シンデレラになったら幸せになれる そう思ってた時期が私にもありました その3
夕方を過ぎに会場となる大広間へと移動すると、既に大勢の貴族がそれぞれ話していた。どれも上級貴族か王族か、それとも何かしらの王宮に所縁のあるものだろう。中流貴族であるシンフォニア家の者がいること自体が場違いだろう。
「あっ! シンフォニア様! シンフォニア様ですわ!」
しかし一歩会場に入ると、周りから一気に貴族達がエリスに寄って来た。
「本当に出席なされているのですね! ずっと欠席なされていたのでお体を壊されていたのかと心配で心配で……」
「シンフォニア家のエリス様とその御兄弟のアルフォンス様ですな! よくこの『何とか』を愛でる会に!」
「覚えておられますかな? かの戦場では……」
「しかし御労しい限りです。この数年の間不幸にも宴の日にばかり10人も祖父母を亡くされたと聞いております故……」
「あ、あはは! どうも、麗しゅう。私は元気です。皆様とこうして会えて感謝感激、光栄ですわ!」
慌てたようにエリスは笑顔を向けた。
「ああ、そんな! 私こそ光栄です! ああ……あまりに嬉しくて涙が!」
「今日の『何とか』を愛でる会は何と歴史的なのでしょう……子供達に、いや、代々伝えなくてはなりますまい!」
「この感動、あの戦場の奇跡が目に浮かぶようですぞ!」
「何と御強い! この数年に大切な祖父母を10人も亡くされたというのに!」
「そ、そんなことございませんわ! お、ほほほっ!」
貴族王族に囲まれながら話していると、突然照明が消えた。
「皆の者、よく参られた! 今宵は我が国を代表する花、『何とか』を愛でようではないか!」
中央にライトが当てられると会場に拍手が沸いた。
「さて皆も存しておる通り、今宵はあの英雄のエリス=シンフォニア殿が出席しておる! 数多の流血を防いだ素晴らしい英雄が! 大いに歓迎しようではないか!」
次にエリスへとライトが当てられると、更に大きな拍手と歓声が沸いた。それに答えるように固い笑顔でエリスは手を振る。
「さあ固い挨拶はこれくらいにして大いに楽しもうぞ! さあ、皆の者グラスを取るのだ! 乾杯!」