姉上が英雄なんだけど働かないし意味不明なことを言うんだがどうしたらいいんだ その2
数百年前から続く中流貴族であるシンフォニア家の門を一つの馬車が通る。この馬車には護衛を含めた何人かが載っているわけだが、そのうちの二人こそ、この名家の当主とその第一妃である。
特に絨毯も引いていない地面に降り立つ当主は、迎えるメイドたちの横を堂々と進み、開かれた玄関先の扉へと進む。
「おかえりなさいませ、お父様。本日もご機嫌麗しゅうございます」
正面に出迎えるのはエリス=シンフォニア……このシンフォニア家での5番目の娘こそがあの戦場となるべき地において国家を救った英雄である。
「おかえりなさいませ。父上。この度は姉上が……」
その中央から外れたところで少し縮こまる青年はアルフォンス=シンフォニアである。6番目の息子であるが彼はとある事情により引き取られた養子である。
「二人とも出迎えご苦労! アルフォンスよ、ほかの兄弟は出払っておるのだな!」
「父上もご存じの通りです。もしも屋敷にいるのならこの私が首根っこを掴んでも連れて来る所存です」
「ははは! こやつめ!」
「それで父上、王とはどのようなお話を? やはり今すぐ首根っこを掴んで王宮に連れているべきでしょう。さあ、丁度横におりますから、さっさと掴んでいきましょう! 今なら馬車もありますよ!」
「おう、当然王には断ると言ってやったぞ!」
「……はい?」
「ははは! 次期王になる王子など、所詮は我が娘に相応しいわけがなかろう! もっと数倍……いや、もっと数百倍は良い者を連れてこなければ交渉の余地もなし! 我が娘が欲しければ更に数千倍は持って来い!」
「父上、何をおっしゃっているのかわかっておられるのですか! 王子ですよ、王子! この国最高の地位にしてこれ以上の縁談の相手は存在しませんよ! シンフォニア家繁栄のためにも、今からでも戻って婚姻を結び直すべきです!」
「ははは! 冗談を言うようになったな! 良いぞ! 我が息子よ!」
「いや、これのどこが冗談に聞こえるんだよ! どれだけの条件下分かってんのか!」
「すまないなエリスよ、私としたことがこんな婚姻を話だけでも進めてしまうとは! しかしいずれ良い時期が来るのだというのに!」
「いえ、お父様。信じておりましたから……」
頭を撫でる当主、まるでこの結果が当然という風に撫でられるエリス。
そしてその光景を微笑ましく賢明であるという風な使用人の視点。誰かが拍手を始めるとそれは大きな拍手へとすぐに変わった。
「分かってはいたが……父上は親馬鹿もいいところだった……ってか何だこの拍手は? 俺の方が間違ってるのか? ……いや、さすがにそれはない……それはない……」
その中で一人、アルフォンスは頭を抱えていた。