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第七話・大阪夏ノ陣(中編)

本当は前編・後編だけのつもりでしたが、今回は中編も入れて三部構成となります。勿論、中編ではアンデッド達が主人公に容赦無く襲いかかってくるのでお楽しみに!

非常事態宣言が出されたと言っても対して生活に変わりは無かった。



外出が22時までに制限されているのと、警察や自衛隊がパトロールしているくらいである。



洋介も昼は大学の友達と遊び、夜は家で軽い飲み会を毎晩のように開いていた。



「もう一杯飲むか?」

洋介は友達の金子の持つビンに焼酎を注いだ。



金子「斉藤は?」



「そろそれ来ると思うよ、電話して見ようか」



斉藤の携帯にダイヤルする洋介。



しかし、暫くしてもスピーカーからはプルルルルーと音が聞こえてくるばかりであった。



「未だ、買い物でもしてんじゃね?」

と、ヒクッとシャックリをしながら焼酎を飲む金子。



「非常事態宣言が出て、かれこれ一週間にはなるけど、何も起こらないよな」


「あれだろ?死んだ奴がゾンビみたいに襲ってくるんだろ?」

そう言いながら「ウァー」と洋介を脅かす金子。




「やめろよ、お前酔ってるだろ」



「はぁ?酒飲ませといて酔うなってか」


あきれる洋介。



「テレビでも毎日ニュースで感染者が増えてるって言ってるけど、」




思い出したように「大阪から出るには検問で検査受けてからなんだろ?」と金子。



「それで、感染者は隔離されるんだって」と洋介。



斎藤が来ないのを心配し、部屋の時計に目をやる洋介。



「もう22時になっちゃうよ」



「もう1度電話してみろよ」



洋介は頷くと通話履歴から斎藤を探し通話のボタンを押した。



すると、今度は意外と近くで着信の音が聞こえたので見回してみるが、当然部屋の中には斉藤は居ない。


「おい、階段の所じゃないか?」と金子。



少しふらつきながら、洋介は玄関へと向かう。



「おーい斉藤君」と言いながら玄関を開けるが斉藤は居ない。だが、不思議と着信音は聞こえてくるのだ。



吹き抜けになっているのでかなり音が響いていた。



確かに聞き覚えのある着信音だった。



金子が後ろから「あれ?居ないの?」と言いながらトイレへ入ってく。



すると、斉藤はどこからともなく現れた。



「遅かったな」と安心する洋介。



だが、返事が無い。



「髪の毛延びた?」


しかし返事が無い。



洋介はようやく斉藤の異変に気がついた。



「どうした、気分でも悪いのか?」



洋介は斉藤の顔を覗き込んだ。



すると、彼の顔は真っ青であった。そして目は赤く、まるで風邪でも引いたかのようだ。口からは血が滴り落ちている。



「おい、どうなってるんだ!」



次の瞬間、斉藤はうなり声を上げて口を大きく開けた。異変に気がついた洋介はとっさに斉藤から距離をとる。



その時、水の流れる音がして金子が「あー、スッキリした」と言いながらトイレから出てきた。



「おい!気をつけろ!」


洋介は事態を全く読めていない金子に注意をしたが、既に遅かった。



なんと、斉藤は金子に襲いかかったのだ。



「金子、危ない!」



斉藤は金子を押し倒し左腕に噛みついた。



「何しやがる!」



金子は上からのし掛かってきた斉藤の胸を思いっきり蹴り上げた。



急な出来事で金子の酔いは一気に覚めた。



「何なんだよこいつ!」


金子は噛まれた腕を押さえ、立ち上がった。



「外に出せ!」と洋介。


金子は斉藤の目を見た。


「完全にイっちまってるぜこいつ」

そして、身の危険を感じ、手直にあった包丁を手に取った。



「斉藤、お前どうしちゃったんだよ。やめろよな」



金子の説得も虚しく、斉藤は再び金子の方へと接近し始めた。



「例のウイルスのせいか?」と金子。



「来るな!来るんじゃない!」金子は包丁を口にくわえ、目の前に有った椅子を投げつけた。



だが、斉藤には全く効果が無いようだ。



金子は包丁で威嚇をする。



しかし、斉藤には包丁など全く関係が無いようだ。



斉藤は真っ直ぐ金子に向かっていった。



「来るな!」



金子は目をつむり、包丁をとっさに前に向けた。


スナック菓子をかじった時のような音がして包丁が斉藤に突き刺さった。


「こいつヤバイぞ!」

と焦る金子。



「ベランダだ!ベランダに閉じこめよう!」と洋介。



金子は斎藤に刺さったままの包丁を離し、距離をとった。



しかし、胸に包丁を刺したまま再び金子へと向かっていく斎藤。



その間にベランダの引き戸を開ける洋介。



戸が開くのを確認し、金子はベランダと引き戸の間に立った。



「なんで刺したのに動いてるんだよ!」と洋介。


「やっぱりニュースで言ってたやつなのか?」と金子。



斉藤は血混じりのよだれ垂らしながらゆっくり金子の方へ向かっていく。


「今だ!押しだせ!」



金子の合図と共に、洋介は後ろから思いっきり体当たりを食らわせた。



斉藤はベランダへと追いやられたが、同時に金子もベランダへ押し出されてしまった。



組み合いになる二人。



金子は今にも噛まれそうな状態である。



洋介は躊躇した。


"もし、自分もやられたらどうしよう"



だが、友達が今にも死にそうな状態である。



自分が助けるしか道はないと悟った洋介は目一杯力を込め斎藤に後ろから飛びかかった。


そして斉藤を金子から引き剥がし「落ちろ!」と言った。



その瞬間、斉藤はベランダから落ち、直ぐしたの小川へと吸い込まれていった。




「大丈夫か?」と洋介。


金子は腕を押さえて「なんとかね」と答えた。



「なあ、斉藤殺しちゃったよ」と落胆する洋介。


金子はため息をついて「あいつはウイルスに殺されたんだ。俺達じゃない」と答え、静かにうつむいた。



先ほどの出来事が嘘のように部屋はシーンと静まり返っていた。



だが、直ぐに状況は一変した。



外の異変に気がつく洋介。



そして「おい、見ろよ」と、金子の肩をたたいた。



二人は絶句した。



空は赤色になり、至る所で火の手が上がっていたのだ。


「何が起こったって言うんだ」金子はベランダの柵に手をついた。



「父さん、、、何処にいるんだよ」と、洋介は心の中で呟いた。

その時、マンションの上空を轟音と共に、飛行機が低空で飛び去っていった。形からして民間機では明らかだった。



飛行機はあっと言う間に米粒の大きさになっていった。


その数秒後だった。



数キロ離れた市街地辺りが赤く光った。そして、直ぐに大きな爆発音が続いた。



驚いた表情で金子が「今のは自衛隊か?」と洋介の方を向く。



「確かに、F-2っぽかったけど」と洋介。



「何で自衛隊が日本を攻撃してんだよ!」と金子が叫ぶ。



「父さんは、まさかこれを」



「どうした?洋介」



「いや、父さんが前に似たような事を言ってたんだよ」



「とにかく、ここはもう危険だな」そう言って、金子はベランダから遠くを見つめた。



「ここを出た方がいいな」と金子。



「そうだね」と洋介。



直ぐに二人は家の中に有った食べ物や懐中電灯、ナイフ等をリュックに詰めた。



そして、恐る恐る玄関の戸を開けた。



「誰もいないみたいだね」と洋介。



二人は階段を一階まで降り通りへと出た。外には誰も居ない。何時もは車がひっきりなしに通っている時間だ。



聞こえるのはコオロギや雨蛙の声だけである。



「どっちへ行く?」



金子が辺りを見回しながら答えた。



「西だよ」と洋介。



西は爆発の起きた方だ。普通なら危険と誰もが判断する筈だ。それは金子にとっても同じ事だった。



「あっちは危険だ、東へ向かおう」と金子。



その時、草むらで何か音が聞こえた。



「今の聞いたか?」



周囲を見渡す二人。



「確かに、様子が変だ。誰かに見られている気がする」



すると、一つ先の角から、人々が次々と現れ始めた。



避難してるようだ。


洋介は助けを求めようと、列へとは走っていった。



列には様々な人が居た。女性に老人、子供達が西を目指して歩いていた。


洋介は、その中に居た警察官に駆け寄った。


「あの、済みません。何処に向かっているんですか?」



洋介は警察官の腕を掴んだ。



しかし、答えは意外だった。なんと、警察官の腕が抜け落ちたのだ。



"こいつらもなのか"



洋介と警察官の目が合った。



すると、今まで西へ歩いていた集団がピタッと停止し、洋介の方へと目をやった。



「走れ!」



金子のかけ声に気がつき、洋介は東の方へと走り出した。



後ろから叫び声が聞こえたかと思うと、なんと集団全体が洋介を追って走り始めたのだ。



洋介は必死で走った



奴らはその直ぐ後ろを塊になって追いかけてくる。



「後ろを向くな、とにかく走り続けろ!」と金子が叫んだ。



突然民家から、男性が飛び出してきた。



「おい、どうなってるんじゃ」



「おじさん逃げて!」



男性は驚く暇もなく、塊の餌食になってしまった。



後ろで壮絶な悲鳴と雄叫びのような奴らの声と男性の叫び声が聞こえた。



"次は自分だ"



二人はとにかく走った。


後ろの方で何かが光るのを感じ洋介は一瞬振り返った。



しかし、奴らはもう数メートルまで迫っている。


逃げる中、洋介はやけに後ろが眩しい事に気がついた。



その時、洋介の携帯が鳴り始めた。



緊迫した場面であるのに流れている曲はカルメンの闘牛士のテーマである。



洋介は携帯に気をとられ、アスファルトに足を取られてしまう。



洋介はもう駄目だと思い、目を瞑った。



突如、大きな音と共に奴らの悲鳴が聞こえた。


なんと、真横か屋根にライトを灯した黄色い馬鹿でかい車が奴らに体当たりしたのだ。



奴らは頑丈で重たいボディに当たり、チーズのように引き裂けた。



洋介は直ぐにこの車の正体に気がついた。以前この車を見た事があったのだ。



黄色い塗装に四角いボディ。太山寺に唯一ある車屋の前にあったあの車。


ハマーH1だ。



しかし、洋介が見た時とは違い、プレートで補強がされているようだった。



車は軍団を半分以上引き裂き、タイヤ痕を残し停車した。



「電話にはちゃんと出るんだ」



中から現れたのは金属バットを片手に持った父親、清二であった。



奴らの残党が清二に襲いかかるが、清二はバットを振りかざし、一気に倒してみせた。



「闘牛士だ…」と洋介が呟く。



「早く乗れ!」



洋介はドアを開け、車の後ろに乗り込んだ。その後ろから金子が続いた。



「出すぞ!」



清二はエンジンを吹かし、バックギアに入れた



車の外には残るアンデッドがボディを叩いている。


そんな奴らを引き倒し、車は方向転換をした。そして、元来た道を急いで戻り始めた。



「大丈夫だ。この車はちゃんと補強もしてある」


清二はそう答えるとナビのスイッチを入れた。



ポーンと間の抜けたチャイムが鳴った。



・およそ2キロ先、左方向です。その先、高速入り口へ右方向です。



「洋介、こうなると言っただろ」と清二。



「信じてなくてごめん」洋介は俯いた。



車は誰も走っていないインターへと進入し高速を一路西へ向かった。



この時、政府では、とんでもない計画が実行されようとしていた。

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