シンデレラになったら幸せになれる そう思ってた時期が私にもありました その4
優雅な音楽が流れる広間に相応しい高貴な時間が流れる。
その中でアルフォンスは彼の元に集まった人々と話した。正直なところ全員がアルフォンスが中流貴族であるとか養子の身分とか、そういう身分に関することを気にしていないようだった。
非常に楽しい時間だった。
「どうされたのですか? いきなり涙を流されて」
困惑したように一人の紳士が訪ねた。
「いや……こんなに素晴らしい時間があって良い物かと思いまして……貴族同士の会話とは、空間とはこういうものであるべきだと感動したのです! 『エロゲ』も無ければレイピアも必要が無いなんて!」
「良くわかりませんがご苦労されているのでしょう。無理もありますまい。あまりにも偉大な姉上がおられるですから」
「そうです……あの姉上がいるので……!」
うんうん、と紳士に背中を撫でられていると、一つの演奏が終わり、次の演奏が流れ始める。
「ああ、そろそろ踊りの曲ですな。さあシンフォニア様、貴方も踊られたらどうですかな?」
「いえ、大丈夫です。それより姉上を見守らなければなりませんもので……」
「それはそれは……さぞかし引っ張りだこでしょうからなあ」
「そうでしょうがまずは王子と……あれ?」
ふとアルフォンスは遠くに王子の姿を見る。
優雅そうにしているが辺りを見渡して誰かを探しているようだった。
いや、そういえばとアルフォンスは周りを見渡す。
「あ! 逃げたな!」
何ということだ!
どこにもエリスの姿が無いではないか!
「どうされましたかな?」
「いえ。少し探し物がありまして。これにて失礼します! ありがとうございました!」
アルフォンスはせかせかと会場を歩いてエリスを探した。
どこにも居ない。
やはり会場には居ないのだろう。
使用人として付き添ってるクレアにも聴いたがよくわからないとのことだ。
じゃあ何処に?
いや……この城の何処かにいる筈だ、とアルフォンスは会場を抜け出した。