彼女拗ねる
放課後、いつも通りに話ていた。二木は、部活でいないため二人でだった。
「時は流れる。なぜ、それが実感出来ないのだ?」
僕らの会話は、質問する事から始まる。いや、基本僕らの会話は、疑問から始まる。普通の高校生の会話といったら、たいてい噂話とか、テレビとかだ。しかし、僕らの会話の中にそんなくだらない会話が存在しない。元々、僕らの会話もくだらないが。
なんと言えばいいのだろ。特殊?いや、それも少し違うような気がする。変と言った方が近い気がする。
「どう言うこと?」
そして、この質問を投げるのは、何故か僕の仕事。こんな学園生活も、一ヶ月が経った。もうそろそろ梅雨になる季節だ。雨が降り、夏に備える大切な季節だ。
「そうだな、時は流れる。こうしゃべると時も確実に時間は流れているんだ。」
「うん。」
日が長くなってくると、夕方が長くなる。綺麗な夕日が教室のなかに入ってきて、神秘的な雰囲気がかもし出している。多分、それは夕方になればなるほど生徒が少なくなり、教室に静かになるからだ。その静けさはいつもうるさい教室が静かになる、というギャップからなるのかもしれない。
彼女は、机の上に座り、夕日に照らされている。顔のよい彼女は、なかなか絵になっている。それに、そよ風が吹いていてなかな気持ちいい。それに・・・
「―――おい!」
「え?」
「聞いていたか?」
あ、しまった。いつの間にか考え込んでしまったようだ。
「う、うん。聞いてたよ?」
「なら、先程私が言ってたこと、ようやくして言ってみろ?」
「う、ごめん。」
「・・・興味の無い話に付き合わせて、悪かったな。じゃあ、私は帰る。」
彼女は、プイっと顔を横に向けて、通学鞄を手に持った。
(あー、やってしまった。)
そう思って、頭を抱えた。一瞬引き留めようと思った。が、それが逆効果になってしまいそうなので、引き留めなかった。引き留められる勇気がなかったのかもしれない。どうすか考えているうちに、彼女は乱暴にドアをあけ出ていってしまった。
「あれ?まだ、人が残っている。」
数分して、そんな声が聞こえた。聞こえた方を向くと二木がいた。良いのか悪いのか分からないタイミングに、つい少し笑ってしまった。
「おーい、大丈夫か?」
僕が急に笑い出して、心配そうに見ている二木。
「まあ、大丈夫かな?」
「なんで疑問系なんだよ。」
そういって、彼はため息をついた。
「なんで、二木ここにいるの?」
「忘れ物とりに来たんだ。」
「そうなんだ。」
なんだか、気まずい雰囲気が流れる。
すると、二木が話始めた。
「さっき、香坂と廊下で会ったんだ。けど、なんだか様子がおかしくて話掛けられなかったんだ。お前ら、何があった?」
「いや、それが―――。」
僕は、さっき話起きた事を話した。
「と言うことは、お前が香坂に見とれていて、話を聞いて無くて香坂が拗ねた、と。」
「い、いや、見とれてたなんて!」
やばい、顔が赤くなるのが、自分でもわかる。
「まあ、女って面倒だなー。」
それ、失礼だろ。
「どうしよ。」
「さあ?適当に、謝れば?」
「な!他人事みたいに、いうな!」
「他人事だけど?」
「むー、友達思いじゃないな。」
「いや、それお前の問題だろ?」
「そ、そうだけど。」
「それにしても、香坂でも拗ねるんだな。」
あはは、と笑いながらしゃべる二木。
「はあ?」
彼は、意味分かんない事を言い出した。
「だって、香坂ってなんか、感情が変というか・・・。」
するとガタッ、という変な音がなった。机にぶつかるような・・・。
「「・・・。」」
沈黙が流れる。音の先には、人が立っていた。その人を見た瞬間、体の体温が一気に氷点下になったのが、
実感できた。
(なるほど、こういうことか。)
小説でよく出てくる『こういう場面』の主人公の気持ちがよくわかった。
そこには、帰ったと思われていた香坂が教室のドア近くにたっていた。
「・・・お前ら、私をそんな風に思ってたのか。」
肩をふるわせ始めた。そして、僕らをキッとした目で睨みつけ、
「変でわるかったな!」
そう叫んで、帰っていった。
「あー、やっちまった。」
一日に二回も同じ事を考えてしまった。
「他人事じゃあなくなったな。」
そういって、二木の乾いた笑いが、静かな教室に響いた。