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転生王女の復讐劇  作者: たま


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プロローグ

いつも読んでいただきありがとうございます。

他にも作品がありますので読んでもらえたら嬉しいです。

転生王女の復讐劇


プロローグ


病室の窓から、私は毎日のように彼らを見つめていた。幼馴染の二人が寄り添いながら通学する姿は、まるで絵のように美しかった。いいな。羨ましい。私にはあんな風に歩くことさえできない。心臓に爆弾を抱え、ドナーを待つ日々。パパもママも毎日のように病室に来てくれたが、希望は日に日に薄れていった。


あの日、今までにない鋭い痛みが胸を貫いた。ベッドの上で天井を見つめながら、私は思った。次は健康な身体で生まれますように。のんびりとした日常を過ごせますように──。


意識が遠のく瞬間、それが最後の願いだったはずなのに。


目が覚めると、見知らぬ豪華な部屋にいた。絹のカーテン、大理石の床、そして自分自身の小さな手。五歳の王女、エリオット・フォン・ローゼンベルクとして転生していたのだ。


最初の五年間は、夢のような日々だった。健康な身体。走り回れる喜び。優しい両親と、何より私を溺愛する兄、第一王子カイトの存在。彼はこの世界で出会った最高の贈り物のように思えた。


剣術の訓練場で、私は初めて真実を知ることになる。


「エリオット、もう少しだ。しっかり腕を上げて」


カイトの優しい声が耳に響く。五歳の身体で木の剣を振るうのは難しいが、兄と過ごす時間は何より楽しかった。汗をかきながら必死に剣を構える私に、カイトは微笑みながら修正を加えてくれる。


その時、突然、眩暈がした。


「エリオット?」


カイトの声が遠のく。膝ががくんと折れ、地面が近づいてくる。倒れる瞬間、記憶の洪水が押し寄せた。


──これは、私が前世で読んだ小説の世界だ。


『剣と魔法のロザリオ』という、アニメ化もされた大ヒット作品。そしてカイト兄様は、その物語の攻略対象キャラクターの一人。優しく聡明で、国民からも慕われる理想の王子。


そして私は…モブキャラクターに過ぎない。物語の序盤で病弱な妹として登場し、すぐに亡くなる運命の王女。


「エリオット!医者を呼べ!」


カイトの慌てた声が聞こえるが、私の頭の中は別のことでいっぱいだった。物語のヒロイン、平民出身の魔法学校の生徒、リリア・フラワーズ。彼女は純粋で優しく、すべての攻略対象を魅了する存在として描かれていた。


前世の病室で、私は何度もそのアニメを見た。健康な主人公たちの冒険を、羨望の眼差しで。


でも、今思い出した。リリアがカイトと出会うきっかけを作るのが、実は私の死だったのだ。病弱な妹を亡くし、悲しみに暮れるカイトを、リリアが優しく支えるという展開。


「…ふざけないで」


ベッドの上で呟いた。看護婦たちが慌てて駆け寄る。


前世では健康を、平凡な日常を望んだ。でも手に入れたのは、たった五年で終わる命。それも、ただの物語の道具として。


「エリオット、大丈夫か?」


カイトが真っ青な顔で部屋に飛び込んできた。彼の目には本物の心配が溢れている。この優しさは演技ではない。少なくとも今は。


「兄様…」


私は小さな手を差し伸べた。カイトがそれを握り返す。


この温もりは本物だ。でも物語では、この手はやがてリリアの手を握る。私の死をきっかけに。


「何か欲しいものはあるか?何でも言ってみろ」


カイトの優しい声に、私は微笑んだ。


「大丈夫よ、兄様。ちょっと疲れただけ」


心の中では、決意が固まっていた。


健康な身体を手に入れたのに、また短い命で終わるなんて、絶対に嫌だ。物語の道具として死ぬなんて、まっぴらだ。


そして何より許せないのは、私の死を利用してカイト兄様に近づくリリア・フラワーズという存在そのもの。


看護婦たちが去り、カイトがそっと額に手を当ててくれた。


「熱はないようだな。今日はゆっくり休むんだぞ」


「はい、兄様」


ドアが閉まる音がした。部屋に一人残された私は、天井を見つめながら計画を練り始めた。


まずはこの病弱な体質を何とかしなければならない。物語では、私は魔法の才能がほとんどないと設定されていた。でも、この世界の知識があれば、変えられるかもしれない。


次に、リリアが宮廷に現れる前に、カイト兄様との絆をさらに強固なものにすること。彼が他の誰にも心を動かされないように。


そして最後に──もしリリアが現れたら。


窓の外には、美しい王宮の庭園が広がっていた。前世の病室の窓から見ていた世界とはまったく違う、広大で自由な世界。


「今回は違う」


小さな拳を握りしめた。


「健康な身体を手に入れたのだから、今度こそ自分の人生を生きる。誰の物語の道具にもならない」


特に、あの偽善的なヒロインの都合のいい小道具には。


数日後、私は正式に王立図書館への出入りを許可された。まだ五歳だが、王女という立場を利用した。司書たちは困惑しながらも、小さな王女の熱心な勉強ぶりに感心していた。


実際には、この世界の魔法体系と医学書を集中的に研究していた。前世の医学知識とこの世界の魔法を組み合わせれば、この体質を改善できるかもしれない。


「エリオット、また図書館か?」


ある日、カイトが図書館で私を見つけた。


「はい、兄様。面白い本を見つけたんです」


私は笑顔で応えた。カイトは私の前にしゃがみ込み、目を細めた。


「最近、随分と元気になったな。前より顔色もいい」


「兄様と剣の練習がしたいから、強くならなくちゃって思って」


それは嘘ではない。本当に強くなりたかった。生き延びたかった。


カイトの目が優しく輝いた。


「そうか。ならば、明日からまた練習を再開しよう。ただし、無理はするなよ?」


「はい!」


その夜、私は部屋で小さな計画表を作成した。まだ字はあまり上手く書けないが、前世の記憶を頼りに、物語の主要なイベントと登場人物を書き出していった。


リリアが魔法学校に入学するのは七年後。彼女がカイトと出会うのは、その三年後、つまり十年後だ。私が「病死」する設定年齢は十五歳。ならば、あと十年の猶予がある。


「十年あれば、十分だ」


窓に映る自分の姿を見つめた。ブロンドの髪、青い瞳、まだ幼さの残る顔。


この身体で、この世界で、私は二度目の人生を戦い抜く。


物語のヒロインが嫌いだから、壊してあげる。


そう決意した瞬間、胸に小さな痛みが走った。前世の心臓の痛みを思い出させる、あの感覚。


でも今回は違う。今回は戦える。健康な身体と、未来を知る記憶がある。


月明かりが部屋を照らす中、私は小さく微笑んだ。


「見ていてね、前世の私。今度こそ、のんびりとした日常を勝ち取ってみせるから」


そして、誰にも邪魔させない。たとえそれが、この世界の運命のヒロインであっても。

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