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010:夜の一人旅①


「夜の一人旅ってのも、悪くないなぁ」


 俺は心地よい冷たさの夜風を体に感じながらつぶやいた。


 所属していたSランクパーティを追放されて冒険者登録まで破棄された俺は、しかたがないので今まで活動してきた国を抜け、隣の国へと向かって一人歩いている。


 俺たちの住む巨大な大陸『ペイジオン』には大きく分けて3つの領土がある。


 1つ目、大陸の北半分は魔界と呼ばれる魔王の領地だ。

 ここは普通の人間が立ち入ることなどできないモンスターの巣窟であり、最上級危険領域。


 2つ目、残った大陸の南の、その西側がハイエア王国領。

 これが俺が今までいた王国領だ。


 3つ目、ハイエアのその東側がローランド帝国領。

 今、まさに俺が向かっている場所がここだ。


 実質的な人類の活動地域がハイエア王国とローランド帝国であり、人間界なんて呼ばれる事もあるのだが、この2国は昔から犬猿の仲であり人類を二分している。


 そして広大な魔界という領域がどちらの領土とも接している事もあり、冒険者という職業はどちらの領内にも存在する。

 だがそれを管理するギルドはそれぞれ別々になっている。


 つまり……ハイエアのギルドでは冒険者としての資格を剥奪された俺だが、ローランドのギルドで新たに冒険者として登録すれば、また冒険者になれるハズなのだ。


 というわけで俺はローランドを目指しているのである。


 最後にいた場所がハイエアの東側だったのは幸運だな。

 これなら歩けば1か月くらいでローランドにたどり着ける。


 基本的に夜という時間帯はモンスターが活発になるため非常に危険なのだが、ダンジョンの外のモンスターなら俺1人でも対応できるだろう。

 魔界はともかく、ここ人間界においては魔力が濃いダンジョンにこそ強力なモンスターが生息しているものなのだ。


 なので安心して、ゆっくりのんびり歩くとする……が、問題は食料だ。

 今ある手持ちはカッチカチのパンと少しの水だけ。


「うーん、節約しても3日分って感じか? どこかでニクかサカナでも調達するか」


 俺の脳内に記憶された地図によれば、もう少し南東に進んだあたりに小さな森があるハズだ。

 とりあえずそこで調達するとしよう。


「……というか、トランたちはちゃんと冒険の準備とかできてるんだろうな?」


 地図で思い出してしまった。


 いつもダンジョン内でのルート選びは俺がやっていた。

 ルート選びはダンジョン攻略の成功率に直結する重要な項目なので普通はリーダーが行うのだが、トランたちにとってはただの雑用の一部だったから俺に任されていたのだ。

 

 ちゃんと安全で消耗の少ないルートを選ばないと、いくら腕の立つパーティでもさすがに厳しい冒険になる。


 そもそも出発前のアイテムの管理から俺がやっていた。

 ダンジョン内ではいろいろと道具が必要になるが、光源を確保するための松明(トーチ)くらいは持ち込むよな?


 いつもは代わりに暗いダンジョン内を照らす【照明魔術(ライト)】を俺がやっていたが、魔術師のメイは攻撃特化らしいからできないんだっけ?

 よく「小細工はお前にこそお似合いだ」とか嫌味を言われたてたな。


 聖女のシーンも回復魔術のために魔力を節約したがる……魔法の属性を考えると光系は使えるハズだけど……使っている所を1度も見たことがない気がする。


「……って、ダメだな。もう仲間じゃないんだから心配してもしょうがない」


 ついパーティの心配をしてしまうクセがまだ抜けていないらしい。

 

「……さすがに、地図くらいは読めるだろう」


 トランたちが俺抜きでまともにダンジョンを攻略している姿が想像できないのは、きっと俺が心配性すぎるだけだろう。

 なにせ、彼らはもうSランクの勇者パーティなのだから。


「地図も読めない勇者なんて、さすがに笑えない」


 俺は一人で苦笑した。


「それに新入りのメンバーもいるんだ。サポート専門の魔術師なら俺と同じか、それ以上に上手くやるだろう」


 全く、余計な心配だよな。

 改めて気持ちを切り替えようとして、何かが聞こえた。


「だ、だれか……助けて…………」


 かぼそく、消え入りそうな少女の声。

 それを俺は聞き逃したりはしなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 多分出来ない筈。雑用って、一番地味なのに、やらないと、一番危ない事が多い。 地図を見るにしても、ライトの魔法を使うにしても、アイテムを買いに行くのも、地味だけど大事な事。 こういう地味な…
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