第68話 エピローグ
ラクシャリーさんに呼び出されて、最初に転移した魔法使いの集会所(みたいな雰囲気の会議室)に行った。
そこには各部署の局長が集まっていたけど、マーナガル氏とビーネさんがいなかった。
「もう、翻訳魔法はいらないわよね?」
「大丈夫だと思うよ」
俺が親指を立てると、ラクシャリーさんが笑う。
「では、各局長および『全局長官補佐兼遺失物管理局局長補佐兼災害対策局特別部隊隊長』に、この度局内で起こった事件の結果を説明するわ」
ラクシャリーさんが俺の長ったらしい肩書きを舌をかまずにスラスラ述べた。
「まず、『クローリー・マクラーレン元首相が愛娘の犯罪を隠蔽するために画策したため、局全員で元首相の横暴を暴露すべく対処に当たった』ことを、そのまま発表しました。ヒムロ君は、『古代遺跡物のスペシャリストでかつ首相の娘の犯罪に巻き込まれた被害者である』と説明したわ。……誤魔化しきれるかわからないけれど、それが局からの正式な発表よ」
「そっか」
軽くうなずく。
俺としちゃ、これ以上俺とラクシャリーさんに迷惑をかけなきゃどうでもいいよ。
「あと、元をつけているからわかると思うけど、クローリー・マクラーレン元首相は解任されました。……次期首相は……。マーナガルが有力だったのだけど、ドークリーの上司だったため責任を取って局を退任したの。それに、彼はクローリー・マクラーレン元首相の親友だったのもあって候補から外れたわ。他の対立候補はクローリー・マクラーレン元首相に潰されていて、協議の結果、ビーネが首相になることに決まりました」
へぇ。
俺としてはありがたいけど。ビーネさんなら気心が知れていて、少なくとも今回みたいな騒ぎにはならなそうだし。
ただ……ちょっと思ったのは。
「ラクシャリーさんがなればよかったのに」
俺としては一番ふさわしい。
しっかりしてるし、人をまとめられる力がある。
ところが、ラクシャリーさんが首を横に振った。
「無理よ。若すぎます。首相は、ある程度の年齢がないと他の国に舐められるから」
……いや、ナメる奴は誰であろうがナメると思うよ?
特にエルフ。
ラクシャリーさんは美人だから、容姿第一主義の亜人に勝てそうじゃないかな?
そう思ったけど、俺に口を出す権利はない。俺、この国の人間じゃないからね。
その後の局の人事についても話された。
ラクシャリーは全局長官据え置きになったそうだ。
ドークリーの件は局の不始末になるけど、すでにマーナガル氏が責任をとって辞職しているため、これ以上退任があると仕事が回らなくなるという切実かつ深刻な問題で据え置きになったんだってよ。
あと、ビーネさんの代わりの局長はまだ選抜していて決まってないってことだった。
ラクシャリーさんがひととおり教えてくれた後、俺に笑顔で言った。
「ビーネが首相ともなれば、よりいっそう古代遺跡物の発掘に力を入れるでしょう。ヒムロ君、これからの活躍も期待していますよ?」
「ははっ! 違いないな。んじゃ、これからもよろしく」
俺はラクシャリーさんに手を差し出す。
ラクシャリーさんは照れながらもその手を取り、握手を返してくれた。
*
局の前でビーネさんが演説をしている。
後ろにはラクシャリーさんや局長も並んで立っていた。
「――これからは、局とも連携し、ますますの発展を――」
俺は遠目にそれを見た後、ハリーを発車させた。
『良いのか? お主を紹介したいと言っておったのに』
「いや困るよ。顔が知れ渡るじゃん。せっかく全国放映されなかったってのにさ」
元首相をしばき倒した事件。アレ、俺は映ってなかったんだよね。
乗り込む際、ゼロエロに『魔王らしくマントをつけるのじゃ!』って言われて着たんだけど、あのマント、デフォルトで撮影機器に映らない作用をするらしい。
というわけで、俺のオイタは顔出しなしで済んだのだった。
ま、知ってる奴が見たらわかるだろうけどな。
元首相と局が対立して真反対のことを発表したと思ったら、元首相が局の壁が破壊され、元首相が罪を告白した、って映像だったらしいよ。
鳥が飛んできた。――あ、違う、ユキだ。
「お、ユキ。おつかれ! どうだった?」
ユキはずっとあちこちを偵察していたらしく、なかなか帰ってこなかった。
ユキが変化して猫に変わり、俺の膝で丸くなって寝る。
『問題なかったんじゃろ』
「そうみたいだな」
俺が片手でユキを撫でていると、抗議のミャーミャーが……。
「えっ。お前らも来るの?」
猫三匹が次々と膝に乗り、団子になって寝る。
「ヤバい。幸せすぎて事故りそう」
『お主、やめろよ!? シャレにならんぞ!? 前を見るのじゃ!』
ゼロエロがわめく。
「わ、わかった。……んじゃ、海に行こうぜ! 猫も魚が食える。俺も魚が食べたい。ゼロエロも海が見たい、と」
『そうじゃー! 海に行くのじゃ! 楽しみなのじゃー!』
とたんに上機嫌になるゼロエロ。
あ、他の古代遺跡生物もだ。タロウとノエルが楽しげに揺れている。
「じゃ、ハリー、飛ばすぞ!」
ピッ!
と、ハリーも張り切って返事をしてきた。
書籍化作業中でして、しばらく続きを書けそうもないためひとまず完結にしておきます。
コンテストで受賞するとか書籍化することになったら優先して書いていきたいと思いますので、何卒よろしくお願いします……!




