キザはだめらしい
「時の流れって、怖いと思わないか?」
彼女は、たまに僕らを錯乱させる。
「どういうこと?」
僕が、わざと眉間にしわをよせると、彼女ははっとした顔をした。
ゲーセンに行く道のり、僕らは討論に近い雑談をしていた。そこまで、歩いて二十分程度。最近は、学校と家との往復だったためか、
知っている町並みでも新鮮に見える。
「私が言いたいことは、つまり・・・。」
十秒ほど考えた後、彼女は説明し始めた。
「私たちには、時という時間制限の中を生きている。実際、こうしていられる時間も限られているのだろう。」
高校生活は、人生で多分最初で最後だろう。
「一秒一秒、私たちの時間は確実に消えていく。」
意識してなくても、当たり前におこることだ。時間は、何も無くても進んでいく。
「と、言うことはだ。それによって変化がないのは、おかしいと思わないか?」
いつもの事ながら、言いたいことがよく分からない。
「時が流れれば、ものを変える。建物だって、何十年も経てば、壊れたりぼろくなったりと、いろいろな変化がおきるのだろう。」
「うん。」
僕は、適当に相槌をうつ。
「それは、時によって、と言ってもいいと私は思う。」
確かに、その通りだ。時間が経てば、いつかは物が壊れたり、生き物も死ぬだろう。
「だからこそ、私は時と言うものを怖いと思う。時間が経てば、歳をとり、いつかは死ぬのだろう。それは、誰にでもおきる変化であり、
自然現象だ。当たり前だが、この現象に逆らえる生き物を見たことが無い。」
そんな生物がいたら、見てみたい。
「私は、自分におきている変化を変化と捉えられない。これも、その理由のひとつに入るかもしれない。」
つまり、彼女は時の流れによって、分からないほどゆっくりと変わってしまう自分が捉えられないことに恐怖している。老ける、という誰にでもおこることが怖い、とでもいうのだろうか?
「十五年程度生きた人間が、こんなことを言ったくらいで何の厚みもでないだろうな。」
そういって彼女は、自嘲気味に笑った。
僕は、彼女の言ったことが、老人のいったことのように聞こえた。それだけの人生を歩んでいるのだろうか?
「・・・香坂は、生きることが怖いのか?」
彼は、おそるおそるたずねた。
「いいや、そういうわけではない。」
その言葉に、彼女はやんわりと否定した。
「私は、この環境がなくなるのが、怖いだけなのかもしれない。こうやって友人と遊びに行く、という体験をあまりしたことが無いのでな。」
そういうと、彼は大声で笑い始めた。
「ぷ、あははは!」
目を丸くする僕ら。人の目を気にせず笑い続ける彼。一、二分笑った後、彼は真顔で
「いつでも付き合ってやるから」
と、一言いって黙った。
すると、急に彼女がジト目で彼を見て
「・・・何をそんなに格好つけているんだ?似合わないぞ。しかも、私は基本キザな男は嫌いだ。」
と言い放った。
「ぐはっ!」
その言葉に、大ダメージを食らって、わざとらしく膝をつくキザな男。まあ、可哀想なやつだと思うが、自業自得ってやつかな?
「さて、もうそろそろ着くから準備運動でもしとけ。」
僕は、その意味がよく分からなかったが、なんとなく雰囲気で分かった気がする。
「ああ、わかった。」
頷く二木。不安は大きくなっていった。
更新遅れたので明日更新します