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小宇宙蓋然主義

作者: 伴俊作

黒歴史確定。

 最近宇宙が縮んでいるという。何故かは知らない。僕は今日もここで昼食をとる。周りには誰もいない。

 宇宙が縮むおかげで僕らもそれに合わせ縮小する。つまり、何も変わらない。毎日同じ時間が音や色と一緒に流れていく。ピーヒャラ、赤、スコテコ、黄色、ポポッポ、青。何も変わらないのは嘘で、実は変わった、何か変わった。何だろう。

 向こうでいちゃつくカップルが喪服を着ている。後ろを通る尻尾のない猫は二足歩行だ。僕の矮小な身体は半透明だ。全ていつも通りだ、何も変わらない。でも、変わってる。いや、代わってる。それとも、換わってる。まだまだ、替わってる。もしかして、カワッテル?

 気がつけば僕の影が買い物から帰ってきた。明日の待ち合わせ場所について会話をして、彼はまた出かける。天を仰げば妖精が降りてくる。宇宙の拡大化反対運動に署名すると、光になって消えた。不承不承に立ち上がる。余った弁当を抱えて迷路を突き抜ければ、樹は近い。途方に暮れる彼女を見つけた。一通りの嘘を言うと、僕を呪って死んだ。思えば何の呪いか聞いていない。彼女を起こして見たが、赤い花になっていた。

 僕は思い出した。何を?あれだ。あれって?これだ。これって?それだ。そうか。樹は、音と色を排出している。ぽえん、紺、チュバチュビ、橙、おうんおうん、赤紫、げほー、黒、にゃみにゃみみ、白。だからこの樹だけはずっとカワラナイ。宇宙が縮み、地球が縮み、日本が縮み、あいつが縮み、僕が縮んでも、樹は縮まない、カワラナイ事がカワッテル。

 涙が僕の目から流れてくる。きっとこの樹が、縮んだ宇宙に引っ掛かって、宇宙の空気が抜けてしまう。空気が僕の身体から噴き出してくる。今にもこの樹が、宇宙に引っ掛かって、空気が抜けそうだ。オソレが僕のはらわたから沸き出てくる。もう、この樹のせいで、現世のおしまいだ。

 宇宙の大きさは以前の69283728382664分の1になった。外では妖精がクスクス笑ってる。僕は怒りを知り、彼女にかけられた呪いの意味も知った。呪いは非道なものだった。それにかかると怒りを知ってしまうのだ。僕は怒りの安らぎに包まれる。彼女は赤い花から青い空になって僕を笑っている。僕から発芽した私は拳を振り上げ駆け出した。足は韋駄天だ。青い空を踏みつけて妖精に手を伸ばす。手のひらでは妖精がクスクス笑っている。

 後ろを向くと、宇宙はリンゴ程の大きさで、巨大な樹にしがみついていた。私の周りは広さの判らない、真っ白な空間で、樹の出す音と色だけが私達を愉快にさせた。暫くして気付くと、宇宙はしぼんで、奈落に降りていた。

 そうだ、明日は影と合う約束をしていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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