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023:Aランクなんて……!?⑥(追放サイド)

 メイさんの地獄の炎はゴブリンゾンビキングの皮膚を焼いた程度で消え去りました。

 そしてその火傷すらも一瞬で再生してしまいます。


 弱点である火属性での強力な魔術……ここまでのゴブリンゾンビなら一撃で灰にできたかもしれませんが、キングにはそれも通用しないようです。


「な、なんでだ……!? 私の【獄炎球】(フレイムインフェルノ)で死なないだと!? いつもならもっと巨大なモンスターでも消し炭になるのに!!」


 ダンジョンの魔力による影響とは言え恐ろしい耐久性能です。

 とても普通の個体とは思えません。


 魔力の限り再生する肉体と無尽蔵の体力、そして痛覚を失ったことによる肉体の限界を超えた凄まじい攻撃。


 ゴブリンゾンビキング、その危険度はAクラスの中でも間違いなく上位でしょう。


「ゴブブアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


「んぎゃうぅぅ!?」


 そんなキングの雄叫びの衝撃波だけでメイさんは吹き飛ばされ、へたりこんでしまいました。

 恐怖からか絶望からか、失禁してしまっています。


 完全に戦意喪失です。


「仕方ありません……私の切り札を使いましょう」


 シーンさんが選んだのは仲間の回復ではなく攻撃でした。


 胸元から聖水入りの瓶を取り出し、中身を宙に散布します。

 そして杖を胸に抱いて祈りの言葉を紡ぎました。


「おぉ、我らを守りし母なるエイロスよ、その祝福にて御力を分け与えください……」


 聖なる力を持つ光魔術はゾンビ系……アンデッドの最大の弱点です。

 それは火よりも強く効果を発揮します!


 光属性の攻撃魔術は魔力の消費がとても大きいため最後の切り札として温存していたのでしょう。


 もはや頼れるのはこの攻撃のみです。

 私も【魔力強化】を最大にして出来る限りの支援を行います。


「不浄なるモノよ、神の鉄槌を受けよ!! 【浄化の聖光】(ピュリファイ)!!」


 聖水が輝きを放って蒸発していき、渦を作ります。

 その渦は光の柱となってキングを包み込み、そして爆ぜました。


「ゴブゴァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 今までにない大きな悲鳴です。

 効いている……けど、倒しきれていない!!


 ですがキングの全身が大きな火傷のように爛れています。


 今までより傷の再生が遅いようです。

 さすがは光属性です。


 これならいける!


 希望が生まれた……と思いました。

 本当に、一瞬だけ。


「効いています! これならシーンさん、もう一発で……」


「あはぁん……もう無理ですぅ~……」


 シーンさんは魔力を使い切って何故かちょっとセンシティブな感じで動けなくなっていました。


 終わった!!


 私は死を覚悟しました。

 私たちにこの敵を倒す手段などもうありません。


「ゴブゴブァァァァァァァァァァ!!」


 キングが今までと違う雄叫びを上げると、その背後からゴブリンゾンビたちが現れました。


「なっ……仲間を呼んだ!?」


 こちらは私以外もう誰も動けません。

 完璧なほどに絶望的な状況で……私にできる事はただ1つでした。

 

「……いや、これはチャンスです!!」


 聖水のダメージが残っているようで、キングの動きが鈍っています。

 仲間を呼んだのはそのせいでしょう。


 自分が動けないから動かせる手下を呼んだのです。


 諦めるのはまだ早かった。


「みなさん、今のうちです!! 今度こそ撤退しましょう!!」


 キングが動けないこの瞬間だけが逃げるチャンス!!


 ですが肝心のパーティメンバーの様子は……


「俺は勇者なんだ……勇者なんだぞぉ……ぶつぶつ……」


「私の腕がぁ! 腕がぁあああ!! ああああん!!」


「……………(チーン)」


「んっ、はぁ……魔力の使い過ぎで動けません~」


「あ~~~~もうっ!! ()()()くらいはしてくださいよねっ!!」


 私は【拘束】(バインド)でみなさんの体を絡めとり、自分自身を残りの魔力全てを使って強化しました。

 強化するのはもちろん「脚力」特化です。


 安全運転は諦めてもらいましょう。


「ゴブゴブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!」


「ゴブァッ!」「ゴギャアア!!」「ゴブブブブブッ!!」「ゴブゥゥゥゥン!!」


「「「「「 ぎゃああああああああああああああ~~~~~!!!!! 」」」」」


 私は確信しました。 


 最初にトランさんが言っていた言葉……前任者の雑用係の人が「パーティの強さについてこれなくなってパーティを抜けてしまった」の本当の意味が。


 本当は、雑用係の人が「パーティがあまりに低レベルすぎて付き合いきれなくなって愛想をつかして離れていってしまった」に違いありません!!


 絶対にそうです!!


 あぁ~~~! 助けてルードさま~~~!!




 こうして私は顔も知らない救世主さまに祈りながら出口を目指して走り続けたのでした。


 生きて帰ったらこんなパーティ抜けてやると心に誓いながら……。



 *


 *


 *




 高難易度Aランクダンジョン『邪龍の呪穴』攻略報告。


 攻略パーティ=王国指定Sランク勇者パーティ『黄金の薔薇』(ゴールデンローズ)。メンバー5名。


 最高到達地点=第6層。


 討伐モンスター記録=スケルトン:1体、ダークバット:3体、ゴブリンゾンビ:5体、カースドワーム:1体。


 撤退理由=敗戦:ゴブリンゾンビキング。


 負傷者=5名。

 死者=なし。


 攻略結果:大失敗。

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― 新着の感想 ―
[一言] ざまあ!の一言です。ふう〜、スッキリした〜w 一刻も早くパフさんが逃げることをお勧めしますw なんというか、物事うまく行く時って、人間の真価が試されますね。
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