第53話 楽器に演奏させてみた
次の場所は町から離れてはいたが、ハリーがあった場所のように観光地であり管理されているっぽい。
ハリーで乗りつけたらたくさんの観光客がいて、かなり注目されたよ。
詰め所にいた職員まで飛んできた。
「「本物ですね!?」」
また言われたし。
「本物ホンモノ。ビーネさんから言われてやってきたんだけど」
「聞いております。案内しますのでどうぞ」
ハリーを立ち入り禁止区画内に駐車させてもらい、わぁわぁ騒ぐ観光客から遠ざけて建物の中に入る。
「この扉です」
と、案内されたのは、ガチで重厚な扉。
「恐らく自動で開閉したはずなのですが、そのしかけが壊れていまして……」
と職員Aさんが説明した。
「……ゼロエロ。これ、鍵とかかかってないのか?」
『ロックは解除されているようじゃ。お主の怪力で開けろ』
とか言われたし。
「怪力ってほどじゃあないんだけどな……。よっと」
観音開きの扉を押したり引いたりしてみた。
ビクともしない。
「……んー、固いな。というか……」
俺は左右に押し開いた。
ガラガラガラ、と、簡単に開いた。
「確かに自動扉だわ。引き戸なワケね」
俺の世界だとガラス製だけどね。
職員Aさんから拍手されたよ。
「さすがビーネさん推薦の方! 絶対に開けられるからって言われて半信半疑だったんですけど、本当に開けてしまいましたね!」
感激されたように言われたけど、半信半疑だったんでしょ?
「たまたまって感じかな。これに関しては腕力の問題じゃなくて開け方の問題だったから。数人がかりでやれば、アンタたちでも開けられたよ」
そう固くはなかった。
扉の奥は……うーむ。
「楽器に見える」
『奇遇じゃな。我もじゃ』
楽器がたくさんあった。
恐らく楽器屋だったんじゃないかと思われ。
「古代遺跡物だろうけど、単なる楽器みたいだな」
『自動演奏じゃな。サロンとして使っていたのかもしれん』
自動演奏?
「なるほど! 魔法で演奏するのではなく、楽器自体が演奏するんですね!」
と、職員Aさんが説明してくれた。
この世界は魔法で演奏するのかよ、なるほどな。
職員Bさんは行ったり来たりと走り回り、最終的に俺たちに報告してきた。
「ビーネ局長から連絡がきました。こちらに向かうそうです」
あの、粉の舞うヤツでかなと思ったら、当たったらしい。
ビーネさんがやってきた。
「演奏する魔道具があったというのは本当か!?」
「たぶん? 俺はわかんないけど、ゼロエロがそう言ってる」
ビーネさんと会話をしていると、続々と検証班が現れた。
「一班は部屋を、二班は楽器を調査してくれ。まだ触らんようにな。罠が仕掛けられているかもしれん」
罠!?
ビーネさんの言葉に驚いたが、よく考えればかつてここは誰かの持ち物だったんだろうし、セキュリティをかけているのが当たり前だよな。
「ゼロエロはわかるか?」
『ふーむ。小さな家のセキュリティじゃろ? しかも年数がいっているのならとっくに解除されてるじゃろ。簡単に開いたしな』
らしいよ。
念のためと、慎重に調べ……判明した。
「起動させると自動で演奏する。手動でも演奏できる。……というようですな」
ビーネさんがなぜか俺に報告してきたよ。
いや、ゼロエロか。
『で、お主らでは起動できないということか』
「……はい……」
ビーネさんがうなだれた。
俺はビーネさんをなだめるように言う。
「わかったわかった。……オイ、ゼロエロ。まさかまた持ち歩く羽目にならないだろうな?」
後半を、声をひそめて尋ねた。
『大丈夫じゃ。スイッチが固くてあげられんのじゃろ。それくらいやってやれ』
スイッチ。
それは、付け根部分が二叉に分かれている上下に動かすようになっている。
現在は下に降りているな。
「上げていいのか?」
「「「お願いします!」」」
その場にいる全員が声を揃えた。
「んじゃ、上げるよ」
取っ手を持って、上に切り替える。
さすがに長い間動かしてなかったから、かなり固かった。
「油を差したほうがいいかもな。コレ、下手するともげるぞ」
「油ですね! 差しておきます!」
近くにいた職員Cが元気よく返事した。
――と。
楽器のある辺りが明るく輝き、全員が注目する。
楽器が位置に着き、そして――演奏が始まった。
それは聞いたことのない曲だけれど、どこか懐かしいような曲だった。
演奏が終わると、自然と拍手した。
「ビーネさんは知ってる曲?」
「はい。有名な曲です。『貴方の使う些細な魔法ですら私には奇跡のよう』というタイトルでして」
長い。だが、詩的だ。
「……この曲を作った奴は、ロマンチストなんだな」
というか、ミュージシャンってのは誰もがロマンチストなのかもしれないな。
俺の友達のミュージシャンはわりとクズが多かったけど。
俺(関係者)を餌に金ヅル(女)を呼び込んでたもんな……。
しかも、キッチリ俺からも金を取ってたし。いいけどさ。




