022:Aランクなんて……!?⑤(追放サイド)
「【拘束】!!」
帯状に形成した魔力で本来は敵の動きを封じるための魔術です。
今はそれを応用してみなさんの体を引き寄せてゴブリンゾンビキングから距離を取ります。
「【光壁】……!!」
そして光の壁で道を遮断。
キング相手では簡単に壊されるとは思いますが、せめてもの時間稼ぎです。
ゾンビ系なら光は苦手なハズですから。
「良かった、生きてます……」
下手したら全員死んでるレベルの攻撃でしたが、みなさんは衝撃で気絶しただけで無事なようです。
悪運が強いみたいですね。
もしかしたらこの悪運だけでSランクまで登り詰めたのかもしれません。
「全部あとで請求しますからねっ!!」
用意していたありったけの回復薬を使って態勢を整えます。
「【女神の治癒】!!」
先に目覚めたシーンさんの回復魔術でなんとかみなさんも復活です。
ですが全体回復の大技によってシーンさんが大量の魔力を消費したため、残りの魔力薬も切れてしまいました。
「チッ、油断したぜ! 奇襲とは卑怯なマネをしやがるな!! だがもう油断はしない!!」
いよいよ光の壁が破壊され、キングがこちらに向かってきます。
ですが態勢を立て直すのに必要な時間は稼げました。
「俺さまはSランクなんだ! そうだ、リーダーは俺さまだ! アイツじゃない。アイツがいなくなったから勝てないなんてことはあり得ないんだよ! 絶対クリアするんだ……絶対は俺さまだ!!」
トランさんもかなり焦っているようでブツブツと呪詛のようにつぶやいています。
「行くぞぉぉぉ!! スフぅぅぅぅぅ!!」
「は、はい! トランさまっ!!」
ですが気合でなんとかなる相手ではありませんでした。
「ぐっはああああああああああああああああああああ!?」
「ぎゃぁああああああああああああああああああああ!!」
トランさんとスフォウさん、突撃した前衛の二人はキングの圧倒的な怪力によって返り討ちにされてしまいます。
たったの一撃で再びアッという間にボロ雑巾のようにされてしまいました。
「うげぇ……! は、はひゅ……死、死ぬぅ……!! なんでだよぉ……こんなモンスター、いつもなら俺さまの剣技で一撃だろうがよぉおおおお!!」
「あっ、あぁ、あだしの腕がぁあああああああああ!! 痛い、痛いぃ……!! なんでよっ!? ケガなんてしたことないのにぃぃいいい!!!」
今度は気絶しなかったせいで、逆に大怪我の激痛を味わう事になってしまいました。
「ぢ、ちぐじょ……!! おいパフぅぅう!?!? しっかり補助しやがれええええええ!!!」
「そうよそうよぉっ!! アンタのせいでええええええええええ!!!! 腕があああああ!!」
「んなっ……!? やってますよっ!! 全力で補助していますっ!!」
戦闘開始と同時に、ちゃんと2人ともに【身体強化】をかけています。
けれど戦闘の技術まではサポートできません。
こんな強敵を相手に真正面から攻撃すれば反撃されるに決まっています。
敵からの攻撃も防御するのではなく避けるべきだし、そもそもこんな体格差を考えたら防御なんて発想は普通はできません。
強化していなければ2人とも最初の一撃で死んでいてもおかしくないです。
それにトランさんの剣がキングの腹を裂くタイミングでは瞬間的に【威力増加魔術】を剣に乗せました。
スフォウさんの拳には【身体強化】とは別に【硬化魔術】もかけています。
完璧な連携ではないにしても、今の私にできる最大の強化状態での2人の攻撃だったはずです。
それでもゾンビ化してるキングに致命傷は与えられませんでした。
あたえた傷も瞬時に再生して……そしてキングの反撃を受けたのです。
モンスターの死体を継ぎ接ぎにして作られた不気味な棍棒を振り回してのひと薙ぎでした。
トランさんは剣でガードしますが、その刃ごと吹き飛ばされて利き腕を損傷。
肩が砕けたのでしょう。
もう剣を持つ事すらできない様子です。
スフォウさんは自慢の拳で受け流そうとしたみたいですが、その結果は両腕とも拳の骨を砕かれてしまいました。
一瞬にして戦意を失い泣きわめいています。
「2人とも何をやっている!? くっ……私が仕留める!!」
次に詠唱と共に自信満々で放たれた火球はメイさんの魔術です。
「『我が血に滾り燻る灰よ、舞い踊りて地を焦がせ。太古の炎よ今甦り、灼熱業火の地獄の炎と化せ』……【獄炎球】!!!!」
メイさんが使える最上級の魔術なのでしょう。
完全に勝利を確信したメイさんの顔は、けれど次の瞬間には真っ青になっていました。
「フハハハハ!! 闇の炎に抱かれて死ね……バカなっ!!??」
地獄の業火に焼かれても、ゴブリンゾンビキングは健在でした。
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