his side まさかの連続
番外編かな?
彼側から見た今回の事件です。
何回続くか分かりませんが、本編より長くなりそうです。
いやだって、本編じゃあ不透明な部分多すぎでしょ?
それを解決させるためのこれだし。
彼女側からもやりますので気長に待っていてください。
「おーい!二木、シャキっとしろ!もっと速く走れ!」
コーチの檄が飛ぶ。最近の俺はどうしたのだろうか。高校に入って一ヶ月足らず。中学のときより調子が悪い。
俺の入っている陸上部は、有力で全国的に強い部類にはいる。駅伝とかでも上位に成るほどだ。
結構有名なコーチがいたり、練習場も充実しているし、部内の雰囲気も悪くない。他の部活みたいに上下関係もそこまで厳しくない。多分、他の部活に比べたらいい環境と言えるだろう。
そんな環境だ。この調子の悪さは、俺が原因だろう。自分でも分からない。この心境は、一体なんだろうか。
そんな事考えていると、他のチームメイトはすでに休憩に入っていた。走り初めて一時間。十キロぐらい走っただろうか。体全体から、凄まじい疲労感が感じる。節々の痛みが、それを増大させている。
「二木君、コーチが呼んでるよ。」
部活で数少ない同級生の女子生徒が俺に近付く。彼女も、俺と同じくらい走っているようで、彼女の微笑みから疲労感が感じられる。
陸上部とはいえ、全員一緒でやるトレーニング後に、十キロはきつい。馴れ始めているとはいえ、つらいものがある。
「ああ、わかった。」
俺は、そう答えると彼女はタオルを俺の頭の上に落とした。
「タオルで拭かないと、汗臭くて近寄れないよ。」
そういって、彼女はニコッと笑った。
「わるかったな。」
そう不機嫌っぽく俺はいった。すると、彼女はまた、微笑んだ。
「悪いよ。だから、ちゃんと体拭いてね。」
俺は、取りあえず体を拭いた。体がベトベトになるのは嫌だし、なにより人の好意を無駄には出来ない。女子生徒、内山理奈は小柄で、見た感じ可愛いという印象を受ける。ポーニーテールが印象的で幼さの残る顔立ちは、背の低さから中学生に見られるのもしばしば。彼女は、世間一般でいう『ロリコン』の対称にあるらしい。
まあ、俺は部活ないから浮いていて、『ウザイ』対称にある。陸上バカで、近日にある大会で、俺が選ばれた。そのお陰もあって、周囲に壁が出来た。話し掛けてくる物好きは、この部活内じゃ彼女ぐらいだ。
「♪〜」
体を拭いていると、彼女は上機嫌になった。この女、意味わからん。
「なあ、今何時だ?」
「え?さあ?」
彼女は、首を傾かた。グラウンドに時計というものは、ある。しかし、それは動いていない。つまり、故障している。それも、ここにある三台の時計全部。三年の先輩がいうには、最初は全部動いていたらしい。
しかし、その内動かなくなった。それも、同時に全部。理由は、分からないらしいが彼らが壊したと俺は踏んでいる。
校長にそれを主張したしいが、「原因がわかったら、直してあげよう」といわれたらしい。
電池を変えたり色々したが結果、直らないまま。今日まで続いていると言うことらしい。
「あ、俺時計で見てくるわ。」
俺が立ち上がって少し準備運動をする。休み時間は15分程度。まあ、後10分ぐらいだろう。グラウンドから部室まで一キロ程度。うちの学校とグラウンドは、一キロ程度離れており、部室は学校にある。学校の方が駅や家に近いから、そっちに荷物を置いている。
「うん、わかった。いってらっしゃい。」
そう、彼女が言うと、部室に向かった。
「相変わらず汚ない部室だな。」
部室はぼろく、むさ苦しい雰囲気をかもし出していた。きっと、女子専用の部室は別なんだろう、なんて考えたりする。なんだ、恥ずかしくなって、くだらない、と一人で苦笑してしまった。
自分のロッカーをあけ、通学カバンをあさってみる。
「あっれ?ねーな。」
カバンに入れて置いた、腕時計が何故か無かった。部活前に外して、確かにカバンの中に入れたと思ったのに。
「じゃあ、教室にあんのかな?」
というか、それしか俺に選択肢がない。
「面倒だが、いくか。」
俺は、そう決めると教室に向かった。近くの廊下までいくと、髪の長い女子生徒がこちらに走ってきた。あれは、香坂だ。あの腰ぐらいまで伸びている髪は、香坂に違いない。
「おーい、香坂。」
取りあえず、話し掛けてみる。しかし、彼女は無視して、通りすぎてしまった。
「なんだあれ。」
流石に、傷つくぞあれ。
そうもって教室にはいると、誰かがボケーと立っていた。
「あれ?まだ、人が残っている。」
俺が、そういうと目の前の人物は、ニヤリと笑った。多分、こいつが香坂をああさせた犯人だと思うと少しむっとした。
「おーい、大丈夫か?」
流石に、気味が悪くなったので、尋ねてみる。
「まあ、大丈夫かな?」
「なんで疑問系なんだよ。」
そういって、彼はため息をついた。
「なんで、二木ここにいるの?」
「忘れ物とりに来たんだ。」
時計をな。
「そうなんだ。」
シーンと、静かになる。俺は、お前から話してくれる。そう思ったけど、そうはいかないな。
そう判断した俺は思いきって、さっきの事について切り出してみた。
「さっき、香坂と廊下で会ったんだ。けど、なんだか様子がおかしくて話掛けられなかったんだ。お前ら、何があった?」
「いや、それが―――。」
一連の事について、話してくれた。勿論、謎は簡単に溶けた。そして、簡単に言えば
「と言うことは、お前が香坂に見とれていて、話を聞いて無くて香坂が拗ねた、と。」
「い、いや、見とれてたなんて!」
目の前のにぶ男は、顔を真っ赤にして否定した。
「まあ、女って面倒だなー。」
本当にそう思う。何がしたいんだか、検討つかない。内山といい、香坂といい。
「どうしよ。」
「さあ?適当に、謝れば?」
何も分からない事に、少し苛付きを覚え、それを隠し平然を装った。
「な!他人事みたいに、いうな!」
彼は、そう言った後、ふざけるなと言いたげな顔をした。
「他人事だけど?」
事実だ。
「むー、友達思いじゃないな。」
「いや、それお前の問題だろ?」
「そ、そうだけど。」
「それにしても、香坂でも拗ねるんだな。」
あいつは、そういうの隠しきるタイプだと思っていたのに。そう思うと、更に苛ついてきた。ふつふつと湧き起こる、訳の分からない苛つき。この正体が、よく分からず、少し苦笑した。
「はあ?」
訳分からないと、思ったのだろう。思い切り顔にでている。こいつ、わかりやすい。
「だって、香坂ってなんか、感情が変というか・・・。」
そうだろう、あの性格だ。おもしろい―――
するとガタッ、という異音がした。・・・。
「「・・・。」」
沈黙が流れる。まさか、さっき帰ったと思った人物がここに来るなんて、思っても見なかった。
まさか、香坂が立っていたなんて・・・。
「・・・お前ら、私をそんな風に思ってたのか。」
肩をふるわせ始めた。そして、俺らをキッとした目で睨みつけ、
「変でわるかったな!」
そう叫んで、帰っていった。
「あー、やっちまった。」
俺は右手を顔を当てた。まさか、戻ってくるなんて。考えれば考えるほど、ため息しかでなかった。
「他人事じゃあなくなったな。」
そういって、俺は笑うしかなかった。