第五話・決断(新版)
会議は長い間に渡り続いた。
そして、話し合いの結果五つの事が決められた。
1・この問題は全てDJ機関の管理とする事。
2・状況により非常事態宣言を発令する事。
3・経済的損失を可能な限り抑える事。
4・準備が整うまでマスコミや財閥と協力し情報操作を行う事。
5・ウイルスの研究は烏丸教授を責任者として行う事。
五十嵐は最後に全員に向かい「これから忙しくなりますが日本を守る為に頑張りましょう」と言い席を立った。
翌日、マスコミ各社の代表、財閥の代表らが急遽首相官邸に集められた。「みなさんにこの事実をお伝えしたのは、この国の安全と秩序を守る為です。けっして勝手な行動を行わないでください」
五十嵐は集まった代表達に向かい断言した。
「株価は暴落するでしょう。為替も変動します。皆さんはこれを徹底的に阻止し日本の財産を最後まで守っていただきたい」と、五十嵐は代表達、一人一人の目を見て話をした。
「非常事態の発令はいつなんですか!」
「非常事態の発令は、こちらの準備が整い次第です。それまでマスコミの方は報道を控えてください。」
五十嵐総理の回答に対して「それじゃあ答えになって無いじゃないか!」「国民は知る権利がある!」と野次がとぶ。
「いいですか!未だウイルスが何処の国の誰の仕業かも解っていないんですよ!。そんな状況で非常事態を出せばパニックになる!」
あまりにも感情的になった総理に代表は驚く。
そんな五十嵐を見て、彼が日本を本当に救いたいと思っていると誰もが分かった。いつも国会中継で見せる政治家の姿では無い。だが、賛同する事に恐怖もあった。みな自分の会社が大事だからだ。
そんな空気の中、三津浜造船社長の三津浜が声をあげた。
「総理、あなたが仰る事は良くわかります。しかし、我々も協力するからには情報が無いと」
「情報は可能な限り流します。対策専門の機関も設けます。」
「解りました。うちも日本の一企業だ。日本を守る為に協力しましょう。」
そして三津浜社長は他の代表に向かって「皆さんも日本人でしょ?今まで良い思いをしてきたんだ。今度はうちらが日本の為に尽くす番ですよ」と訴えた。
他の代表達も渋々だが頷いた。
五十嵐は「有難う。本当にありがとうみなさん」と、お辞儀をした。
もちろん、緊急事態宣言が出されるまでは極秘扱いにされ、その存在は隠されたのだった。
会議の後、烏丸は再び五十嵐に呼び出された。
「君のおかげた、どうもありがとう」
「いえいえ、自分は何も」
「君は日本に必要な男だ」
「ただ、自分に声がかかっただけです」
「そうだ、一緒に夕飯でもどうかね」
「いや、ちょっと今日は」
「女かね?」
烏丸は、照れくさそうに頷いた。