第66話 ゼロエロがまとめてみた
俺はタロウからノエルを出すと、
「ノエル、釘バットモードだ!」
と、叫んだ。
とたんにノエルから釘が生える。
後ろからまた悲鳴が上がった。
首相も釘バットモードのノエルを見て真っ青になっている。
俺はクルクルッとノエルを回すと肩をトントンと叩き、そして大きく振りかぶった。
「じゃあな。死後の世界で娘を待ってろよ。すぐに再会するだろ!」
首相は動揺し、大きく後ろにたたらを踏みながら俺を手で制した。
「待ってくれ! 私が悪かった! 認める!」
「別に今さらいいんだよ。終わりだ」
俺がそう言って迫ると、首相は手で制しながら後ろに下がる。
「私が殺されたら、娘は天涯孤独になる! かわいそうだろう!?」
は? と、俺は首をかしげた。
「いや全然。全くかわいそうじゃねーよ。お前の娘のせいで俺はとんでもねー目に遭って、人殺しまですることになったんだ。――それに言っただろ、向こうで野垂れ死にするか、コッチで自殺するか。テメェのせいで父親が位置交換した奴に殺されたんだからな。皆にそう非難されりゃすぐお前のあとを追っかけることになる。むしろハッピーエンドだ、よかったな」
それを聞いた首相は、這いつくばった。
おっと、この世界にも土下座文化があるのか?
「だから待ってくれ! 認める! ――ここに告白する! 私クローリー・マクラーレンは、娘が禁呪である位置交換魔法を使用し呼び出された異界人に娘の罪を着せるため、犯罪を捏造して彼に着せたのだ! 深く謝罪する!」
俺はせせら笑った。
「いらねーよ。黙って殺されろ」
それを聞いた首相が、ラクシャリーさんに縋るような目を向ける。
「ら、ラクシャリー! 私が悪かったと認めるから、彼を止めてくれ!」
マジかよ。
コイツ、言うに事欠いてラクシャリーさんに助けを求めたぞ?
お前、親子してさんざん迷惑をかけた上に催眠魔法で操ろうとしていて、よく頼めるな?
ラクシャリーさんが、額に青筋を立てながらニッコリ笑った。
「首相? ――先ほど私に『局の不始末は君の責任だ。それでも告発するなら、内紛が起きて国民が混乱するぞ。それでもいいのか?』とかおっしゃいませんでしたか? 私も、首相派と真っ二つに分かれての内紛は困りますので、首相、潔くヒムロ君に殺されてください。そうすれば内紛は起きませんから」
首相は必死でラクシャリーさんに言い募る。
「それも謝る! 脅しだ、そう言えば国民に負担をかけたくない君は黙って従うと思ったからだ! それに、告発したらしたで、国民をないがしろにし、内紛を促した罪が問えるからだ! 謝罪するので許してくれ! 私は彼に殺されるわけにはいかない! 娘のためなんだ、頼む!」
俺、プチッとキレた。
「勝手な理屈つけてんじゃねーよ! 全部テメェの保身のためだろうが!」
思いっきり釘バットをブンブン振り回すと、首相が必死で逃げ惑う。
俺が首相を蹴飛ばしつつしばらく追い回していると、ラクシャリーさんがいつの間にか局員を集めていた。
「……ヒムロ君」
ラクシャリーさんが怖ず怖ずと声をかけてきたので、俺はそのタイミングで首相の頭を蹴飛ばして気絶させた。
ラクシャリーさんが息を呑んだので、手をヒラヒラと振った。
「死んでねーよ。気絶させただけだ。……コイツが国のトップだから法で裁けない、あくまでも俺に冤罪を着せるっていうんなら、俺はコイツへの報復として、入れ替え魔法じゃなく転移魔法で元の世界に帰りコイツの娘に仕返しするけど。どうする?」
ラクシャリーさんが顔を引き締めて俺を見て言う。
「国のトップだからこそ、より国民の代表としてちゃんと罪を暴かないとダメでしょう? ――まさか、催眠魔法で周囲を従えていたなんて思ってもみなかったわ……。その事だけでも重罪よ。そして……コレに、罪を認めさせてくれてありがとう。自ら望んで放映されているから、取り繕えないわ。……最後に、ごめんなさい。巻き込まれて異世界から飛ばされてきたあなたに、大変な迷惑をかけてしまって、国を代表して謝罪します」
頭を下げようとしたラクシャリーさんを止めた。
「前も言ったけど、やってない奴が謝るのは嫌いなんだ。やった奴が謝るべきだって俺は思う。だから、ラクシャリーさんからの謝罪はいらないよ」
ラクシャリーさんが気弱に微笑んだ。
「……そうね、そう言ってたわね……」
だけどすぐ気を取り直したように顔を引き締めて、
「なら、御礼を言うわ。ありがとう。国を巻き込んだ大変な犯罪が明るみに出たわ。国民のためにも、暴けて良かった」
そう言うと、局員にキビキビと指示を出し始めた。
俺は、気絶した首相が運ばれていくのを眺めつつ、ゼロエロに尋ねる。
「さて。どうすっかね?」
経緯はどうあれ、大暴れしたのが全国放映されたわけだけど。
『ならば我がまとめよう』
「は?」
どういうこと?
俺がキョトンとしていると、ゼロエロがカメラらしき放映装置に飛んでいく。
『あー……オッホン。我が名は魔剣ゼロエロじゃ! 我が遣い手である主は魔王としか思えん強さじゃから、くれぐれも変な気を起こさぬようにな! そもそも、古代遺跡物は遣い手を選ぶ。あそこにある演説台を魔法なしで軽々持てるくらいじゃなければ、話にならんぞ! 以上!』
そう締めくくった。




