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異世界転移者、魔剣を携え旅をする~魔法が使えないけど、愉快な古代遺跡(生)物たちが助けてくれるので問題ナシです  作者: サエトミユウ


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第50話 家族を思い返してみた

「あっ! チクショ、叫ぼうと思ったのに……」

 舌打ちしたら、マーナガル氏が頭を下げた。

「……部下が申し訳ない」

「いや、もう部下じゃないんだろ? 解雇になったって聞いた」

 ラクシャリーさんが嬉々として手続きしたっつってたもん。


 局に対しての権限はラクシャリーさんが持っている。

 さすがに『ドジだから』という理由では解雇できないが、調査中の魔法を使い異世界の一般人を巻き込んでの事故を起こしたは、じゅうぶんに解雇の理由になる。重罪らしいもんな。


 マーナガル氏がため息をついた。

「……そうだな。では、元部下が申し訳ない。私を頼ってきたのだとばかり思っていたのだが、近況を聞きたかっただけらしい。向こうでよくされているようだった」


 それが意外だった。

 どうやら両親と妹と一緒に住んでいるようだし、仲良くやっているようだ。

 俺の部屋に転移したはずなのに、離れのほうにいるようだし。


 俺とじいさんは母屋に住んでいる。

 じいさんと両親は仲が悪い。

 俺も両親と仲が悪い。

 ついでに言うなら妹とも仲が悪い。

 じいさんと妹は仲が悪いわけではないが、じいさんが俺を庇うので疎遠になっている。


「アイツらに、『赤の他人の世話をする』っていう感情があるとは……」


 両親も妹も、『自分以外は利用するために存在する』って考えの持ち主だ。

 俺は両親と妹にさんざんこき使われてきて、それを知ったじいさんが俺を引き取り母屋に住まわせた。

 両親は、じいさんと一緒に住みたくないわりに母屋に住みたがり、俺とじいさんに離れに移れと言う。

 母屋も離れもじいさんの名義なのにだ。


 感謝を知らず、申し訳ないという心も知らないのが俺の両親で、妹は外面が良いためまだちょっとはマシだが俺に対しては感謝の欠片もない。

 連中の、俺に対して必ず言う一言は「お兄ちゃんなんだから当たり前」だ。

 俺は妹の兄ではあるが、両親の兄になった覚えはない。

 また、他人に対しては「それくらい、いいでしょう?」と言う。

 近所でも評判の極悪夫妻が俺の両親だ。


 そんなアイツらが、ちょっとした荷物ですらも持てないほど非力で歩くのも億劫がる世界からやってきた、おっちょこちょいの魔法使いを自分の家に住まわせた、だと?

「いったい何があったんだ……」

 ちょっと信じがたい。


 マーナガル氏が俺を見て、申し訳なさそうな顔をした。

「……もしかしたらドークリーは、催眠魔法を使ったかもしれません。強いのはかけられないでしょうが、『もう一人兄妹がいた』程度なら、思い込ませることはできるでしょう」

 その説明で納得した。

 そうじゃなけりゃ、連中が自分たちの得にならない奴の世話をするわけがない。


 マーナガル氏が説明してくれる。

「ドークリーは放浪しているようではないのは確かです。……となると、座標の特定がしやすいですね。ヒムロ氏のご両親と住んでいるのでしたら、寝ている場所は同じはず。だいたいの座標が割れたら、そこから絞り込み、移動しなくなった場所で入れ替え魔法を使います」


「座標はどうやって割り出すんだ?」

 俺が尋ねると、マーナガル氏が鏡を指した。


「この鏡の先にドークリーがいます。さすがにここへ連絡する唯一の手段を遠ざけないでしょう。たとえ遠ざけたとしても、とにかく座標が特定出来ればヒムロ氏をそこへ送還出来ますから。……ドークリーが戻りたくないのなら、それでいい。ただ、無理やりここへ送られたヒムロ氏は、なんとしてでも帰します」


 おぉ……マーナガル氏、めっちゃいい人だ。


「ありがとう。なんとかここで暮らしていける算段はついているから急がなくていいんだけど……じいさんが心配しているだろうから話したいんだよな。ドークリー氏に伝えてほしかったんだけど、アレはダメだな。責任感とかゼロだろ。ラクシャリーさんがキレる理由がわかったわ。他人に迷惑をかけても平気なタイプだ。申し訳ないとも思ってないだろうね」


 俺の言葉にマーナガル氏が困った顔をする。

「……いや、申し訳ないとは思っているはずだ。だが……それを表現するのが下手なんだ」

「下手ってなんだよ。それって申し訳ないって思ってないのと一緒だから」

 思いっきりツッコんだ。


 申し訳ないって思ってるなら、謝りもせず俺の言ったこともせずに消えないだろ。

 責められてめんどいから逃げただけだろ。

「俺、謝れとは言ってない。じいさんに会わせろって言ったんだぜ? そしたら、嫌だからって逃げやがった。申し訳ないって思ってるならそんなことしないだろ」


 マーナガル氏、黙る。

 しばらくしてうなずいた。

「……そう言われればそうですね。では撤回します。あの子は放置されて育てられたので、他人に対してどう接していいのかわからないのです。ですので、感謝を知らず、罪悪感から逃げることしか知らず。逃げれば誰かがやってくれると知っているのです」


 今度は俺が黙る。

「……なんで両親と仲良くやってんだろ? いや仲良くやってないのかもしれないけど……」

 催眠魔法を使うと両親の性格も矯正できるのか?

 じいさんに助けられたのかと思ったけど、なら取り次いでくれるはずだし。


 それに、両親は俺がこっちに来ても大丈夫だって彼女に言ったようだ。

 それは確実に俺の両親が言うセリフだから納得した。

 テメーらもコッチに来いよ暮らせるか試してみろって言いたくなったが、アイツらは他人に迷惑をかけることをなんとも思わないから、平気そうだよな……。


 他人の痛みは百年どころか死んでも感じないのがアイツらだ。


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ゴミカス同士、気が合ったんじゃない?
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