第60話 ラクシャリーさんの話を聞いてみた
俺があれこれ悩んでいたら、「プェーッ」という声がして、いつもの鳥がやってきた。
「おぉ、お前か……って、籠がない?」
録音機器をむき出しで持ってきている。
録音機器を受け取り腕に止まらせ、ナッツを与えて撫でる。
「籠はどうした?」
すると、「プェッ! プェッ!」と、ちょっと怒ったような鳴き声を出す。
「……もしかして、盗られたか?」
「プェーッ!」
どうやら首相側に強奪され差し押さえられているらしい。
録音機器をむき出しで渡してくるという荒技を使ってきたのはラクシャリーさんだろうな。
『ノーフォグは賢く、懐いた相手には籠はいらんのじゃ。コヤツがお主専用のノーフォグで、籠なしでも持っていけるとは知らないのじゃろう』
うん、俺もそれは知らなかったよ。
再生すると、ちょっと抑えめに話すラクシャリーさんの声が聞こえてきた。
『……本当にごめんなさい。油断していたわ……。反省したと思ったのよ。マーナガルは首相の友人で、あの子の上司なの。その彼までがあなたの味方をしたんだもの。事実を受け止めたって思い込んでしまったわ。……そんなことあるはずかないのにね……』
疲れと後悔のにじんだ謝罪。
ラクシャリーさんが悪いわけじゃないのに。
『あの事件で、局の対応も割れているの。事実を公表しようとする私とビーネとブランドー、話し合いをしようとするマーナガル、強硬にあなたを処罰しようとする首相。特に首相は私たちまで弾圧して事を進めようとしていて……。ただ、首相の味方はかなり少ないわ! 基本は皆事実を公表するという考えよ。……だから、待ってほしいの。絶対にどうにかするから、この国を嫌いにならないで。あの首相は、娘のためなら手段を選ばないのよ。そんな男が首相にはふさわしくないと、私たちが証明するから』
ラクシャリーさんの声が必死だな。
再生を切り、考える。
待つのはいいよ?
――でもさ、ラクシャリーさんは戦って勝てるのか?
狡猾さと悪辣さは段違いで首相のほうが上だろ。
この国に戻ってきたら、あっという間に裁判官まで仲間に引き入れて俺を犯罪者に仕立て上げたんだぜ? 冤罪だってわかっているにもかかわらずだ。普通じゃない。
俺のいた世界は……あったかもなー。知らないだけで。
その辺は変わらないか。
「どうすっかな……」
逃げ回るのは性に合わない。
で、解決方法は二パターンだ。
いち、ゼロエロが座標を調べ上げてくれるまでおとなしく潜伏しておいて、そのまま元の世界に帰還する。
後腐れがないし、ラクシャリーさんたちにも迷惑がかからない。
首相の娘はゼロエロと魔法合戦させた後、どっかに飛ばしてもらう。
ほとんど奴のせいだ。せいぜい苦しめ。
に、首相を殺す。
アイツは生きているかぎり、俺を狙うだろう。
奴は狡猾で悪辣。善性の塊のラクシャリーさんが敵うわけがない。
しかも、司法を操れるんだから、俺には勝ち目がない。
だから殺す。じゃないと俺が殺される。
辺境の地に魔法なしで飛ばされるってのは、つまりそういうことなんだろう。
死刑は誰かが殺さないといけない。だけど、そんなことを喜んでやる奴なんていない。
だから、丸裸で何もない場所へ飛ばすという、責任逃れの死刑方法をとっているんだろう。
『何をどうする気じゃ?』
ゼロエロが尋ねてきた。
「んー……。このままだとラクシャリーさんも、あの首相に陥れられるだろうなってさ。法治国家で司法を味方につけているってのは、自分に不利な連中を好きに処刑できるのと一緒だろ? つまり、首相は独裁政治を行っているんだよな……」
『……お主、たまに賢いの?』
とか言われたよ。失礼な!
「そんな危ない国なら、早いとこゼロエロに座標を割り出してもらって日本に帰るよ。それが一つ目。……ただ、全員がそんな連中じゃない。むしろいい奴のほうが多い。ラクシャリーさん、ビーネさん、ブランドー氏……。町の奴も気のいい連中だった。俺が去った後、俺が親しくした連中は首相に嵌められて処刑されるかもしれない。だからこそ、俺は元の世界に帰るつもりなんだし。……でもさ、そんな奴を野放しにして帰っていいのか? どうせ帰るなら、ソイツを殺してラクシャリーさんたちに住みやすい環境にしてから帰るのもアリなのかな、ってさ」
俺の案を聞いたゼロエロが黙ってしまった。




