第56話 帰ったら話し合う決意を固めた
食べ終わった猫たちは顔洗い、のち、その辺でくつろぎだした。
俺は魚を食べた後、ハリーが作ってくれた追加の料理を食べ、現在は食後のコーヒーを飲みつつ星空を眺めている。
「暗いかと思ったら、星空で明るいという」
高校生の頃友達と湖畔でキャンプしたことがあったけど、こんなに明るくなかったぞ。
でもこんな、『星座を探すのは無理でしょ』ってほどに星がたくさん輝いている夜空でもなかったか。
「……環境はいいんだよなぁ。魔法が使える古代遺跡生物たちがいて、資金も潤沢で。醤油と味噌と米がないのが難点だけど、世界中を巡ったら見つかるかもしれないし。ただ、帰れないのは困るというか」
星の輝く湖面を見ながらつぶやくと、ゼロエロが答えた。
『我も座標を探っておるから、心配無用なのじゃ。そのうち見つかるのじゃ』
自信満々に言い放つので、ゼロエロを見た。
「『そのうち』が、何十年も後だと困るんだよ」
具体的にはじいさんが生きているうちに帰って、心配しないように伝えたいんだ。
ゼロエロは軽く返してきた。
『そんなにはかからんじゃろ。……あの娘が鏡を使っていたとき、我がコッソリと補足魔法を飛ばしておいた。我の魔法なら、あの娘がつなげた魔法の道筋を辿れる。補足できたならこちらのものじゃ! お主とアレを入れ替えてやる。我らも含めてな!』
「さすがだな!」
お前のこと、初めてすごいと思ったぞ!
『フフン。我、すごかろ?』
「マジですごいよ! 心から感謝する!」
――帰ったらじいさんと相談し、その後両親と決着をつける。
自称ミュージシャンの父は、もちろんメジャーデビューなどしていない。バンドのギターボーカルとか言っているけど、夢と女の尻を追いかけているだけ。
たまにライブに出るとか言っているが、どっかの女と浮気しているか女のいる店で飲んだくれているかだ。
母は母で、自称写真家だが仕事をしているワケではない。
男の尻を追っかけるのが好きなだけだ。
カメラマンをしている、無料で撮影してあげる、というのを話のきっかけとして好みの自称ミュージシャンをひっかけている。
父と母が結婚したのが不思議でならない。
俺が小さいころにはすでに互いの愛情は冷めていて、二人とも浮気をしていた。
父が母と別れないのは、ま、理由はわかる。
母が資産家の娘だから。
まさか、じいさんが両親に小遣いをやっているとは思えないのだが、それくらいの金はどうにか稼いでいるか、まさかのじいさんに小遣いをもらっているかして遊んで暮らしている。
母がなぜ父を捨てないのかはわからない。
若くて見目の良いろくでなしミュージシャンが好きな母が、自堕落な生活で不健康に太った父を許せるのが不思議だ。
ま、母も自堕落な生活で不健康に太ってるけどな。
俺はそんな両親を非常に嫌っている。
幼少期からやられたいろいろなことがムカついているのもあるけど。
じいさんは俺によくしてくれて、俺が両親からこき使われているのを知って俺をひきとって一緒に暮らしてくれたけど、じいさんはじいさんで娘に甘いからな……。
猛反対していたろくでなしとの結婚も最終的に許し、結婚資金を出し、「いつか売り出す」という言葉を信じて離れを建てた。
そのうち、「母屋がいい」としつこく言っている母に負けて母屋を明け渡すだろう。
じいさんは俺に全てを遺すと言っていたけど……どうせ娘に遺すだろう。
だから、俺はじいさんと最後に話して、ゼロエロに頼んで再度この世界に戻してもらって暮らそうと思ってる。
醤油と味噌と米、あと思いつくかぎりの調味料や食材を買い込み、局で働いて古代遺跡物を集めたり魔獣を倒したりしながら世界中を旅して回り、いい土地があったらそこに腰を落ち着けるつもりだ。
ゼロエロ、ノエル、タロウ、ハリー、ユキ、猫三匹、あと借りている古代遺跡物は借りパクする予定。
コイツらが嫌がるから、返す破目になるとは思わないけどな。
ただ、今の局は俺に好意的だけど、ずっと好意的とは限らない。
だから、その辺も考えないといけないなって思ってる。
でも、そんなにひどいことにはならないだろうと信じていた。




