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第六話・大阪夏ノ陣(前編)

初めて前書きを書きます。


今回は前編と後編に別れた内容になっています。



2009年の夏は暑かった。

各地で気温の上昇が相次ぎ、連日の猛暑である。

この頃になると、政府もウイルスの事を隠し通し切れなくなっていた。



ウイルスは広がり、ついに感染者の人数が100人を越えた。


感染者は関西を中心に全国に広がっている。


そしてついに、均衡が崩れてしまう。


均衡はダムの決壊のように一部が崩れると、それを皮切りに全てが破壊されてしまうのだ。




そんな事も知らず洋介は呑気に暮らしていた。




2009年8月29日

大学も夏休みに入り、洋介は大阪の下宿先でのんびりと過ごしていた。



部屋は8畳でワンルームで玄関を開けた所に可愛らしい台所があり、食器が2、3枚洗いかけになっている。



マンションはオートロック付きでエレベーターは無いが黒を基調としたオシャレな外観が特徴だ。


洋介は、その最上階6階の角部屋で暮らしていた。


大学からも近く、友達も多いので、部屋には何時も誰かしら遊びに来ているのだが、今日は未だ誰も顔を見せて居なかった。


「あー、つまらん」



洋介はバラエティを観ながら、コンビニで買ってきたせんべいをかじった。



テレビは相変わらず芸能人の結婚話やスキャンダルばかり流れている。



洋介はソファに横になり何時までも続く同じような内容を何も考えず、眺めていた。



「番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えします」



タレントが数人で新聞記事にああだこうだとコメントを喋っている画面が急にニュースに切り変わった。



アナウンサーも急いでいるらしく準備が出来ていない様子である。



「ただいま入った情報です。大阪堺市の葬儀ホールで葬儀中に人が生き返ったとの情報です」



アナウンサー自身も自分で言って信じられないような口調だった。



画面は直ぐにヘリコプターからの映像に切り替わった。



葬儀ホールと思われる建物の駐車場に救急車やパトカーが赤いランプを光らせ数珠つなぎとなっている。



「新たな情報です。けが人が出た模様です。」



再び画面がスタジオに戻る。


いつの間にか、スタジオにはアナウンサーの他に、別の男性が椅子に座っている。


「JHK報道部山梨記者にお越し頂ました」



紹介が終わると、隣の男性は話を始めた。


「今回の事件、いや現象とでも言うべき出来事、実は日本各地で同じような現象が頻発しているんです」



「同じようなですか?」

驚いた様子で答えるアナウンサー。



「ええ」



「例えば、どのような事ですか?」



「はい、今年の六月に愛媛県て起きた事例では、既に心停止を起こしている患者を救急車で搬送中、突然生き返る。といった事が起こっています」



「その方は現在はどうされているのでしょう?」


「実は、運転手が気をとられてしまい衝突事故を起こしてしまったのです。これにより患者はやはり死亡してしまいました」




洋介は食い入るように画面を見た。自分の知らない所でとんでもない事が起きている。しかも大阪だけでは無く、故郷の愛媛でも起きていると言うのだ。



アナウンサーは話を続けた。


「先ほど、怪我人が出たとの情報でしたが、どのような事が考えられますでしょうか」



「詳しい事は分かっていませんが、生き返ったとされる人々はしばしば凶暴になるとの報告もあります」



「凶暴ですか?」



「生き返ったショックなのか何か未だ分かっていませんが、そう言う事例がある事は確かです」



画面が再び上空からの映像に切り替わる。



ヘリコプターに乗っている方のアナウンサーが状況報告を始めた。


「どうやら機動隊が出動した模様です」


確かに画面には青黒い服にヘルメットを被った数人がホールに入って行く姿が確認できた。



暫くの間、動きは無かったが、いきなり画面は再びスタジオへと切り替わる。



「えー、ただいま入った情報です。日本政府は大阪府に対して非常事態宣言を発令しました」



その瞬間、テレビのスピーカーから奇妙な音楽とともにテロップが現れた。



言っているアナウンサー本人も理解出来ていないようだ。



「こ、これはどう言う事でしょうか?」



「情報が余りにも無さすぎますね」

と、眉をしかめる山梨記者。



アナウンサーの机に新しい原稿が置かれた。



「はい、間もなく政府の会見が始まるようです」




一方その頃、首相官邸の一室で、五十嵐いがらし総理と大臣達は会議をしていた。



「とうとうマスコミが騒ぎ始めたな」窓から東京の街を眺めながら五十嵐がため息をついた。



巣鴨が「報道規制を真っ先にJHKが破るなんて」と拳を握る。



五十嵐は振り返り「まあ、仕方が無いのかもしれないな。時間の問題だったんだ」と答えた。




巣鴨は「会見の準備は出来ているよ」と五十嵐の手に原稿を渡す。



五十嵐は「大阪はもはや諦めるしかないのか」と呟いた。



他の大臣達もため息をついている。部屋全体がどんよりとした空気だ。



外山は「この国はどうなってしまうのだ」とうつむいた。




大阪府に非常事態宣言が出されて10分後、首相官邸で総理の記者会見が始まった。


「国民のみなさん。既にご承知と思いますが、大阪府に非常事態宣言が出されております」



記者達のフラッシュが一斉に光った。



「非常に感染力の高いウイルスが発見されました。その正体不明のウイルスは人間に感染するやいなや生命を奪います。」


五十嵐は深呼吸をして「しかし、数分後、死んだ筈の彼らは目を覚まします」



どよめく会場。




「ウイルスの特性については、京都医学大学の烏丸教授から説明があります」


再びフラッシュが瞬き烏丸が登場した。



「それでは、こちらの映像をご覧ください」



突然部屋が暗くなりスクリーンに映像が映し出された。



何処かの病室のような場所に女性が寝ているようだ。



烏丸はマイクを握り「これは、死刑囚である女性に許可を頂いて実験を行った記録です」と答えた。



女性は白いシャツにやはり白い短パンをはいている。


そのか細い手足を白衣の烏丸が拘束をしている。


画面上の烏丸が注射器を手に取り話しを始めた。


「今から、検体03に検体02から採取した血液を注射します」



女性の太股に赤い液体が注入される。



するとデジタル表示のタイマーが画面左下に現れた。



最初の2分は何ともなかった。あまりに何も無いので、会場もどよめき声が聞こえ始めた。



洋介はその様子を見守る事しか出来なかった。



非常事態宣言が自分の住んでいる場所に出されている。しかし、洋介には何も出来ないのだ。



3分を過ぎた辺りでいきなり女性が体をバタバタさせ始めた。



会場からは悲鳴が上がった。女性の記者の中には目をつむって耳をふさぎしゃがみ込む者もいた。


死刑囚の女性はやがて、もがき始め、拘束を噛みちぎろうと暴れまわった。



目は赤く、口からは粘液ともいえる物がダラダラと出ている。



ベットは半分破壊され拘束も残るは左手首のみとなっていた。



烏丸が「もういい!」と叫ぶと、カメラに布のような物が被せられた。



そして銃声のような音が数発聞こえたと思うと、映像は終了した。




烏丸は「これが、ウイルスの効果です。ですが、皆さん落ち着いて行動してください。外を出歩かず家の中にいてください」と訴えた。



記者の一人が立ち上がりいきなり質問をぶつけた。「くしゃみ等でも感染するのですか?」



烏丸は冷静に「くしゃみ程では感染はありません、血液が直接体内に入り込むと感染の危険があります。ですので、家でじっとしておいてください。そうすれば直ちに健康に被害はありません」



今度は記者達が一斉に質問を浴びせた。



五十嵐は「それでは、今後の対応について官房長官から説明があります」と言い、マイクをスタンドに戻した。




洋介は会見の様子をテレビでずっと見ていた。


―どうなってるんだよ―

洋介は半ば放心状態であった。



その時、机に置いてある携帯が震えた。着信名を見ると、清二であった。


「父さん、久しぶり」



「予想より早かった」



「ねえ、どうしたの?」


「支度をしておくんだ、直ぐに迎えに行く」



「迎えに来るって?」



「そうだ、ニュースは見たんだろ?お前を一人には出来ない」



確かに危険が迫っているのは明白であった。しかし、洋介は実感を持てないでいた。



「家に居るんだぞ」



そう言うと清二は電話を切ってしまった。



「ねえ、父さん!」



電話からはプーップーッと音が流れるだけだった。



いよいよ皆さんの待ちに待った(?)アンデッドが登場します。


洋介は無事に逃げることが出来るのでしょうか?


後編ではアンデッドから逃れる洋介や自衛隊による攻撃等、見所満載の予定です。



また、小説の感想や意見もお待ちしております。

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