his side 泣き虫のレッテル
「なあ、香坂。」
俺は、俺の隣にいる少女に話し掛けた。ここは、屋上の給水タンク。いつもの定置となってしまった場所。
「なんだ?」
女っぽいソプラノの声と、独特の口調は、すごく違和感があった。こんな口調の少女は、きっと小説とかの世界だけだと思っていた。しかし、人は馴れるもの。既に馴れ始めている。
「あいつ、来るかな。」
分からない。が、多分来るような気がする。
「さあ、な。」
そう言って、香坂は顔を伏せた。
「なあ、賭をしないか?」
「賭?」
「ああ、あいつが香坂に謝りに来たら俺が勝ち。」
「・・・いいだろう。では、何を賭けるんだ?」
「んー?そうだなぁ。俺が勝ったら俺に告白してくれ。」
「ぶっっ!!!」
盛大に吹き出した。
「な、ぬあんだとぉ!」
また、耳まで真っ赤にさせて、『恋する乙女』っぽかった。
「おいおい、かみかみじゃん。」
そういうと、俺は笑った。
「私を茶化すな!私は、そういうの苦手なんだ!」
必死で言う香坂。
「俺は平気。」
なんだか可愛くて、子供にしかみえなかった。
「そういう問題か!」
高校生といっても子供。それは、どんな部分でそうなんだ。親のすねをかじっているからか?
「じゃあ、香坂は何を賭ける?」
それとも、心が、か?
「軽く流された。」
がっくりしている香坂。こんな香坂初めてみた気がする。
「まあまあ、いいじゃん。で、どうするの?」
「そうだな・・・。」
う〜ん、と考える香坂。何を考えている?なんだか、怖くなってきた。
「私以外の女の子の前で、エロ用語を発する。」
!!!
「おい、なんだよそれ!俺に死刑が実行されるぞ!」
「黙れ黙れ黙れ!二木から持ちかけてきたのだろう!だったら、これくらい我慢しろ。」
おいおいおい!負けたらしゃれになんねーぞ!
「香坂、てめえ。」
そういって睨み付ける俺。
「ふっはっはっは、何とでもいえ。私と貴様の賭のレベルは同じだろう。」
余裕をかます香坂。っく、俺が負けたら代償が大きすぎるぞ。高校、下手したら大学まで彼女のいない生活になっちまう。つまり、俺が負けたら、バラ色の高校ライフ計画が一瞬にして粉々になっちまう。
こうなったら、奴に近付いて・・・
「待て。お前が先導するなんて卑怯だぞ。そんなことするなら、私は明日からここに来ないぞ。」
香坂に止められた。しかも、俺が出来ないようにする脅しまで用意済みとは。
「はっはっは、精々待っている事だな。」
「っく、分かったよ。じゃあ、期間は今日から三日でいいな。」
「いいだろう。それ以上過ぎたら・・・。」
そう言ってニヤッと笑った。
香坂、このままだと友達が減るんだぞ?それでもいいのかよ?
俺らは屋上で待っていた。が、一日過ぎる事に香坂がだんだん泣き出しそうになって来たので、俺は外の廊下で待つ事にした。
そして、賭の最終日の今日。
「やっぱり、ここにいたんだ。」
奴は来た。おせーよ。
「・・・。」
「なんで、授業でなかったの?」
ニヤニヤと嬉しそうにするバカに、俺はむかついた。
「お前には、関係ねーだろ。」
香坂がどんな想いでここにいるのか知らないくせに。
「関係あるよ。」
「ない。」
「あるよ。」
「ない。」
「ある。」
「ない。」
「ある。」
「ない。」
「「・・・。」」
しばしの沈黙。
「それで、何のようだよ。」
俺は、苛つき隠さず顔にだした。
「一緒に謝りに行こうよ。」
「嫌だ、あんな頑固な奴。」
そうだ、自分から行けばいいじゃないか。俺が原因だったんじゃねーのかよ。
「そんな事言うと、このままだよ?一緒に謝りに行こうよ。」
「嫌だ!何で何回も行かなきゃらん!」
俺は、もう一回いったんだ!
「謝りに行ったんだ。」
「・・・そんな事してねーよ!」
っく・・・!
「そんな事しても、事は解決しないよ。」
「わかってる。」
解決は、する。けど、・・・。
「なら、一緒に行かない?『屋上』にさ。香坂も二人なら許してくれるって。」
俺は、二人で居たことが、ばれてないか心配になった。俺が、抜け駆けしているような、そんな罪悪感が俺の心をさらった。
「香坂が屋上にいるって?」
なんで分かった?
「簡単だよ。君がここにいる、それだけでわかるよ。君は、仲間想いだからね。屋上にいること隠す為のカモフラージュでここにいるんだよね?」
「なっ!そんなことねえよ!」
更に、罪悪感が強くなりました。
「ねえ、僕は・・・。」
俺の目を見ていった。
「ただ、数日前の学園生活に戻したいだけなんだ。だから、一緒に来てくれない?」
もう、良いだろう。そう思って、俺はわかったと頷いた。
「じゃあ、行こうか。」
相棒がそういって、屋上のドアを開けた。
屋上にでると、校内にチャイム音が鳴り響いた。相棒は、一瞬ビクっと体を動かしたが、すぐにいつもの様に戻った。
風が強くて、一瞬ずっと外にいた香坂が心配になった。五月なのに少し寒い、そんな天気の中、のうのうと室内にいた俺を悔やんだ。
相棒は、香坂の一言を待っている様に立っていた。
「何しに来た。」
香坂は、まだ怒っている様に声を出した。
「別に。来たかっただけだよ。」
俺は、既に傍観者のつもりで、相棒の一歩手前に立った。
「ふん。」
そう言って、香坂は口をつぐんだ。俺は黙ってドアの近くに座ると、相棒が隣に座った。
「ねえ。」
相棒が、上を向きながら呟く。俺は、こいつが俺にのっかるだけと分かったとき、俺は初めて凄まじい嫌悪に襲われた。だから、俺はこいつを突き放した。
「なんだ。」
ちょっとすると、彼女の声が返ってきた。
逃げないで戦う覚悟がある。そう分かると、自然と顔が和らいだ。
「僕は、・・・香坂と一緒に居たい。」
そして、俺の行動は正しかった。そう思えると、自然に余裕が出てきた。
「俺も、香坂と一緒がいいな〜。」
俺は、そうゆっくり茶化す様に言った。
「・・・。」
香坂は、黙り込んだ。きっと、彼女は泣いて居るんだろ?
いつの間にか、俺の中で香坂は泣き虫のレッテルがはられていた。
「ねえ、香坂。」
何を勘違いをしたのか、一歩前にでて。
「僕は、君がいいんだ。だから、僕と一緒に居てくれ!」
相棒は、顔を真っ赤にするほど叫んだ。
「・・・。」
すると、香坂が上から飛び降りた
「ばか!」
また、無理しやがって!
「うえええええええ!!」
先程より大声で叫ぶ相棒。当たり前だな。
ドスン!
そんな音が校舎内に響いた。
香坂が、俺の大切な相棒の腹にドロップキックをかました。いたそー。
倒れ込む相棒。多分、一瞬意識がとんだだろう。
「大丈夫かよ?」
俺が心配そうに彼ら近寄る。
下コンクリートだし。とても痛そうだ。
「大丈夫じゃない。」
そう言う相棒。なんだ、大丈夫なのか。
確認した後、香坂が俺に背を向け焦って相棒に頭を下げ始めた。おーい、黒いのがスカートの中からちら
ちら・・・。
その姿は、俺の脳を妄想で潰されそうになった。
「じゃあ、教室に・・・行こうぜ?」
俺が、そういうと香坂が少しして頷いてくれた。
「うん、いこう!」
俺らは、一緒に教室にもどった。
その後、俺らは無断で休んだ罰として、課題を渡された。基本教科全部のワークだった。
総勢9冊。しかもこれを一週間でおわらせろと?貴方達は鬼ですか?
これで、ひと段落ってとこです。次を予定していましたが、連続は飽きると思うので(というか私が)、新たな話を書こうと思います。お詫びに、明日更新します