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彼女と絵本



「君らは、絵本が好きか?」

 朝のホームルーム前の時間。彼女は、僕が登校してすぐに話掛けてきた。

「ふう、いつものごとく突然だね。」

「気にすることない、もうそろそろ馴れろ。」

こんなことしているから、僕ら以外友人がいないのではないか。

「いや、気にするだろう。だって、いくら何でも脈略がないじゃん。」

彼が、眠たそうな顔をして話に入ってきた。

「黙れ天然。だから貴様はバカなのだ。」

何故か罵倒。

「最近、俺の扱い酷くなってないか!」

まあ、彼の馬鹿な発言が原因だけどね。

「確かに、彼は天然でバカだけど、脈略は欲しいね。」

「む、君に言われたなら仕方ない。」

「あれ?俺は・・・。」

ずーんっと沈む彼をスルーして彼女は話を進める。

「癖なんだ、許してくれ。考えていると、ついつい人の意見を聞きたくなってしまう。」

一体、何を考えてこの質問にたどり着いたのだろうか?

「まあ、いいや。で、質問はなんだっけ?」

この唐突な質問がないと、面白い日常では無くなってしまう。

「君は、絵本が好きか?」

「絵本か・・・好きじゃないけどなんで?」

「そうか、でも子供の頃はよく読んでいなかったか?」

「そりゃあ、読んでたけど。」

「だろう、人は子供の頃読む絵本によって成長を遂げる。それは、どの子供にも当てはまる。」

「うん。」

「内容は大体がハッピーエンド。そして、わかりやすい内容が主流だ。」

「そうだね。」

「しかし、絵本の原本となった物語はどうなのだろうか?」

「え?」

 絵本の原本?

「例えば、・・・人魚姫なんてどうだろうか?人魚姫の最期は、そのまま泡となって消えてしまう

パターン、泡にならずに天に召されるパターンなどもある。これをバットエンドと言わずなんていう?

他にも、数え切れないくらいの作品がある。」

「確かに、絵本の原本でバットエンドの作品は多いね。」

「だろう?なぜ、絵本作家達はそういう作品を題材として扱うのだろうか?」

「む、確かに。」

「私には、理解出来ない。絵本というのは、幼児期の子供が読むものだ。それなのに、何故悲劇の作品を

題材に物語を書くのだ?大きくなり、その絵本の原本を読んだとき悲しくなるではないか。」

そういう経験があったのだろうか?急に、彼女は顔を伏せた。

「まあ、そんなの読む時って大体大人になったときだろ?」

 天然は、ショックから復活したらしく話に入ってきた。

「そんな事見たって耐えきれるようになってんだろ。大体、考えが逆だぞ。」

「逆?」

「作家は、悲劇だからこそ、喜劇にしたかったんじゃねーのか?」

喜劇:コメディー。滑稽な出来事。

「「・・・。」」

いつも何処かがずれて足りする彼。格好いい台詞なのに、もったいない。悲劇の反対語だからってハッピー

エンドって意味じゃない事を彼に教えるべきだ。

「あ、先生来たぞ。」

先生が教室のドアを開けて、教壇に立った。ホームルームが始まった。ああ、教える機会が・・・。

「ま、そう言う事だ。」

彼がそういって、学校が始まった。

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