ゴーレム言えるかな? その1
素晴らしい日差しに包まれた正午過ぎ。
一人で使うにはあまりにも広々とした、これまた素晴らしい部屋に二人の姿があった。
「そろそろ新キャラが欲しい頃じゃない?」
その一つの姿の主であるエリスは豪奢なベッドに寝ころび漫画を開いてポテチを食べながら、怒りに震えるアルフォンスに言った。
「よくも意味不明なことを言えたものですね!? 今何時だと思っているのですか!? もっと早く起きて仕事をしろと何度言えばわかるのですか! 夜中まで起きて昼まで寝ていることがどれだけ使用人の士気や忠誠に影響を与えるのかわかっているのですか!」
いつも通り昼間までエリスは寝巻で横になっている。それがやはり我慢ならないのだろう、アルフォンスは今日も怒りを隠そうとしていない。
「それより新キャラが欲しい頃でしょ? 新キャラが居ないのマンネリになるの、分かる? マンネリよマンネリ! やっぱ新キャラがいるの……それも日常を壊すくらいの新キャラが! ああ、新キャラってのは新しい登場人物のことね! ねえアルには分かる? キャラってキャラクターの略で登場人物ってこと! 使用人でも何でも、新しい風が必要なの!」
「そんなこと聞いてねえ! 大体新しい使用人を雇うのも却下だ! 使用人を一人雇うのにどれだけコストが掛かると思ってんだ! 使用人の為の寝室だって無限にあるわけじゃねえんだぞ! つまらない事を言ってないで起きやがれ!」
「うーん……あっ! じゃあ起きたら新しいキャラを登場させていい? 資金は全部私が出すし部屋も全部どうにかするから!」
「……全部?」
「全部! 何から何まで!」
思わぬ提案。
継続は力なり、アルフォンスはとにかく毎日説教するものだな、と思った。
「……わかりました。しかし雇用から解雇するまで、私は一切手を出しませんし他の兄弟にも手を出させません。姉上お一人で給料設定から仕事の形態まで全て考えてください」
「当然の当然! 期待してなさい! 新キャラを明日には……いえ、次の投稿までにはどうにかするんだからね! 分かっている? 大体次の投稿だと別のシーンになってるか切りがいいところにしてるの! ああ、アルはそういう投稿したことないもんね、分からないもんね! ざーこざーこ♪」
「……では姉上が使用人を雇用する日を楽しみにしております。失礼します」
普段なら既にレイピアを手に取りエリスに突き立てている頃だが、その時アルフォンスは踵を返して部屋から出ていった。
これは別段、飽きれたからでもエリスが口先だけだと失望したわけでもない。
エリスには不思議な行動力がある。故に少なくともエリスは『間違いなく使用人を雇用するだろう』、という確信がアルフォンスにはあった。なれば、約束通り彼女は手続きから給与の設定や住居の手配などをすることだろう。十分事務的に。そして使用人の管理とは、まさに『貴族の仕事』である。
この約束とは『貴族の仕事をする』ということに他ならないのだ!
それだけではない。
雇用するにあたって面接や出自等の調査を考慮すればエリスの能力を考慮しても時間が掛かる。仕事をしなければならない。
つまり、少なくとも『仕事をしている振り』くらいはこの時間だけはするということであり、貴族の仕事の経験を積むとうことに他ならなららない。
これそこがアルフォンスが貴族としてエリスに望んでいることなのだ!




