016:Aランクなんて余裕だぜ!①(追放サイド)
~ トラン視点 ~
俺様はSランクパーティ『黄金の薔薇』のリーダー、勇者トラン様だ。
俺様たちは今日、王様からの依頼で受けたAランクダンジョンの攻略に来ている。
正直に言えばAランクのダンジョンなんて余裕すぎて俺様たちの出る幕じゃねぇんだが、今回は特別に、パーティに新しく入る仲間であるパフのための実力テストも兼ねてクリアしてやることにしたのだ。
全く、俺様の器のデカさに王国の連中は感謝してほしいものだぜ……。
というわけでAランクの中でも最高難易度と言われているらしいダンジョン『邪龍の呪穴』の入口まで来たのだが……。
「うぅ……飲み過ぎたぜ……」
二日酔いである。
昨日のパフ歓迎パーティで調子に乗って飲み過ぎたらしい。
こんなに体調が悪いのなんて久々だぜ。
クソッ、身体がダリィ~……。
いつもの装備がめちゃくちゃ重たく感じるぜ……。
「う~ん、私も飲み過ぎたみたい……なんか体が重たいしぃ……」
「魔力が乱れる……絶不調なり」
「もう、しっかりしてください……と言いたいのですけど、私も調子よくないみたいです。うぅ、私としたことが二日酔いだなんて……」
パーティの仲間たちも調子が悪そうだ。
この全員が二日酔いなんてかなり珍しい。
特に聖女シーンは普段から「これも神に身を仕える者の責務です♪」とか意味不明な言い訳しながら浴びるように飲んでいるからな。
だからめちゃくちゃ酒豪で、二日酔いしているところなんて今まで見たことがないくらいなのに……。
もしかして昨日の酒に何か変な物でも入ってたんじゃないだろうな?
最高級であるウルトラエールとか言っていたが……クソ、妙な密造酒でも飲まされてないだろうな?
チッ、もしそうだったらムカツクぜ。
このダンジョンをクリアしたらあんな店ぶっ潰してやるからな。
勇者様の権力をなめんじゃねーぜ。
超一流だかなんだか知らないが、俺様は超超一流なんだ。
俺様の実力と名誉と権威でザコ共の店なんていくらでも潰せるんだよ。
ルードの冒険者登録を無理やり破棄させたみたいにな……。
「よーしお前ら、いつまでも二日酔いしてるんじゃねぇ!! さぁ、ダンジョン攻略の時間だぜ!! 気持ちを切り替えるぞ!!」
「はい! トラン様!」
「了解」
「がんばりましょう」
俺様はたったの一言で仲間たちのダラけた雰囲気を一気に切り替える!!
これが俺様のリーダー力ってヤツだ。
この力で俺様がパーティをSランクまで育て上げたのさ。
今まではここに口をはさむヤツがいたが、それももういない……。
アイツなら二日酔いのままの冒険なんて、絶対に反対しただろうな。
だが、今やこのパーティは完全に俺様のモノだぜ!!
ヒャッハー!! 気持ちが良いぜ!!
……それに俺様たち『黄金の薔薇』はSランクパーティだからな!
Aランクダンジョン程度、二日酔いしてても楽勝なんだよ~!
クソザコ心配性根暗ヤローはさっさと知らない場所で野垂れ死んでくれよな~~~!
「あの……」
と、勢いよくダンジョンに突撃しようとしてたところでパフが小さな手を挙げた。
なんだよ、人が気持ちよく突撃しようとしてたのに……。
と、思っても口に出さない俺様のやさしさ、イケメン過ぎるぜ。
「ん? どうした、パフ。お前も二日酔いか?」
そして体調を心配する振りまでする気遣いっぷり、これもイケメンの責務だ。
見たところ俺様たちより元気そうなんだが……。
昨日はこの偉大なるSランクパーティへの加入初日だったし、歓迎パーティの主役とは言えさすがに緊張してあまり飲めなかったのかも知れないな。
「いえ、私は平気です。ですが、えっと……今日は止めておきませんか?」
「あん? 止めるって何をだ?」
「ダンジョン攻略です。今日は止めておいた方が良いと思います」
「…………ハァ? 何を言ってるんだ、急に」
俺は思わずイラっとした態度を出してしまった。
なぜならパフが、せっかく追放したクソ野郎と同じようなことを言い出したからだ。
クソが!!
一番イラつくんだよ、こういうのが!!
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