金曜日の夜
クラブで踊りまくった女に水を渡すのが俺の仕事だ。今日も最高だったよ、調子はどうだい、いい尻だね、俺は女に睨まれる。女というのは清楚で、謙虚で、オナラもしない、ここではそういう幻想を簡単に打ち砕いてくれる。おい、ちょっと、目だけの合図、俺が女達から名前で呼ばれることはない。こんなところで働き続けるなんて、マゾなのかもしれないと思う。
俺の前で裸になっている女が、酒を持ってこいという。俺はその裸を見て、何も感じない。テレビで裸族を見ているような感覚だ。俺はフロアに出て、バーテンに酒を頼む。ガンガン鳴っている音楽の中、男が女に声を掛け、腰に手を回しているのを見る。バーテンが瓶に入った酒を俺に渡す。こういう時には瓶の酒を渡すことを、バーテンは心得ている。俺はそれを受け取って、女達の元に戻る。
俺が戻ると、何で私の酒がないのかと、何人もの女達が騒ぎまくる。俺は一人の女に酒を渡し、またフロアに戻る。背後から要領の悪い男だと罵られながら。
俺がまたフロアに顔を出すと、バーテンはやれやれという顔をした。俺は持てるだけの酒を出してくれと頼んだ。カウンターの、荷物もまともに置けないような机に肘を掛けて、酒を待った。床に散っていた汗だか酒だか分からない水滴を、靴で踏んだ。
バーテンが気を利かせて、ショットグラスを俺の前に置く。俺はそれを一息に飲んで、ライムを齧る。持てるだけの瓶を指に挟んで、また、女達の元に戻る。
俺が戻ると、もう何人かの女はいなくなっていた。俺の渡した酒がヌルいと一人の女が言った。汗で髪が額に張り付いている。女からは香水と汗の混ざった匂いがしている。
俺の渡した水が、テーブルの上に、床に、化粧台の前に、転がっている。太い芋虫みたいだ。朝方、その水を処分することが俺の仕事になるだろう、と思った。




