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小柄な少年

更新遅れたので、長めにしときました


 俺には、幼馴染がいた。力も無くて、喧嘩も弱い。だが、いつも俺と張り合っていた。

「おい!ふざけるな!」

俺は相当馬鹿だった。手を上げて、体中に怪我させて。最低な奴だった。

「何だと!それは、貴様もだろ!」

しかし、それでも殴り合いの喧嘩になった。何度負けても挑戦してくる、ただの負けず嫌い。

 俺も馬鹿みたいに向きになった。やられたら、やり返す。それをひたすら繰り返す。そして、それが俺の日常だった。

 学校も学年も違った。しかし、毎日のように家に来ては喧嘩して、怒って帰っていく。




―――俺も相当馬鹿だったが、相手も相当馬鹿だった。





「なんだここは?店員の挨拶もないのか?」

当たり前。それを、僕に言える勇気がほしい。店内はなんだか分からない絵が描かれていて、ゴミが散乱していた。

「なんだてめぇら?」

はい、ピンチ到来!店内に入ったとたん、ロン毛の平均年齢より高そうな男の方が近寄っていらっしゃいました。

 そいつを筆頭に、店内にいる不良が集まってきた。

「姉ちゃん、食われたいの?」

香坂に近寄り、ニヤニヤと笑う不良くんたち、ざっと三十人ほど。危ない雰囲気だ。笑っているが、護りが潰されている事は分かっている

のだろう。後ろでは、武器を持っているものもいる。

 すると、香坂は一番近くにいたロン毛の顔を無表情で二発入れた。

「ぐはっ!」

突然の攻撃に避けられることも無く、そのまま倒れこむロン毛。それでドミノのようにこける不良君たち。汚い店内に、彼の血と歯が散らばった。

「てめえ・・・!」

すると、耐え切れなくなったのか、一人が攻撃しようと右手を振りかぶった。

 すると、この場に合わないアルトの声がこの店内に響いた。

「やめろ!俺の客人だ!」

その声が聞こえた瞬間、急にそいつが手を止めた。

「―――あ?」

きっと、仲間をやられてストレスを感じているはず、しかしそれでも止めるということは・・・。

「やあ、いらっしゃい。」

不良たちの中から現れたのは、茶髪で小柄な男の子だった。百五十あるかないかの背の高さ。可愛らしい笑顔は、女の子と言われても不思議に思えない中性的な顔立ちだ。しかも、小学生ぐらいに見える童顔からは彼の歳はいまいちつかめない。

「義徳〈よしのり〉。元気だったか。」

「うん、元気に決まってんじゃーん!」

すると少年は、タッタッタと、可愛く走り香坂に抱きついた。

「千尋も元気だった?」

「ああ。」

・・・・・・・あれ?





 小さな少年、義徳の指示により、出口近くにあった個室に連れてかれた。店内と別空間のように綺麗で、真新しいソファなどが並べられている。八畳程度の空間だ。なぜ、この少年がこんなところに入れるか疑問に思うが、口には出せまい。

「ここは、ボクが管理しているんだ。テンチョさんには、自宅待機してもらっているよ。それなりの給料も払っているしね。」

少年は、僕に向けてそう言った。まるで、心を読んだように。

「?」

 裏が見えない少年。彼は、純粋な少年みたいに首をかしげている。この少年の強さに寒気がした。

「なあ、義徳。」

彼女が話しかける。まるで、兄弟だ。

「ん?なーに?」

ニコリといかにも子供らしい笑顔を出す少年。

「あいつらの『教育』は、しっかりとしているのか?」

「今からだよ。なんせ、ボスの指示だからね。今からちゃんとするさ。」

彼はすねたように口を尖らせた。

「しっかりしてくれ、義徳。」

「わかってるよー!」

 すると彼女は苦笑し、頭をぐしゃぐしゃになるまでなでた。

「むー!千尋、ボクは何度も言うけど同い年なんだからね!」

「「なに!」」

・・・・つい彼とハモってしまった。

「ん?」

すると、ギロリと鋭い目でにらまれてしまった。彼の目からは、殺気を感じる。武道家でもないのに感じられるという事は、相当な技量の持ち主なのだろう。横にいる彼は少し震え気味だ。

「「すいませんでした」」

 素直に謝ると、彼は先ほどのようにニコっと笑って

「次やったら千尋の友達だろうと許さないよ。」

といった。まるで死刑宣告されているような気分にさせられた。

「おいおい、義徳。流石に私も彼らをボコボコにして再起不能にされたら怒るぞ?」

再起不能?まさか、そこまでやられちゃうの?

「え?やだなあ、ボクが手を汚す分けないじゃーん☆」

あれ?この子から悪魔が見える。

「全く。」

そう言うと、彼女はため息をついた。

「さて、冗談はさておき。」

「さっきのは、冗談じゃないよ〜?」

僕らに向かっていう少年。怖いです。

「今回ここに来たのは、これをするためだ。」

 すると、彼女は何かプリントを出した。

『真・クラッシュクラッシュ』

 そこには有名な格闘ゲーム(しかも限定版のゲーム台だ)の写真がプリントされていた。

「これを仕入れてほしい。」

「ふ〜ん、これかぁ。あるか分からないよ?」

それを聞くと、彼女の目が異様に光り始めた。効果音にキュピーンとでも入りそうだ。

「入荷してくれたらぎゅーってしてやる。」

「絶対入荷させるからまってて、千尋。」

即答の回答に納得したようで、満点の笑顔で

「さ、帰ぞ。」

と言って部屋を出て行った。マイペースすぎだろ!僕と彼は呆れながら彼女を追おうとした。が

「あ、そこの二人ちょっとまって。」

もっとも呼び止められたくない人に呼び止められた。目の前には、ドアがある。そこからダッシュして逃げ出せたらどんだけ楽なことだろうか?しかし、それは今後のためにも出来そうには無い。

 殺気では無いが、それに似た、よく分からない感情が僕らに刺さる。

「「・・・。」」

 時が止まった、そう思わせるほど僕は緊張した。これから何が起こるのだろうか?

「あいつといつまでも一緒に、なんて思わないことだ。」

少年は、彼女といたときの姿が影も見ることはできなかった。別人、いや本性か。

「どういうこと?」

僕が質問したが、彼は聞こえるようにため息をついた。

「自分たちの力で調べることだね。世の中そんな甘くないよ。」

 二木は急に、いつもののようにニヤリと笑った。

「なるほどな。確かに赤の他人にタダでして貰おうなんて図々しいな。で、どうしたら教えてくれるんだ?」

二木も平然を装っているが、緊張や焦りは僕ですら分かる。

「じゃあ、千尋と縁を切れよ。」

 刺さっていたものが消え、新たな感情が見え始めた。これは僕にも分かる。

「なるほど。お前が原因だったのか。」

 彼は一人納得し、するどい目つきで少年を睨んだ。何が?とは聞けなかった。

「くっくっく、お前そんなこと口にしていいのか?」

 少年が天使から悪魔に変わった。魔風が吹いているように感じた。殺気が溢れ、僕は全く動けなくなった。

 少年の足音が聞こえる。カツ、カツとゆっくりと僕らのところに進んでくる。

 僕らを苦しめるようにゆっくりとだ。相棒を見ると、彼は目で何かを語っている。それが何かは分からない。しかし、この状況でする行動は限られている。脱出か、反撃か、だ。そして、二木は単純馬鹿だ。

 少年は僕らの近くで立ち止まり

「今消されるか、後消されるか。どちらがいい?」

実質死刑宣告。今度は脅しでもなんでもない。ただの選択だ。ここでやられなくてもなんらかの方法で潰されるということか?

「義徳、だったか。」

「てめえみたいなカスに名前を教えたつもりはない。」

「悪かったなチビ。小学生だと思って甘く見てた。」

そういうと僕が反応できないスピードで彼は振り返った。


―――バチン!


拳が衝突する音が聞こえる。

「くっくっく、やるじゃねえか。そんなあまちゃんな武術でよぉ!」

振り返ると、既に喧嘩は始まっていた。

 二木が殴りかかった右手は、少年が受け止めている。少年にはまだまだ余裕があるように見える。

「っ・・・。義徳、ね。『新井田』の弟だな。」

彼と少年の会話は、意味が分からなかった。

「は、あんなんと一緒にするなよ!」

そういって、空いた手で彼の顔を殴りかかる。

 彼に避けられるほどの時間は無かった。

 彼はドアまで吹き飛ばされた。小柄な体からよくそんな力が出せるな。

「弱いなあ。」

少年は、手をボキボキ鳴らしながら悪魔のような笑い方をした。

「俺を潰せば、香坂が泣くぜ?」

殴られた頬が真っ赤になっていた。

「ふん!あんなガキ精々『エサ』にしかならんさ!」

 でも、少年が悪だ、と誰もいわなくてもわかった。

「・・・なるほど、な。」

彼は薄く笑った。立ち上がると、空手でやるような構えとよく分からないステップをし始めた。

「やろうってのか!てめえも無謀な野郎だなぁ!」

くっくっく、と独特の笑い方をしながら彼に近づいた。

「はっ!」

彼は、少年に向かって突進した。一メートルぐらいの間合いを一気に詰めた。すごいスピードだ。少年は、動かなかった。

 彼のパンチが少年の顔にめがけて放たれた。

「すごい・・・。」

パンチの速さは僕の目では追いつけなかった。

 だが、攻撃を食らったのは彼のほうだった。

 突然、彼は攻撃を食らった。何が起こったのか、わからず呆然とした顔で吹っ飛ばされる彼。僕にも、何も見えなかった。

 いったい何が・・・?

「っぷ。なんだその間抜けなツラは?」

ゲラゲラと笑い始める目の前の悪魔は、特別な『何か』を僕らに仕掛けたのだろうか?それとも純粋に、力なのか?

「俺はこれでも『死炎』の一人なんだぜ?こんなもんだと思ってもらいたくないなぁ?」

僕の近くまでとばされた彼をみて、自分が止まっていたことに気がついた。

「く・・・。」

あいつ等の頭とだけあって、それなりに強いのはわかっていた。しかし、ここまでとは・・・。

「っ。」

立ち上がる彼。僕から見ても焦っているのがわかる。

「逃げるぞ。」

ボソボソと小さな声で言ったのを僕は聞き逃さなかった。

「十秒後だ。」

僕は、ゆっくり頷いた。

「くっくっく、どうするつもりだぁ?」

見下したように言う少年は、腕を組んで余裕そうに突っ立っていた。

「今だ!」

そういうと、彼は何かを少年に投げた。

「はあ?」

半歩動いて、それを避ける少年。

 僕は、その間にドアに素早く近づいてそこから逃げ出した。

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