第44話 ブランドー氏に顛末を聞いてみた
ゼロエロの機嫌をとるため無駄に布で磨いてみたりしていたら、ようやくブランドー氏が戻ってきた。
「はぁ……。ようやく解放されました」
俺は戻ってきたブランドー氏に文句を言う。
「……アイツ、なんなんだ? ゼロエロがエルフって言ってたけど……。何? エルフって、助けられると悪態をついてしつこく絡んでくる種族なの? なら、次からは絶対に見殺しにするけど」
『うむ。我も賛成なのじゃ。恩知らずにも程があるぞ。我が身を挺して助けてやったのに、なんじゃあの態度は!』
ゼロエロはガチで身を挺して助けたからな。
『礼を言え』と憤ってもいいと思う。
ブランドー氏が、パチパチと目を瞬かせてゼロエロを見ると、弾けるように笑う。
「ハハハハハ! 確かに助けたのはゼロエロ様ですね! ……そうでした」
どうしたんだ、急に。
笑うブランドー氏を見ていたら、ブランドー氏が俺に告げた。
「……そうなんですよ。エルフはあんな感じの種族で、絡まれると面倒なんです。今回、ヒムロ氏が目を付けられまして説得というかなだめるのに苦労しました。また絡んでくるかもしれませんが……助けたのはゼロエロ様ですから。古代遺跡物が助けたのだと突っぱねましょう」
……サッパリわからんのですが。
「どういうことだ?」
俺が尋ねると、ブランドー氏が教えてくれた。
エルフは、プライドが高い。
他の種族を〝劣等族〟と蔑み下に見ている。
それぞれの種族もそれぞれプライドが高くて他の種族を下に見ることがあるが、エルフはそれどころじゃないらしい。
エルフは自分たちが飛び抜けて美形だと思っていて、人族はその美的感覚に近いが、他の種族はそれぞれ独自の美的感覚を持っている。
だが、人族がエルフを美しいと認めてしまったため、エルフは他種族も認める美しさだと自慢しているのだ。
だからなのか、プライドを刺激されることがあると、めちゃくちゃ絡んでくるのだという。
それが今回の出来事だ。
「……いろいろ言っていたんですけどね……。揉めたのが、ヒムロ氏が助けたことに対してです」
ブランドー氏が言いづらそうに俺に言う。
「つまり、よけいなことをしやがって、って言ってるのか?」
「……それも言ってますが、言いたいことは違いますね。……あのエルフ、ヒムロ氏を気に入ったんですよ。だから絡んでヒムロ氏の気を引こうとしたんです」
「は?」
言ってる意味がわからないぞ?
「さらに、あのエルフは身分が高いようで……ヒムロ氏に褒美をくれてやるという理由をつけて、婚姻に持っていこうとしたので揉めました」
…………?
「ごめん、まったく理解できない」
ぜんぜんつながらないんだけど、いろいろ。
『簡単な話じゃな。つまりはあのエルフ、お主に一目惚れしたのじゃ』
「アレが一目惚れした奴の態度なのか?」
『なんじゃろ』
なんじゃろ、って言われても……。
「種族間の溝は深いね。俺は無理。受け付けない」
「私もそれがわかったので、今までお断りしていたんですよ。ただ、身分が高い故にゴリ押ししそうでどうしたものかと思っていましたが、助けたのはゼロエロ様でしたね。そしてゼロエロ様の本来の持ち主は遺失物管理局。その局長はビーネさん。つまり、彼女を助けた本来の持ち主はビーネさんということで」
俺は口を開けてブランドー氏を見た。
……何? エルフって、助けた男を無理やり結婚させようとすんのか?
最悪じゃん、今後は絶対に助けないようにしようっと。
あと……。
「ビーネさんがかわいそうなことにならないか?」
「既婚者ですから、どうにもなりませんよ!」
ブランドー氏がさわやかに言った。




