類似「人」には気をつけよう!(仮)
ある、県庁所在地―――――の隣街の中にある私立高校。
昼休みの校舎の廊下では、生徒たちの会話が弾む。
その中に、一人で棒立ちの私はいる。
白と紺の制服に、黒に近いグレーのようなショートヘア、縁無しの眼鏡。
名前は「大垣菊花」、高校二年生。
今まで私は、人としての器だとか、考え方だとかで、まるで自分が特別な人間であるかのように扱われる事を嫌ってきた。
しかし、それは「人に持て囃されたくない」というわけではなく、
「自分が普通の人と違った個性や才能があるかのように言われたくない」、と言った方が正しい。
「自分のような人間なんてどこにでもいる」―――――。
この考え方が私の頭の中で芽生え、そのまま育っていった結果だ。
「あっ、大垣さん。 何してるの?」
この時に話しかけてきたのは、私の友人の一人である「多治見」さん。
高い背と、髪の二つの青いヘアピンが特徴的。
女子バレー界では「逸材」と言われていて、校内では既に彼女の事を尊敬している、という生徒も現れているほどには名が知れている。
「はい?」
そんな彼女が何を言ってくるか、と思ったら―――――。
「帰り、コンビニでも寄らない?」
誘いだった。
「いいですね……」
少し迷ったが、私にはこれを拒否する理由がなかった。
「ありがとう! 新商品がコンビニ限定販売らしくて……」
「何か話題になってましたね、紅茶コーヒースパークリングでしたっけ?」
「そうそうそう。 面白そうで気になってるんだよね」
彼女はペットボトルの紅茶が好きで、前に話をした時は朝に飲むミルクティーは「格別」だと言っていたか。
その後、授業が終わり―――――。
二人で会話をしながら歩道の左側を歩いていると、目的地としていたコンビニに到着した。
ガレキのような模様の壁に、白地に赤、黄色、緑の線の看板が特徴的だ。
入り口の真上の看板には、黒色のロゴマークもある。
ここが「フィフティーン·フォーティーン」という、「10代後半の学生から40代の建設作業員までが快適に利用できるコンビニ」をコンセプトにして、
現在では業界最大手にまでなったコンビニのチェーンだ。
私はその店内へと入っていく。
多治見さんは目当ての飲み物を探して、扉式の冷蔵庫の方へと向かっていく。
私は菓子を買おうと思っていた。
だが―――――。
「良いチョコレートとかは……」
横にいたのは、よりにもよって偽者か何かのように私に似た人間だった。
「えっ……? 待ってください……? どうして……どうして、私がここにいるんですか……?」
その偽者は、髪型に制服のデザインに眼鏡、更には体型までもが私と全く同じだった。
顔をよく見ると目に覇気がない事が分かるが、それ以外は完全に私と瓜二つだ―――――。
本当に目を疑った。
あちらも想定外だったのか、もともと感情が顔に出る事が少ないタイプなのか、こちらの顔を凝視するだけ。
「もしかして……御本人、ですか?」
まるで自分が物真似をやっていた芸人で、私がその物真似された名の知れた歌手か何かのような言い方だ。
私には真似されるような事をした覚えは無いのに、何故―――――?
そんな状況になっている私の後ろに、「紅茶コーヒースパークリング」3本を持ってレジに向かっていた多治見さんが来た。
「ちょっと待って、何これ!? 大垣さんって双子だったっけ!?」
リアクションが私よりも大きい。
衝撃的だったのだろうか―――――?
「どうも、はじめまして。 加茂と云います」
「ど、どうも……」
頭を下げ、自分の名を名乗る「私に似た者」。