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峠島攻略戦




 朝の光を受け、雪風の艦体が輝いている。

 第一上陸場にいる三笠と大淀、迎撃待機要員と敬礼を交わすと、雪風はゆっくりと動き出した。


「ついに始まるか。【地図上作戦立案】の取得が間に合わなかったのは残念だね」

「怨霊がいないんじゃ仕方ない。しかし、海鷹が特に張り切っているな」

「艦載機で偵察と援護をしてくれるそうだからね。期待しようじゃないか、司令」

「でも、艦載機と偵察機だと戦闘機の怨霊が来ないのは何でなんだろね?」

「わからんなあ。それに呉に来てからは、陸軍の航空機を飛ばしていない。あれは、関東での話だ」

「呉が本拠地だから? いや、そんな訳ないよね」


 怨霊の行動には謎が多い。

 艦隊を組んで呉を襲撃するくせに、6艦以上では来ないのがいい例だ。


「今は、上陸と陸戦に集中しよう」

「だね。空はまだ、お預けだ」

「くっそ、司令は卑怯だ・・・」

「まあ、あれは仕方ないっちゃ」


 江田島を左に見ながら艦隊は進む。

 峠島から宇品までは、直線距離で3キロほどらしい。

 島の北から望遠鏡で覗けば、眠っている艦船を見る事が出来るだろう。だがそれも、無事に峠島を手に入れたならばだ。


「屋形石が見えてきたな」

「その向こうが峠島でしょ。あの遠くに見えるのが、宇品なんじゃないの?」

「かもしれない。双眼鏡は、と・・・」


 僕の視力は良い方なので、うっすらと軍艦のような船体も見えている。

 三式指揮連絡機を運用する熊野丸には艦の上部に艦橋がないらしいが、遠くの船影はまさにフラットなデザインのように見えた。


「おお、熊野丸に摂津丸。間違いないぞ!」


 その三歩の声で、陸軍の全員が船縁に駆け寄った。

 双眼鏡がある戦乙女はそれを覗いているし、九九式狙撃銃なんかは本体を出してスコープを覗き込んでいる。


「砲撃はないね。というか、ほぼ無人島じゃない?」

「おかしいな。たしか怨霊の発生後に、宇品を守るための基地が置かれたはずだが・・・」

「計画倒れになったのかもね。大和達のおかげで、怨霊の侵攻を遅らせるのに成功したらしいし」

「ならいいが・・・」


 仮設クレーンに吊るされた大発動艇が、船縁の高さまで下ろされた。

 やる気満々の隼を先頭に、次々と乗り込む。


「しれぇ、気をつけてね・・・」

「雪風もね。怨霊艦はいないみたいだけど、油断はしないんだよ?」

「うん。いってらっしゃい」


 大発動艇が下りてゆく。

 海に浮かぶとすぐにロープが外され、エンジンが動き出した。


「行くよ、司令?」

「お願い、飛龍」


 大発動艇が小さな船着場に向かう。

 敵の姿はないが念のために地図を見ると、船着場から丘に向かう途中にたくさんの三角形が浮かんでいた。


「飛龍、避けてっ!」


 映画のような銃撃音。

 銃弾が大発動艇の船体に当たって、穴が開いたり跳弾したりしている。


「クソッ、反転して逃げたらいい的だ。突っ込むよ!」


 コンクリートの船着場。

 ヤケになったようなスピードで大発動艇が進む。


「三式砲戦車、意見具申します。橋頭堡を築かせて下さい!」

「どうやって!?」


 桟橋の影に入っているので、銃撃はさっきよりも少ない。

 それでも弾は飛んで来て、何人かが怪我をしているようだ。


「本体を出して、盾にしながら進みます。船着場の先に戦車を並べ、銃座を砲撃です」

「許可する。指揮は三歩。戦車全員を連れてって。怪我人は僕のそばに。その他は、三式砲戦車が本体を出す前に敵の目を引いて」

「了解!」


 肩から血を流す隼が、引き摺られるようにして連れて来られる。

 服をはだけて見ると、弾は貫通しているようで前後とも肉が抉れていた。


「痛いだろうけど、少しだけガマンして」

「こんな豆鉄砲、なんて事は、グッ!」

「戦車隊、出るぞ!」


 三歩達が上陸するようだけど、それを見ている余裕はない。

 隼の肩の傷に唇を付け、とりあえず傷を塞ぐ。


「隼より重症の子は!?」

「いません。他は掠って肉が抉れた程度です」

「了解。少しだけ待ってて」


 操縦室に隼を引っ張り込む。

 血で汚れた口を袖で拭きながら、隼を抱き寄せた。


「し、司令、まさかっ!」

「HPが減ってるからね。ガマンして」


 キス。

 深く長く、口内を蹂躙する。

 繋いだ手が痛いぐらいに握られてから目を開けると、隼のHPは最大の2950にまで回復していた。

 唇を離す。


「あっ・・・」

「もう大丈夫だよ。続きはまた今度ね」

「あ、ありがとうございました!」

「おふくろさん、次の怪我人を」

「お願いします。戦車隊、展開完了しました」


 他の3人は、傷を舐めるだけでHPも全快した。

 砲撃の音が聞こえ、大発動艇には銃撃はこなくなっている。


「戦況は?」

「圧倒的に有利です。相手には、砲がいないようなので」

「それは助かるね。九九式狙撃銃、怨霊は倒した?」

「うん。3匹・・・」

「さすがだね。レベルが2になってるなら、銃を出して」

「うん。これ・・・」


 船縁から顔だけ出して九九式狙撃銃を構える。


「撃てるのですか、司令!?」

「多分ね。九九式狙撃銃、右端の銃座を狙うなら、スコープの目盛りはどこ?」

「1つの5分の1・・・」

「厳しい要求だね。でも、三歩はそんなに離れてない。ならっ!」


 銃爪を引く。

 衝撃。

 三十年式歩兵銃とは比べ物にならないほど、音と衝撃が大きい。

 それでも、スコープの中の怨霊は上半身が千切れ跳んでいた。


「うっは、誰かのスキルも乗ってオーバーキルか。九九式狙撃銃、ありがとね」

「そこ置いてて。でも、もう撃たないの?」

「1発目しか当たらないんだよ。許されるんなら、木が多いから迂回して斬りに行くんだけど・・・」

「許しませんっ!」


 おふくろさんの名は伊達じゃない。

 銃撃は来ていないが身を屈めながら言うおふくろさんは、腰に手をやって目を釣り上げていた。


「だよねえ。しっかし、本体を盾にして砲撃とか、戦車って強いねえ」


 九七式中戦車であるチハ、九五年式重戦車、三式砲戦車は本体を並べ、森の中にある銃座を次々に潰している。


「艦載機も来てるから、もうすぐ片付くと思うよ」

「三剣ちゃんは、三歩の肩か。撃てー、の仕草がかわいいね」

「司令、空をっ!」


 ほんわかした気分で三剣ちゃんを見ていると、隼の切迫した声が聞こえた。

 空がどうしたんだろう。

 艦載機が機関砲を銃座に撃ち込んで上昇。

 その上昇した九九艦上爆撃機に迫る、黒い飛行機。


「怨霊!? 十年式信号拳銃、海鷹に連絡。島は気にせず、怨霊の航空機を迎撃!」

「了解っす!」

「おふくろさん、あの九九艦爆は本人?」

「いいえ。今回こちらに、海軍の航空機は来ておりません」

「なら海鷹が操ってるのか。敵は5機。隼、勝てると思う?」

「ムリだ。流星と天山も上がってるけど、1機ずつなんだから。くっそー! アタシも上がれれば、すべて墜としてやるってのに・・・」


 艦船は銃の10倍の経験値でレベルアップ。そして航空機は、銃の5倍だ。

 この間の戦闘で3人はレベルが2になったので、出せるようになった3機しか海鷹には搭載していないのだろう。


「艦が沈められる可能性は?」

「あれは隼達と同じ、戦闘機ってやつだからね。それはないさ」

「となるとその分、格闘戦に強いのか・・・」

「司令、呉から援護の艦載機をあげてくれるらしいっす!」

「おおっ。少しだけ持ちこたえてくれって、海鷹に言って」

「はいっすー!」


 流星が敵を引っ掻き回し、天山と九九艦爆が2機で敵の1機を狙っている。


「おおっ、惜しいっ!」

「隼、悔しいのはわかるけど、そんな顔をするんじゃないって」

「だが飛龍、アタシらがいればあんな旧型の怨霊!」

「司令、意見具申があるです」

「うおっ、秋水いたのっ!?」

「・・・傷ついたです」

「ご、ごめん。それで、何かな?」


 秋水は本体も小さいらしく小柄で、松型駆逐艦より少しだけお姉ちゃんだ。

 見た目でアウトだと僕は言い張ったのだが、笠原なら大丈夫だと三歩に説得されてレベルとスキルを得ている。


「スキルで秋水は上がれるです。援護に行っていい?」

「おふくろさん、どう思います?」

「行かせてみたらどうでしょう。飛行時間には余裕を持って、1人で呉の飛行場に着陸できるなら」

「約束するです。じゃ、行くです」


 そう言って秋水は船着場に下り、戦闘が一段落して空を見上げている戦車の前まで走った。

 そのままかわいくジャンプ。

 すると、オレンジ色の小さな戦闘機が現れ、ジェット噴射でほぼ直角に空へ上がった。


「ええええーっ!」

「秋水め、羨ましいスキルを持ってやがるなあ」

「たしか【緊急迎撃の鬼】でしたね」

「すれ違いざまに1機を喰った!」

「いい腕だねえ、初めての本格飛行なのに」

「そうなの、飛龍?」

「らしいよ。呉には駆逐艦しか来ないからね」


 それから3度ほど急上昇と急降下を繰り返すと、黒い怨霊の機体はすべて海に墜落したらしい。

 秋水は翼を何度か揺らし、呉の方向に飛び去った。


「ジェット機って、凄いねえ・・・」

「5分しか飛べないんだ。あれくらいはやってもらわないと」


 怪獣を倒すヒーローみたいなもんか。

 それなら、あの強さも納得だ。


「司令、ここを狙える銃座はすべて潰した。上陸を」

「そうだね。お疲れ様、三歩」

「最後に秋水がすべてを掻っ攫っていったがな。チハ達を褒めてやってくれ」

「もちろん。十年式信号拳銃、秋水と海鷹にもありがとうお疲れ様、って伝えて」

「はいっすー」

「そんじゃ、総員上陸ー」


 コンクリートの船着場から空き地のような場所に出した戦車まで歩き、突然の陸戦と空戦でカラカラになった喉を潤す。


「チハ、九五年式重戦車、三式砲戦車、お疲れ様ね。ほら、お水でも飲んで」

「わーい」

「こらチハ、何でお前が1番最初なんだっ!」

「もう、司令の前で喧嘩しないの」

「後は敵の殲滅か。地図に敵影は、笠原?」

「ないね。近くのは全滅みたいだよ」

「敵、もういない・・・」

「えっ?」


 九九式狙撃銃が呟いたので、全員の視線が集まる。


「そうでしたね。九九式狙撃銃のスキルは【心眼索敵】ですから」

「えーっと。ああ、僕の軍隊手帳にも書いてある。心の目で敵を探す。索敵範囲はレベル依存。ディレイ3分。なるほどねえ」

「レベルは5。だから確実・・・」

「狙撃で5体も倒したのか。さすがだな、九九式狙撃銃」

「姐さんには劣る・・・」


 そうなると、これから仲間と武器を探さなきゃいけない訳か。

 狭い島だからそう時間はかからないと思うけど、大変な作業になりそうだ。



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