脇役は可哀想
そこは、地獄だった。自分勝手、人を道具だと思っているやつ、そんな人ばかりがそこにいた。人を痛みつけて平気な人。自分が最強だと、弱者を痛めつけ自分が上だと、勝手に思い込んでいる。そんな連中しか、そこにいなかった。
「まずは、教育からだな。」
俺の挑戦は、全てがはじめからのようだ。
現在、目的地に着きました。
「あのさぁ・・・。」
僕が二人に話しかけると
「ん?」
「どうかしたのか?」
二人は、平然と中に入ろうとしています。
「今日は、無理でしょ?」
そう言うと、二人は首をかしげています。
「何をだ?」
「?」
この二人、状況を理解できていないようです。
「二人とも、よく見てよ!皆様が、こっち睨んでるでしょ!危ないって!」
そう、駅前にある小さなゲームセンターには、五人ほど目の前で地面に座っている人(不良)がいる。もちろん、怖い。スキンヘッドに金髪。全員体つきが良さそうな方々で、喧嘩慣れしてそうだった。特に2メートルありそうな大男は、そっちの世界にいそうな男だった。
中を覗いても、確実に僕ら以外、東のメンバーみたいだし、危険しかない。
「あんなの虫けらだ。」
「まあ、なんとかなんじゃね?」
平然と言い放った二人。そ、そそそういうことはっきりというな!ほら、ゆっくりとこちらにきちゃったじゃん。金髪頭でサングラスかけてかっこつけている男の人がこっちきちゃったじゃん。金属バットもってるよ!危ないよ!
「あ?嬢ちゃん、俺らなめてんの?」
ニヤニヤとしたいやらしい笑い方をしながら近づいてきた。すると、香坂がニヤリと笑ってから
「黙れ、虫けら。ダサいんだよ、その格好。」
と言い放った。
「んだとコラァ!」
目を見開いて、男はバットを振りかぶった。思わず、僕は目をつぶった。
ドカッ!
何かが、ぶつかる音だけ鳴り響いた。
目を開けると信じられない状況がそこにあった。
男が倒れ、香坂が男の頭を踏みつけていた。
「て、てめえ!」
「女だからって、調子に乗るんじゃねえ!」
と、次々とお決まりの台詞を吐きながら、不良たち彼女に近づいている。
僕は全身からどっと汗が出てきたが、彼女らは冷静だった。焦る所か、ふんわりと笑った。
「二木、サポート頼むぞ。」
「わかった。じゃあ、あの大木つぶすわ。」
そういうと、それぞれが喧嘩を始めた。二木は大男を、香坂は三人相手で、だ。
僕は、友人二人が普通に喧嘩をし始めるところを見て、不思議と何の感情も沸かなかった。助けに入らなきゃ、とかどうしよう、とか悩まなくてはならない状況のはずだ。だけど、体は動かないし、何も、本当に何も考えることができなかった。
二木の戦い方は至ってシンプルだ。素早い動きで、敵の攻撃を避けて、隙あらば殴る。それの繰り返しだ。よほど体力には自信が有るらしく、スキップして敵を挑発するなんて場面もあった。すごい余裕そうだ。
相手は短気で、何度も殴り掛かるが、サイドステップやバックステップで簡単そうに避ける。基本は、蹴りでたまに、パンチも出す。フェイントも忘れない。相手を翻弄させ、相手を弱らせてから狩る。まるで、陰湿ないじめをしている野郎に見えた。
相手も、確実にパンチの威力も弱ってきている、これはもう勝負が決まったようだ。
それに対して香坂は、全てカウンター狙いだった。相手の攻撃を流し、その攻撃の勢いだけで相手を転ばしたり、殴る。その体制は、二木と真逆で、体力を極力使わない、そんなスタイルだった。
「うりゃあ!」
「おりゃあ!」
「ふりゃあ!」
三人は距離を取り、変な奇声を上げながら三人同時に多方向から香坂に突っ込んだ。
「ふん。」
鼻で笑いながら、香坂はしゃがみ。二人の急所に肘を入れ、一人はみぞにアッパーを入れた。
「「・・・。」」
言葉に表せない悲鳴を出す、二人。深く同情するよ。
股間を押さえ悶え苦しんでいる二人を見て、香坂は同じ場所に一回ずつ蹴りを入れた。
「「・・・。」」
無言で倒れる二人。ご愁傷様です。
「さて、残りはお前だけか。」
すると、ボキン、ボキンと指を鳴らしながら近づく彼女。怖い。
「く・・・。」
ギロリと彼女を睨み着ける男。腐っても東のメンバーだけはある。反撃しようとする心があるようだ。
「ふん。」
彼女は、再度鼻で笑って、男の顔に二度、みぞに三度蹴りを入れた。どちらが悪か、分からなくなってきました。
「そっちはどうだー?」
二木が晴れ晴れとした笑顔でこちらにくる。目立った怪我がなく、まだ余裕そうだ。男供が再起不能になると、彼女は攻撃をやめた。
攻撃をくらった奴は、白目をむいていて、彼らの明日を想像したくなかった。
「余裕だ。そちらも?」
彼女が、どうだという顔で二木をみる。
「当たり前。あんな大木余裕だろ?」
そして、爽やかな彼の笑顔。君ら、強すぎです。
「そうか。」
少し休憩を入れると、彼が
「さて、入ろうか。」
ときりだした。
「ああ。」
そういって、堂々と入る二人。どうやら、二人とも本物の馬鹿のようだ。