his side こいつの問題
ドアを開けると、風がふわっと体に触った。
「誰もいないよ?」
近くの野郎は、きょとんとした顔で俺に話し掛けてきた。
「上。」
一言。これだけで通じるだろう。
「何しに来た?」
ストン。上から彼女は降ってきた。俺とあいつの間だ。下手すれば、ぶつかるような、そんな距離だ。
「何しにって,謝りに・・・」
あいつは、必死に謝っているが、『そんなのじゃあ』聞かないだろう。
「私は、貴様らつるみたくない。帰れ。」
そう言われると、隣の相棒は、絶望したような顔をした。多分俺と同じ考えをしていたんだろうな。
「・・・。」
もう俺は嫌われてしまったのだろう。だから、俺は今は口出しできない。
「二度と、話掛けるな。貴様らとは、話すと吐き気がする。」
そう言って、香坂は屋上の出口に近付いた。
「そうかよ。」
逃げるのかよ。それで、俺が諦めると思ってんのかよ?
「・・・二度と近寄るな。」
そう忠告して、香坂は屋上を去った。
「ありゃ、あの言葉は禁句だったかな。」
あいつの過去に何があったか、大体想像付いできた俺は、何をしなきゃいけないのか
「はあ、どうしよ。」
そして、落胆しているこの相棒をどうしなきゃらないのかも、分かった。
「どうしようも、こうしようもないだろ?彼女の敵意を無くさなきゃ。しかも、あれはただ怒っているだけじゃないし。それに・・・。」
「それに?」
このままだと、香坂が・・・。
「いや、なんでもない。お前、さき教室戻っててくれないか?」
これから、香坂探さなきゃな。
「わかった。」
相棒は、はあ、とため息をつきながら教室についた。
「いた。」
俺は、昇降口を歩いている香坂を見つけた。
理由は単純。他に行ける場所がない。
「何しに来た。」
彼女は、振り返らず吐き捨てるようにいった。
「いやあ、そりゃあ香坂みたいな美少女を一人にするわけにはいかないぜ?」
「・・・!」
そう言うと、彼女は耳を赤く染めた。ははん、なるほど。
「貴様、何を!」
彼女は振り向くと、俺の胸ぐらを持ち、俺を数センチ持ち上げた。
「―――!」
俺は、油断した。まさか、女である彼女がここまで力があるとは。
「ここまで来て・・・。低落な人間だな!」
そういって片手を放し、右手を引いた。そして、左手で俺を押さえ付けながら、ジャンプした。
(――ジャンプパンチ!!)
これ、当たったらしぬかも!!!
そう思うと、持たれている左手をおもいっきり下へ押した。すると、香坂はバランスを崩し、俺の胸板にダイブした。
ドカン!!固い廊下は、めちゃくちゃいたかった。
「ぐ・・・。」
香坂は、そうもらして俺の中で目をつぶっている。?マークが頭に浮かんだが、その意味がすぐわかった。香坂が手をふるわせながら、右足のくるぶしを押さえていた。ちょ、
「どうした、香坂!」
何もできない俺は、香坂を担いで保健室に向かった。
急いで保健室に向かうと、白衣を着た男性がいた。つまり、うちの学校は男を採用した訳か。そう思うと、なぜかため息がでた。
彼は、細くスラッとしていた。ガリガリと言う訳じゃないが、痩せている様に見える。顔が細長く、眼鏡を掛けている。香坂に負けないぐらいの長髪で、優等生っぽい男だった。
「ただの捻挫。」
彼女の足を見せるとそう言われた。
眼鏡をくいっと上げて
「足全体に、強い力が加わっている。」
無表情でいう彼の姿は、まるで氷の様だった。
「というと?」
俺がそういうと、机の上にある書類を見ながら
「つまり、無理をしたって事。普通の人がしたら、足を痛める事とか。しかも、我慢でもしてたのか、普通よりひどく腫れてる。」
・・・。『無理して、俺に痛がる様子を見せなかった』ってことか。それに、普通の人がしたら、足を痛める事って、給水タンクから俺らの所まで落ちたことじゃね?だってあそこ建物一階分あるし、俺がやっても確実に痛める。
「こいつバカだろ。」
何がしたいんだ、香坂?
「・・・。」
彼女は、黙って下を向いていた。
「俺は職員室に用事あるから、適当に教室に戻れよ。」
そういうと、彼は出ていった。・・・気を利かせたのか?
彼の好意を無駄にする事は出来ない。そう思うと、口が勝手に動いた。
「香坂、まずは・・・」
俺は、彼女と向かい合って
「ごめん」
そういって頭を下げた。
「俺は、お前が嫌いじゃない!むしろ・・・」
そう言って、っはとして俺は頭を上げた。
「俺は、・・・。」
誰もいない密室。雰囲気、最高。でも、こんな勢いで言っていいのか?そう思うと、次の言葉は言えなかった。
「取りあえず、俺はお前とまた仲良くしたい。遊びたい。だから」
俺は、ひざを床につけ、座っている彼女の手をとった
「だから、許してくれないか?」
「・・・っ。」
彼女は、泣いていた。小さく声に出さない様に。
「わ、私は、お前、が私を嫌っているか、と思った。だか、ら、いい。・・・許す。」
顔を真っ赤にして、下を向きながら、泣きながら、彼女は小さく呟いた。
「ありがたき幸せ。」
そういって、俺は微笑んだ。
教室につくと、相棒は大きなため息をついた。
「なーに、ため息なんてついてんの?」
俺が、後ろから話し掛けると、相棒は睨んできた。
「君が何をしていたか気になってね。」
「それは、秘密。」
俺は、笑顔を崩さず言った。相棒は、固まり目を見開いている。
「なんで?」
彼は、俺を睨み付けて
「君は、何をしてるの?」
「え?」
こいつ、まさか。
「だから、君はどんな風に動いているの?」
『自分の力』で解決する気ないんじゃ・・・?
「あー」
そんな奴に言える分けない。
「ごめん、今は言えない。」
「・・・なんだよそれ?僕だけ、仲間外れかよ。」
目の前の他人任せのバカは、逆ギレし始めた。
「ふざけんな!」
そういって、バカは胸ぐらを掴んだ。
「―――あ?」
俺が、睨み付けるとヘタレは固まり、震え始めた。
喧嘩するつもりがないならくるんじゃねえ。
「離せ。」
俺は、ヘタレの手を叩き落とされた。
「俺は原因だ。」
だが、これは俺だけの問題じゃない。
「もっと自分の心に素直になれ、そうすれば解決する。」
せいぜい、自分で解決することだな。
俺は教室を後にした。