第65話 プランBをやってみた
ユキが録画再生できる生物だった件について。
しかも、なんも命令してないのに勝手にやってます。
――ラクシャリーさんに送った録音機器を首相が取り上げ、それに怒った鳥が仲間を呼んで妨害し、そして洗脳が解けたラクシャリーさんが怒りながら俺の録音を再生したところ。
――その後軟禁されたけど催眠魔法を駆使して抜け出し、俺の到着日に局の犯罪を暴露するから放映するようにと指示を出して、今日乗り込んできて止める局員を魔法で攻撃しつつ一室を占拠し演説を始めたところ。
……という映像が流れた。
うーわ、思ったより数倍酷いな。
全員の非難の視線が首相に集まったが、落ち着いたもんだよな。
「こんなもの、捏造だ。古代遺跡物を使えばいくらでもできるだろう。……ソイツは、古代遺跡物の使い方に長けているからな」
って首相がうそぶいたよ。
こりゃ、何を言ってもダメだな。
俺はサクッと諦め、プランを変更した。
「ゼロエロ、プランBだ」
『なんじゃソレは?』
ゼロエロがキョトンとした声を出す。
「ぶっ飛ばして、脅す」
そう言うと、俺は首相に向かって歩く。
周囲がザザッと道を開けた。
首相は逃げ腰だけど、逃げずに俺を睨んでいる。
演説台の前に立つと、踵落としで演説台を真っ二つにしてやった。
後ろから悲鳴が上がる。
「なぁ? 俺は魔法を使えない。なのに、どうやってお前の娘を攫ったんだよ? なぁ? ……答えろよ!!」
俺が怒鳴ると、首相は汗をびっしょりかきながらも不敵に笑った。
「……私を殺す気か? 皆の見ている前で? そうしたら貴様は本当に犯罪者だ」
それを聞いた俺も、ニヤリと笑う。
「確かに、本当に犯罪者になるんだろうな。――でも、テメェがいる方が俺にとっちゃ害にしかならないんだよ。だから、決めた。入れ替え魔法を使わず俺だけ元いた世界に帰り、テメェにやられた憂さ晴らしもこめて、テメェの娘をどっか遠くへ飛ばす。今のところは俺の家で保護しているらしいが、知ったことかよ! 魔剣ゼロエロに頼んで、俺の世界の未開の土地へ転移させるさ!」
首相が俺を睨みつけた。
何か反論しようとするが、俺はそれを遮るように被せて言う。
「入れ替え魔法を使った場合はテメェの娘はここに帰ってくるだろうが――お前が死んだら、テメェの娘は重罪犯で捕まる。この世界で、無関係な人間を禁呪でここに送り込んだ罪は、そうとう重いらしいぜ? かばってくれる奴は墓の中。他の連中は、迷惑ばっかりかけるテメェの娘にうんざりしてたから、仇とばかりにいっちばん重い罪で裁いてくれるだろうさ! 別世界で平和に暮らしてた俺をここまで追いつめた責任と、局を混乱に陥れた責任を取らせてな! どっちみち、テメェの娘はテメェがいなけりゃ報復で悲惨な目に遭う運命なんだよ!」
最後まで俺の発言を聞いた首相が俺を睨むのをやめ、愕然とした顔で真っ青になった。
死ねない理由ができたからだろう。
――自分が死んだら、娘が俺の言う通りの未来を迎える。それは確定だと理解したから。
俺が冤罪なのは、局の全員が知っている。
特にラクシャリーさんは、首相にも娘にも迷惑をかけられているからな。もしも入れ替え魔法を使ってドークリーが戻ってきたなら、必ず重罪犯として処理するだろう。単に俺が帰るだけなら俺はゼロエロに頼んでドークリー氏をどこか遠い国へ送るわ。
何、大丈夫。魔法があるから生きていけるだろ。
俺のクソ家族を騙して一緒に暮らせる腕前があるんだから、他の連中とだって暮らせるさ!




