムキングですらCランク程度であることを考えれば、ゴールデンスライムのその危険度がわかる。
その特徴は金色のボディと、そして物理攻撃に強いスライム系モンスターにおいて珍しく物理攻撃にあまり強くないという事。
だがその代わりに魔術に対しては圧倒的な耐性を持つと言われている。
そして同時に強力な魔術攻撃も使用してくるため、小さなスライムだと油断してかかると痛い目に合うというワケだ。
発生するのが極めて珍しいモンスターだからダンジョンで出会ったこともないし、実際に戦ったこともないが、その珍しさ故に噂にはよく聞く不思議なモンスターである。
「ゴールデンスライムから作られたボール……つまりゴールデンボールであるファイブくんはSランクの魔術師でも大技を使わなければそう簡単には破壊できませんよ」
「なるほど。基本の攻撃魔術での破壊はほぼ不可能というわけか……」
「そうです。絶対に壊れません。……ファイブくんなら魔見水晶の仇を取ってくれるはずです! ゴールデンボールですから!!」
やっぱり水晶を壊したことを根にもってた!
「えーと、壊れないなら……どうすれば合格になるんだ?」
「魔術の制御が出来ているかを目視で確認するテストですので、ターゲットにしっかり命中させればOKですよ。ファイブくんは絶対に壊れませんが、表面に魔力に反応するジェルが塗ってあるので命中した場所の跡が残る仕組みになっています」
「なるほどな。やはり威力より精度の試験か」
合格するだけなら魔力量を抑えた魔術で精度を重視すれば簡単だが……
「できるだけ真ん中を狙えると高得点ですが、もちろん破壊しても良いんですよ?」
エナンがニヤニヤしながらアオってくる。
この笑顔は絶対にアオリの笑顔だ。
思ったより根に持ってるな、この子……。
だがそこまで言われると、黙ってはおけないな。
俺にだって魔術師のプライドみたいなものがある。
「じゃあ本気で攻撃するけど……本当に大丈夫か?」
「大丈夫です! 今度こそぜっっっっったいに壊れませんから!!」
「……なんか不安だな」
「ほ、本当に大丈夫ですから!!」
ついさっき似たようなやり取りをした気がするんだよな……。
いや、エナンを信じるか。
自分の実力を知るには良いチャンスだし。
力をセーブする必要もないらしいし、思いっきりやってみよう。
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