彼女がいない
次の日の朝、学校に行くと、彼女が後にいなかった。鞄が有ることから、校内にいる事はわかっている。
「あれ、香坂は?」
朝練を終わり、疲れたように彼が話掛けてくる。彼女は、あの性格と口調のせいで友達はおろか、話掛けるような人物は、いなかった。
彼女は、たいてい本を読んでいるか、寝ているか、それとも彼にツッコミを入れているかのどれかだった。しかし、今日はどれでもない。ここにいない、という行動だった。
「・・・まだ、怒ってるみたい?」
彼は、今状況を把握したようだ。
「どうやら、そうみたいだね。」
「どうするよ?」
どうするって。
「選択肢は、三つ。一つ、香坂を見つけて謝る。」
「おう。」
ちょっと、緊張気味の二木。
「二つ、帰ってくるのを待って謝る。」
「・・・三つ目は、何もしない、だな。」
「うん。個人的に、三つ目はないよ。」
「それもそうだよな。俺らに、悪気がないとはいえ、香坂を傷つけたのは事実だし。」
そう言えば、彼女は何でここに帰ってきいたんだろ?鞄持ってたし、忘れ物でもしたのかな?
「で、どうする?ここで、待っているか、行くか。」
「それは・・・」
そういうと、彼はにやっと笑った。
「行くに決まってんだろ?」
予想通りの言葉が帰ってきた。
もう、ホームルームは始まってたが、気にする余裕はなかった。
「あー、いない!」
いくら探したが、見つからない。二木と別れて探していて、いまだ連絡が入ってこない。
「どこにいるんだ!」
なんだか、むかついてくる。決して、彼女が悪い訳ではない。全面的に僕らが悪いのだ。
(あああ!)
叫びたい。そんな衝動を押さえる。いらついて、ここまでストレスがたまるのも数えるほどしかなかった。僕は、そんな風に思うのを回避していたのかもしれない。
きっと、僕はそんな人と深く関わらないから。喧嘩や、怒らせるようなことなんてそんなしない。普通というより、他人から超えないだけだったから。中学は、何もしなかった。逃げてしかいなかった。
だから、あの彼女から・・・逃げたくなった。昨日の、彼女の放った言葉。
―――『変でわるかったな!』
そう、言ったときの彼女の顔は、本当に怖かった。あれが、キレるという事なのか、と実感した。久しぶりに、人を怒らせた。
心がぐじゃぐじゃで、何がなんだかわからなくなった。また、こうなるのか。そうなろのは、絶対嫌だった。
だから、こんな終わり方だけはしたくない。拗ねて、機嫌悪くして、それで友達じゃなくなるなんて、絶対に嫌だ!
また、あんな事になるのだけは避けたかった。
ピピピピピッ!
携帯から着信。電話のようだ。画面を見ると、二木の文字。まあ、さっきまでメルアドとか知らなかったのに友達だなんてよく言えたものだ。
『もしもーし』
出ると、陽気な声。見つけたようだ。
「はい、二木?」
『うん、見つけた。屋上。本読んでた。俺に気付いて無いようだから、早く来て。』
「わかった、いますぐいく。」
一時間目始まりのチャイムが鳴っているが、急いで屋上にむかった。
うちの学校では、屋上は解放されている。施錠の時間になったらしめるがそれ以外は、大体空いている。勿論、探すときちゃんと覗いたのだが、その時見つけられ中のは何故だろう?
「お、来たか。」
彼は、屋上のドアの前で、待っていてくれたようだ。近くの窓から朝日が、彼に掛かっていて、格好良かった。
「まあね、僕も原因だし。」
「どんまい。」
沈黙。
「・・・じゃあ、いきますか。」
少しして、彼がドアノブに手を掛けた。