まさかの一言
次の日の放課後、僕達は一回帰宅して私服に着替えてから、また学校に集まることにした。みんな徒歩で通学している所をみると、家は近いらしい。
集合場所は、裏門だ。歩いて十分もかからない。でも、一応急いで裏門に向かった。
裏門に行くと、既に二木が到着していた。
「おーい、二木!」
「おお、早いじゃん。」
と言って爽やかに笑った。
二木は、モノクロ系のTシャツに、黒のジャンパーを羽織っている。下は、高そうなデニムだ。僕は、彼が着飾る事が出来ることに感心した。
いつもブレザーの制服を着こなせていない二木からは想像できない。きっと、彼を知っている人ならそう言うだろう。そんな二木が、ここまでやられると多少ショックだ。
「二木、格好いいね。」
素直にそういうとニヤッと笑って、「そうだろ?」とでも言いたげな顔をしながら
「そうか?」
と、ほざいた。・・・。
二人してぼーっと待っていると、二木が急に目覚めた。
「あれ、香坂じゃね?」
そういって二木が指を差す方向を見ると、白いワンピースを着た女の子が走ってこちらに向かってきていた。光輝いて、眩しい限りです。
「すまない、遅くなった。」
そう言って、はあはあと息を荒くしている彼女。汗が見えていて、急いで着てくれた事がわかる。
「香坂。」
優しい気分に成っていると、彼が急に彼女の名を呼んだ。
「・・・何だ。」
何とか息を整えて、彼を見る彼女。すると、彼が真顔になり一言。
「お前、可愛いな。」
といった。
「っ!」
不意打ちだったのか、彼女の顔は林檎の様に赤くなった。
それを見ると、彼は堪えられなくなって、すぐに吹き出した。
「き、貴様!私で遊ぶな!」
そういって、背中をべしべし叩く香坂。
「ごめんごめん。香坂、面白くて、・・・ぷっ。」
「貴様いっぺん地獄を見させてやろう。」
そう言って、指をぼきぼきと鳴らす彼女。正直、怖い。
「あー!それだけは、勘弁して。」
彼も、危険を感じたのか焦り始めた。
「ふん、貴様などしらん。」
「本当、ごめん。」
そういって、両手を合わせる彼。
「本当にそう思・・・」
「て、いちゃいちゃすんじゃねえ!!!」
いつまでしてんだ!
僕がぜいぜいと、酸素をむさぼると、二人は笑い始めた。きょとんとする僕。・・・もしかして、はめられた!
「あははは!お前、必死すぎ。」
「っく・・・おもしろすぎるぞ。」
「くそ、いつの間にこんな高等技術を・・・!」
「ふっふっふ、俺もいつまでもやられてばかりじゃないのだよ。」
そういって、本日二度目の彼のドヤ顔を食らった。いつか復讐してやる!
どんな復讐しようか、とメラメラと燃える復讐心を無視して、彼は話を進めた。
「さて、今日は何処にいく予定なんだ?」
すると、彼女の口から、予想外な言葉が出てきた。
「ゲーセンだ。」
・・・へ?
「けっせん?あ、血栓の事か。て、ことは病院行かないとね。」
そうだよね、ちゃんと発音できなかったんだよね。
「おい、待て。」
「ああ、成る程。係船したいのか。でも、ちと金かかるがいいのか?」
そういって、悩殺スマイルを繰り出す彼。僕らは、どうやら以心伝心できるようだ。
「二人とも、落ち着け!私がいきたいのは、ゲーセンだ。病院も船もいらん。てか、船舶つなぎ留めて私は何するんだ?」
「え?長旅?」
そういって、首を傾げる彼。
「するか!」
「落ち着こうよ、香坂。君は女の子なんだから、おしとやかに、ね?」
「原因が正すな!」
はあはあ、と息を荒くする彼女。女の子なんだからもう少し落ち着こうよ。
「それにしても、お前からゲーセンなんて言葉がでるなんてな。」
そうビックリしたように、彼女をみる彼。てか、場所と姿が合ってなくね?
「私がいうと変か?」
「「うん。」」
即答で、僕と二木は見事にハモった。これは一種の芸当ではないか?
「っく・・・!」
悔しそうに、こちらを見る彼女。してやったり?
「お遊びはこれくらいにして、どこのゲーセンにいきたいんだ?」
「お遊びって、君らひどいな。」
そういって疲れた様にため息をついた。
「駅前希望だ。」
「駅前ねえ・・・。」
彼女がそういうと、彼はため息をついて何か考えているような素振りを見せた。柄にもないことを。
「あそこ、今行かないほうがいいぞ?」
「何故だ?」
彼女の強い眼光が彼をにらみつける。まだ、さっきの根に持っているんですか?
「今、東の勢力があそこにいるからな。」
ああ、そうか。
「東?」
僕らが住む三山町には、東、南、北西とそれぞれ拠点をもつ結構強大なグループがある。簡単に言ってしまえば、不良が学校同士で同盟を組んでそこらの地域を占領している。まあ、実際ゲーモセンターとかコンビニとか些細なところで威張っているだけで、『そこにいかなければ』害はない。皆、それに名前は無く、方角で呼んでいるか、派閥と呼んでいる。
「んー、あそこ危なくないか?俺は、それなりに喧嘩慣れしてるけど、香坂とか守れないぞ?」
そういって、僕と彼女を交互に見る彼。どうやら、僕らを心配しているようだ。
「大丈夫だ。チンピラごとき余裕で潰せる。」
白いワンピースから眩しさが失われていく。どんどん機能性重視の格好にみえて・・・。
「まあ、そうかもな。」
そして、何故か当然そうに頷く彼。二人の間に何があったのだろうか?
「じゃあ、自分の身は自分で守るってことでいいな?」
「ああ。」
・・・自分、今日死ぬかもしれません。