第64話 乗り込んでみた
局の前までやってきた。
特に時間を指定してなかったけど、大丈夫だったかな。
「ま、いっか。ゼロエロの言うように、俺が気遣うことはないもんな」
『当たり前じゃ。お主のほうが強い』
偉いのはアッチだと思うけど……でも俺を冤罪に陥れる国のトップだもんなー。
「さて、奴はどこにいるのか……って、ブランドー氏がいる」
ブランドー氏が緊張した面持ちで立っていた。
「おーい」
窓から乗り出して手を振ると、ブランドー氏がホッとした顔で手を振り返した。
「今日来るというメッセージを聞いたので、待機していた。……ちょっと大変なことになってしまってな……。先ほど首相がヒムロ氏に自分の娘を攫われ人質にとられていると演説を始めた。ラクシャリー長官が反対声明を出しているが、首相はラクシャリー長官まで糾弾を始めている。しかも局が隠蔽に走っているとね。……とんだ詭弁だ」
ブランドー氏が吐き捨てた。
「了解。……乗ってく?」
俺が尋ねると、ブランドー氏は苦笑して首を横に振る。
「私は君を止められない。だが、君がこれから為すことに対して味方でいられるかもわからない。……臆病者は、ここで震えて結果を待つだけだ」
そんな、震えて待つようなことはやらないつもりだけど……。
ま、いっか。そもそも俺と首相との対決だ。
「オッケー。じゃ、ちょっと行ってくるよ」
「絶対に負けないとは思うが、気をつけてくれ。……彼は、催眠魔法が得意らしい。ラクシャリーがかかって大変だったようだ」
え。マジで?
「いや、もう解けている。ノーフォグの鳴き声で魔法が解けるらしい」
「へぇ、いいこと聞いた。……じゃ、結果によってはこれでお別れかもしれないから、元気でな」
「あぁ。ヒムロ氏も元気で。……君には驚かされたが、でも、君がここに現れてくれてよかったと私は思っている」
手を伸ばすとブランドー氏が握り返した。
そのままハリーを走らせる。
「ゼロエロ、催眠魔法って対処できるか?」
ゼロエロが鼻で笑う。
『そんなもの、お主には効かん。他の連中がかかっているのなら、我が解除してやるのじゃ』
なんと頼もしい。
「んじゃ、よろしくなー」
そう声をかけると、ハリーを駐めて下りた。
「この辺だっけ?」
『そうじゃ』
「んじゃ、やるか」
俺はスリングライフルを構えた。
「これが、この武器の正しい使い方だぜ!」
壁に向かってぶっ放した。
ドガァアアン!
ものすごい爆発音で壁が崩壊したな。
そして、ものすごい悲鳴があちこちで上がっている。
俺はスリングライフルをタロウにしまうと、瓦礫をまたいで乗り込んだ。
首相は演説台に立っていてラクシャリーさんとビーネさんが向かい側にいるが、全員、壁を破壊して乗り込んできた俺に注目している。
『【解除せよ】』
ゼロエロが唱えると、ブワッとキラキラした光が部屋中に舞った。
「……えっ?」
「……あれっ?」
キョロキョロと周囲を見渡す奴が多数出た。
『ふむ。かなりの人数が催眠魔法にかかっておったな』
「マジかよ。怖ッ」
ほぼ洗脳じゃんか。
俺は、口を開けて呆けている首相を睨んだ。
「首を洗って待っていたか?」
「それはコチラのセリフだ犯罪者。私の娘を返せ!」
なんか、俺が誘拐したみたいなことを言ってるんですけど。
「俺は魔法が使えないッつってんだろ。お前こそ、催眠魔法で周りを洗脳していて何を言ってんだよ。――この国って、トップが周囲を自分の意のままに操り、無実の奴に罪を着せて、しかも自分たちは手を汚したくないからって遠くへ追いやり餓死させて、自分たちがやった結果を見ないようにしてるってのか? 大変素晴らしい夢の国だよな!」
俺が吐き捨てると、ラクシャリーさんとビーネさんの顔がつらそうに歪んだ。
だが、首相にはまるで効いてないね。
わかってやってるがゆえに、今さら指摘されようが痛痒を感じない、ってことか。
「私の娘がいなくなり、お前が私を襲いにここにやってきた。これは事実だ。……全世界に放映している。どうだ? 言い逃れできまい!」
――すると、白い鳥が現れる。
いや、ユキだけど。
ユキが、首相の後ろにある壁を見ると……え、マジ?
なんか映像が映し出されたんですけど!




