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仲間探し




「そんじゃ、班に分かれて武器なんかを探そうか。おふくろさんと十年式信号拳銃はここで連絡係ね。重すぎたりする物があったら、飛龍を呼んで」

「了解です。司令もお出になるのですか?」

「もちろん」

「ありゃっ、大淀さんがおふくろさんと三笠さんと司令で、お話したいみたいっすよー?」

「そうなのか。まいったなあ・・・」

「笠原はここに残るといい。多分、戦闘機がなぜ飛来したかだろう」

「そっか。なら三歩、仲間探しは任せたよ」

「了解。さあ、出かけよう」


 チハの車体に座って、十年式信号拳銃に頷いてみせる。

 すぐに、大淀の声が聞こえた。


「聞こえますか、司令?」

「はっきり聞こえる。無線って凄いねえ」

「九五式一型練習機さんは?」

「聞こえますよ」

「ほな始めよか。秋水は無事に着陸して、風呂に入っとるでな。心配せんといて」


 今現在も敵機の飛来を警戒し、呉では航空機を迎撃待機させているらしい。

 今回の戦闘では隼、鍾馗、疾風の3姉妹を戦車と一緒に部隊編成していた。なので隼達のレベルもそれなりに上がっているだろう。

 明日はみんなを休ませるにしても、明後日にはまた空戦をやる事になるかもしれない。


「おふくろさん、どう思うねん?」

「定期的に呉を駆逐艦で襲うように、呉以外で航空機を飛ばせば戦闘機が迎撃に来る、としか・・・」

「司令は?」

「制空権、じゃないのかな。前に話したゲームってのに似た行動原理で、怨霊は動いてるのかもしれない。明日は休みで、明後日に攻略済みの峠島まで飛んでみればわかるでしょ」

「海軍の戦闘機は誰もおらんから、ちょっと心配やなあ・・・」


 たしかに僕でも名前を知っている零戦でもいれば、隼達に流星と天山を加えて6機で部隊が編成できる。


「烏口に飛行機作ってもらう?」

「それも考えたんやが、眠っとる魂が勝手に移動する事はないんやて。せやから作るなら機体が1つも残っとらん飛行機やないと・・・」

「そんなん、わかる訳ないもんねえ」


 鎮守府に当時の記録が残されていると言っても、怨霊の発生で混乱しシェルターに国民を避難させる準備があった。そして怨霊を迎え討つ、天一号作戦発動。

 そんな当時の記録に、完璧などあり得ないだろう。


「1機もない航空機といえば火龍をまず思い浮かべますが、秋水と同じジェット機ですから現在の技術力では・・・」

「とりあえず、今の戦力でやるしかないんだ。宇品には陸軍の倉庫も多いって三歩が言ってたから、飛行機が眠ってるかもしれないし」

「明後日に峠島までの飛行ですか。それで敵機が来なければ、司令の考え通りという事になります。似島は陸軍だけで陥落させるにしても、宇品は総力戦になるでしょうから・・・」

「だね。まずは隼3姉妹に流星と天山、秋水まで部隊に編成して試すしかないよ」

「こっちでも大淀に当時の資料を探してもらって、烏口と航空機をどうするか話してみるわ」

「よろしくね」


 水筒の水を呷る。

 おふくろさん、十年式信号拳銃と水筒は渡り、戻ってきたそれを腰に下げる。


「十年式信号拳銃、仲間発見の報告は?」

「ないっすねえ」

「武器は数が多いので、そう簡単には・・・」


 地図を睨みながら考える。

 似島には検疫所があり、陸軍の部隊も駐屯していたらしい。

 当然、怨霊の襲来に備えて迎撃準備はしていただろう。激戦になるはずだ。


「そういえば、司令部レベルが4になってるや。【地図上作戦立案】を取得っと」

「どのようなスキルなのですか?」

「地図に部隊図なんかが出て、部隊の攻撃力と防御力が上昇。あ、偵察後なら、敵の部隊図も出るって。それが地図上で動いて、HPなんかも表示される」

「なるほど、良いスキルですね。昔と違って会話可能な無線がありますから、司令がどこにいても指揮が可能なのはありがたいです」

「おお。動いてるし、HPも表示されてるよ、ほら」


 地図上には、戦車と戦闘機の印が仲良く歩くという不思議な状態が表示されていた。


「これはいいですねえ」

「レベル依存の編成可能部隊数が増えれば、全員の無事を確認しながら待てるんだけどなあ。ねえ、似島は陸軍だけで陥とせると思う?」

「余程の事がなければ、可能でしょう。大砲の怨霊がいれば、海から潰してもらえますし」

「眠ってる武器が近くにいると怖いから、出来れば陸で仕留めたいんだよね。大砲を撃って来ても、その近くにいる人型の怨霊を殺せばいいんでしょ?」

「それは、そうですが。上陸してすぐに敵陣を抜けて砲の怨霊を倒すなんて、そんな忍者のような兵はいません」


 そういえば、三笠は僕を忍者の末裔かって言ってたな・・・


「何をお考えですか?」

「ん、何でもない。三歩と三剣ちゃんと僕なら行けないかな、なんて考えてないよ?」

「絶対に、許しませんから!」

「ですよねー。ま、大砲は豊後水道から来る怨霊に向けて設置されてるはず。バカ正直に似島港から上陸する気なんてないから、なんとかなるでしょ」


 似島港は峠島から見て島の反対側だが、峠島から近い場所にも小さな船着き場がある。

 そこから上陸すれば、怨霊の攻撃はないかもしれない。

 少なくとも、四国側や豊後水道側から上陸するよりは楽だろう。


「隼、鍾馗、疾風のレベルは3。これでさっきの戦闘機に勝てると思う?」

「秋水も強くなっているでしょうし、大丈夫だと思いますよ」

「えーっと、秋水もレベル3だ。明後日が楽しみだねえ。峠島まで飛んで怨霊が来なければ、希望者は操縦訓練に入れる」

「それが不安ですけどね」


 戦乙女でも、訓練さえすれば飛行機を操縦できる。

 なので希望者は事前に申請するようにと通達してあるはずだ。


「楽しみっすねー」

「お、十年式信号拳銃も乗るの?」

「もちろんっす。操縦が出来れば、オイラでも戦闘で役に立てるんっすから」

「僕もそうなんだよ。頑張ろうね」

「はいっすー!」


 弁当の昼食を終えてしばらくすると、3班のうちの2班が島の向こう側まで探索し終えたと連絡が来た。

 残るは地図に映っている隼達だが、海は目の前なのですぐに探索は終わるだろう。


「司令、大発動艇です」


 おふくろさんが指差す方向には、こちらに向かってくる大発動艇が浮かんでいた。


「上陸の時に壊れちゃったからありがたいね。でも、誰だろ?」

「まさかの三笠殿です」

「あれま。わざわざありがたいねえ」


 最後に探索を終えた隼達が帰還するという報告を聞いていると、三笠は見事な操船で船着場に新しい大発動艇を着けた。


「わざわざありがとね、三笠」

「なあに、相談もあったんでそのついでや。気にせんとって」

「相談?」


 投げたロープを十年式信号拳銃が金具に括りつけると、三笠は身軽に船着場に飛び移った。


「せや。烏口と話したんやけど、資材さえあれば艦船も改造したり出来るそうやねん」

「そうらしいね。潜水艦達は、また明日から怨霊の本体の引き上げ作業でしょ。どのくらいで終わりそ?」

「あと3日やな」

「思ったより早いな。それで、相談っていうのは?」

「沈んだ艦船の復活も急ぎたいんやが、先に今いる戦乙女の改修を優先しちゃもらえへんかなあと」

「なんだ、そんな事か。もちろんいいよ。順番や内容も、三笠と大淀で決めていい。あ、改修の内容は本人ともよく話し合ってね」

「なんや、えらい簡単やんか」

「元からそのつもりだったからね」


 僕はまだ勉強中の素人だ。

 海戦に必要な物が何で、それが今の海軍にあるのかどうかなんてわからない。なので三笠と大淀に決めてもらうしかないと、ずっと思っていた。


「改修、ですか・・・」

「いやいや、おふくろさん。ムリは絶対に禁止ね」

「こう、なんか上手く銃の上にオイラを乗っけて・・・」

「十年式信号拳銃も。設計である程度の制約が出来ちゃってるんだから、魔改造なんてさせないからね!」

「むう・・・」

「司令は夜も昼も意地悪っす・・・」


 人を変態みたいに言うんじゃないと思っていると、おふくろさんが顔を真っ赤にして僕をチラチラ見ていた。

 どうやら、こないだのアレを思い出しているらしい。


「うおっほん。おお、三歩隊が帰ってきたね」

「ただいま戻りましたっ!」

「お疲れ様。どうだったの?」

「仲間どころか、ロクな武器がなかったな。九六式十五糎加農3門が、最大の獲物だ」

「大砲か。飛龍が運んで陣地に据え付ければ、この先も使えそうだね」

「ああ。そう思って持ってきたんだ。潰した銃座も回収したから、鉄の足しになるだろう」


 雑談をしているうちに全員が帰還し、大発動艇に乗り込んで呉へ帰る。

 夕食を食べていると飛龍が、明日から僕の運転訓練を始めると言い出した。


「なんで運転訓練?」

「司令はエンジンの付いた乗り物を運転した事があるのかい?」

「ないよ」

「なら、まずはエンジンとギアに慣れてもらう。それから、荷重移動の重要性だね」

「荷重は力学用語として知ってるけど・・・」

「知識だけでも、実践だけでもダメさ。せっかく車や単車があるんだから、今から訓練をしておかないとね」

「そうですねえ。昔はそれこそエンジンの理屈も知らない若者を立派なパイロットに育てましたが、それは充分な時間があったからです。この状況では、司令には運転技術と機械知識を学んでいただかないと。あ、もちろん、飛龍が合格と言うまで航空機の操縦はおあずけですよ?」


 なんてこった。

 すぐに操縦訓練を始めて、来年には実戦に出る気でいたのに。

 飛龍の性格では、簡単に合格なんて言わないだろう。

 これはマズイ。


「搦手でどうにかしようなんて思ってもらっちゃ困るよ、司令。アタシが納得するくらいに、知識と技術を身に付ければいいだけなんだからさ?」

「・・・わかった。教本は?」

「後で届けるよ」


 くそう、そのままアレコレしてやる!


「な、なんか寒気がした・・・」

「ご愁傷様だ。まずは単車か、飛龍?」

「あ、ああ。そうだよ、姐さん。回転を合わせてギアチェンジ。減速と加速の感覚を、しっかりと体で覚えてもらう。その後が荷重移動だねえ。ギアチェンジやブレーキで簡単に吹っ飛ぶ単車なら、覚えは早いさ」

「怪我にだけは気をつけないと。私達は司令といれば怪我はすぐ治りますが、司令の怪我は通常の治療をして自然治癒を待つしかないんですからね」


 神妙に頷く。

 九州で縫った目の上の傷は、つい先日抜糸したばかりだ。

 なるべくなら、怪我はしたくない。

 それでも僕は明日から、必死で運転訓練をするだろう。

 みんなを、守りたい。

 口には出せないけど、この気持ちは本物だと僕は知っている。



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