彼女と奇跡
「君らは、奇跡についてどう思う?」
お昼休み。僕らは、テストが返却された後、妙に意気投合した。結果、仲良くなりお昼ご飯を一緒に食べる仲になった。
「奇跡か・・・。」
隣の席の名前は、二木 克也。スポーツに長けていて、良い奴だ。
「君らの考えを述べて欲しい。」
で、後ろの奴の名前は、香坂 千尋。独特な口調で、頭が切れる。
二人とも、顔はいい。二木は、短髪でいつもツンツンにたてて、いつも決めていて、格好いい。香坂は、ロングヘアで姉御肌で綺麗だ。
「軌跡は、残すもの、だぜ。」
まあ、二人とも美形だが、頭脳となると雲泥の差。正直、二木はバカだ。
「ナイスボケだ。それ以上しゃべる必要ないぞ。」
「???」
「さて、君はどう思う?」
なんて答えようか?一瞬悩み。素直に、自分が考えたことを言う事にした。
「・・・僕は、すべての出来事を必然として捉えてる。」
「じゃあ、信じないってことか。」
「うん。そういうことになるね。」
「ちょっと待て。意味わからねーよ。」
隣の奴が、頭に?マークを浮かべている。
「ん?どこが?」
「全ての出来事って事は、偶然も必然ってことだよな?なのに、偶然はたまたまってことだろ?何で必然になるんだ?」
「・・・む、そうだな。なんて説明すればいいかな?」
僕は、彼にどう説明すればいいか、よく分からない。決して、こいつの頭は悪くない。ただ、勉強しなだけだ。
すると、中庭でバスケをする生徒を見かけた。ゴールがないのによくやるな。
「じゃあ、例えば、二木がバスケの3ポイントシュートをするとしよう。」
「ああ。あの離れて打つ奴のことか。」
確かそうだけど、彼が言うと何か足りないような気がする
「いつも二木はシュートは入らない、としよう。実際、そう簡単に入るものではないし、なかなか難しいと思うんだ。で、その日だけ1本も入った。これは、何だと思う?」
「努力の結晶!」
なるほど、ここで偶然ではないな。
「しかし、次の日から全く入らなくなった。」
「・・・スランプか。」
僕は、例を挙げるのが苦手だ。
「流石だ。」
一言、隣から感想が漏れた。
「さて、私から説明しよう。彼が言いたいのはこうだ。町のアンケートで二択の選択肢で、聞かれた。『この町が、好きか嫌いか。』という、至極簡単な問題だ。勿論、二木は、『好き』と答えるだろう?」
そう聞くと、大きく頷いた。
「だろう?でも、それは『そう答えると決まっていた必然』なんだ。」
「???」
「ああ、まだわからんか。」
「わからん。」
なぜか、胸をはった。
「そうだな・・・。」
彼女は、一枚のルーズリーフを持ち上げた。
「これを落とす。」
そういって手を離した。ひらひらと舞う紙。それは、数秒もしないうちに床に落ちた。
「さて、ここにルーズリーフが落ちたのは、偶然か必然か?」
そういって紙を指で差す。
「偶然。」
彼は、即答だった。
「正解。でも、それは君の意見でしかない。ここに落ちたのは、紙と床の距離、風向き、温度が関係して、ここに落ちている。全ては、計算されたことなんだ。」
「・・・。」
「そう言うことだ。」
「へえ。」
そう言って、彼はぶつぶつ何かを言い始めた。
「何で、『ああ』言っただけでこういいたいってわかったの?」
さっきの見て、そう思った。普通、ああ言っただけでは分からないはずだ。説明、下手だったし。
「どこかの哲学者が君と似ている事を言っていた。」
「へえ。ところで、君の考えは?」
「何がだ?」
「奇跡について。」
「そうだな、私は奇跡とは、二種類あると思う。」
「二種類?」
「偶然と、努力。」
「へえ、ロマンチックな事をいうね。」
「まあ、こういうのはあまり好きではないがな。」
「努力がどう関係するんだ?」
「願い、努力を積み上げて願いをかなえる。これが、私のいう努力による奇跡だ。」
「でも、それただ努力しただけじゃん。」
そう言って、彼は肘を机について手に顔を乗っけた。
「そうだな、でもその願いが大きかったり、自分の力量をはるかに越えるようなものだった。そうしたら、奇跡にならんか?」
彼女は、そういうと何かを思い出すように笑った。
「・・・。」
そして、彼も何かあるのだろうか、下を向いている。
僕の人生は、平凡で何もない。勉強も、運動もすべて平均。顔だってそうだろう。だから、この二人がすこしだけ・・・。
そんなことを考えていると、彼女が急に口を開いた。
「ここは、平凡で平和だ。きっと、彼らは奇跡なんて見たこと無いろうな。」
彼女は、この教室を見渡しながら言った。彼女は、どんな顔をして、何を思い、言っているのだろう。
「そうかな。君が産まれる確率は、凄い確率だ。それは、分かる?」
「ああ。赤ちゃんが産まれる確率は、凄いらしいな。」
「それで、君が産まれたとしても、この高校に入って、僕とであう確率は、凄いと思うんだ。産まれてくる確率とここまで僕に会う確率、それをあわせれば、それはかなりの確率だと思わないか?」
「・・・ああ。」
「それを、奇跡と言わず、なんて言うの?」
「・・・。」
「そう言うこと。」
君の過去に何があったとしても、ね。
「そういう考えの方がずっと、ロマンチックに思えるがな。」
「そうかな。」
僕は、そう思って薄く笑った。
すると、予備のチャイムがなった。
「さ、次は移動教室だっけ?」
「そうだぜ!」
そういって二人は、机から教科書を取り出し、席を立った。
「いこーぜ。」
「ほら、何している。早く行くぞ?」
「あ、まってよー!」
午後の授業は、集中できなさそうだ。