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死者を操る者

短編


死者を操りし者


うんしょ、うんしよ。

全然重くない、中身は入ってる。

でも、空っぽみたいに重くない。

小さな女の子が袋のようなものを持って森の中をふわふわと飛んでいる。

掛け声は、姉達や他の人たちがものを運ぶときにやっているから真似をしているのだろうか。


目的地に着いたらしい。

袋を置いて、その脇で立ったまま水を飲んでいる。

姉からは座って飲みなさい、と言われるけど、いまは戦い中だからいーの。

脇の袋を見る、悪いやつ、魔族がここに隠れてる。



魔軍の中でも強力な魔術を使う上位魔族。

魔物達の王の座を狙うもの。

いくつもの砦、街、その国の都をも滅ぼした。倒されたもの達からアンデッドの大軍を作り出して。

とある城塞を攻める時、アンデッドの大軍は敗れた。

不思議な唄を歌う小さなものと、その周りにいる騎士達が、アンデッドたちを一夜にしてただの粉に変えたのだ。

なんとかのがれた上位魔族は、日の光を避けるために影袋の中に身を隠した。


と、外から唄が聞こえる。

あの小さなもの、の声だ。

身構えた身体の緊張を解く。ひとり、だ。周りの声は聞こえない。

上位魔族は安心した。

代々のもの達が編み上げた袋の中。破れるはずが…….。

上位魔族は願った。

さっきのやつらのところに持って行かれて監視され続けるのは困る。

上位魔族はまだ諦めていない、魔物を統べるものとなることを。

だから、祈った他のところへ持っていけ、と。

その願いは叶うようだ。



小さな女の子は、水を飲みがら決めた通りにすることにした。

姉たちに、ふほうとーきはダメと言われたから、深淵の森に袋を投げ込むのは、ダメかなとも思ったけど。

お腹すいたし、そろそろ帰らないとお姉ちゃ達に、また怒られる。


上位魔族は袋が浮いているのを感じた。

おまけにここは日がさしていない、よし!

上位魔族は袋から顔を出した。

小さなものと目が合う。

小さなものは、目を見開いて、おぉー!とでも言いたげな顔をしている。

こちらを見ていないような?

少し変な気もするが、上位魔族は決めていた。

騎士はいない,この小娘め、唄を歌い出す前に始末……。

そこまで考えたところで、不可視の矢に貫かれ上位魔族は滅びた。



小さなものが手を振ってから,立ち去ったのを見送っていたのは、深淵の森のエルフ達。

理を侵して森に入った上位魔族を排除したもの。

この森に入るものは、森がみとめないかぎりは、誰であろうが歓迎されない。

もっとも、滅ぼす必要のないものは、迷わさせるくらいですむが。


魔物、魔族は全て排除する。理に従って。

エルフは思う。

しかし、あの小さなもの。

理の外にある好奇心旺盛な小さな神のほのかな香りを帯びたものは、こちらに向かって手を振っていた。

見えるはずはないのだが。


小さなものはふわふわと上機嫌で帰ってきて、二人の姉に怒られた。

怒られている間は不満げな顔をしていたが、いまは笑顔で、いつも一緒にいる大好きな騎士に今日の冒険談を話している。





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