シンデレラになったら幸せになれる そう思ってた時期が私にもありました その6
「ああ、どこに居られたのですか? やはり御調子が悪いようでしたら部屋をお休みなられる用意させましょう」
会場に戻ってすぐに王子は心配そうにエリスに寄って来た。
「いえ。少し夜風に当たって来ただけですわ。素晴らしいお城でしたので夜の風景でもと」
「でしたら後ほどで良ければ城を案内しましょう。是非アルフォンス様と共にお泊りになられてください」
「そうしたいのも山々なのですが……急用が出来ましてすぐに帰らなければならなくなりまして。申し訳ございません、せっかく招待して頂いたのに……」
「そうですか……貴女ほどの方を引き留めてしまっては我が国の民に顔向けが出来ないでしょう。お気になさらずに。必要でしたら軍馬をお使いください」
「いえ、そこまでは大丈夫です。それに……挨拶をしないといけないのは王子だけではありません。なので我儘を言っていいのなら少しだけ会場を御貸しください」
「ええ、御好きに使ってください。どうしたらよろしいでしょうか……」
会場がいきなり暗くなり、その中で優雅な音楽だけがそのまま流れ続けていた。
「会場にお越しの皆様! 残念ながらエリス=シンフォニア様が急用とのことで急遽帰られるとのことです」王子は会場の中央で言った。「最後にエリス様より皆様に挨拶があるとのことです」
「本日はお招き頂きありがとうございました!」会場にエリスの声が響く。「皆様と一緒に素晴らしい時間が過ごせて、すごく楽しかったです! せめてものお礼にこの魔法を受け取ってください! 新作です!」
ぱっとエリスが両手をYの字に掲げると、そこを中心に天井へ様々な光が舞った。そして光は天井でまばゆい光で溢れた。キラキラと光が点滅し、まるで夜空がこの空間に創造されたようであった。
「名付けてインスタントプラネタリウム! では皆様、ごきげんよう!」
エリスがそう言って歩き出すと凄まじい拍手と歓声が沸きだした。
「素晴らしい! 天井に夜空が映し出されるなんて!」
「なんて高度な魔法の技術なんだ!」
「まるで宝石が無数に生み出されたようだ!」
エリスが立ち去っても賛美は鳴りやまない。
そして貴族達にとって最高の夜は、深まっていった……




