第43話 魔剣に謝ってみた
俺はひとまず傍観に徹して、ブランドー氏に任せている。
任せているんだけど……その異種族の誰かさんは、ずーっと俺を睨んでいるんですけど。
まさか、殺されそうだったのに「よけいなことをした」とかインネンつけるつもりか?
言っとくけど、ゼロエロを投げなかったら絶対に死んでたからな?
内心でそう思いつつ、俺はインネンつけられないようキラータイガーのほうへ向かった。
「毛が硬そう」
『普通の剣なら弾くじゃろうな。お主なら斬れるだろうが』
大型の獣は毛がゴワゴワなのだろうか。
触ってみたら、やっぱり硬い。
「その点、うちの三匹は触り心地がいいよなぁ」
釘バットでコロコロしたあとブラッシングが日課だ。
ものすごくしなやかですべすべで冷たくてあったかい。
毛っていうか、ツルツルのシルクみたいな触り心地なんだよなぁ。
……と、思い出しながらキラータイガーの毛を触っていたら、怒鳴り声が聴こえた。
「別に、アンタが助けなくたって、私一人でやっつけられたんだからね!」
うわー……。
あぁいう恩知らずなことを言う奴、前いた世界にもいたけど、こっちにもいるのか。
俺はウンザリしつつも無視した。
ブランドー氏が言われていると思ったから。
……そしたら、
「ちょっと! 私が話しかけてやってるのに、なんでそんな魔物を触ってんのよ!?」
と、近くで怒鳴り声がする。
……いや、気のせいだ。
ブランドー氏と話しているはずで、二人が話しながらこちらに来ただけだろう。
『おい魔王。お主に話しかけておるぞ?』
と、機嫌が直ったらしいゼロエロが話しかけてきた。
「ん? ゼロエロ、どうかしたか?」
『いやどうかしたかではなく。……お主が助けたエルフが近寄ってきて、お主に話しかけておるぞと言うてるのじゃ』
エルフ?
……って、確か、物語じゃ美形が多いって定番の?
俺が声のほうを見ると……。
「うわ、きったねぇ」
美形以前の問題だ。頭からいろいろひっかぶっているのでめちゃくちゃ汚い。
エルフらしい汚い誰かさんは、真っ赤になった。
「……こ、このっ……!」
俺は近寄られたくないので、ブランドー氏に言った。
「ブランドー氏、俺、キラータイガーをハリーに預けに行くわ」
「え!? あ、はい……」
ブランドー氏はなぜか俺とエルフを見比べつつ、うなずいた。
俺はキラータイガーを担ぐように引っぱりながら引きずっていく。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 他に何か言うことがあるでしょ!?」
とかエルフがわめいているが、俺にわめいているんじゃない。
俺にだったりしたら、助けたことを後悔しそうだから違うと信じる。
……元いた世界でもいたんだよな……。
ワケわかんねーことを怒鳴ってインネンつけてくる奴が。
俺は人見知りしないんで話しかけられたらたいていの奴とは話すけど、アノ手の輩は話が通じないし嚙み合わない。
同じ言語を話しているはずなのに、何を言ってるのかわからないし俺の言うことも相手に通じない。
数人相手して、それ以降は諦めた。
周囲も、「聞き流してハイハイ言ってりゃ満足なんだよ、アノ手の子はさ」って言ってたので、ハイハイとは言わないが無視することにした。
それでもしつこくなんか言ってきたが、無視し続けたらいなくなったので対応は合ってるはずだ。
昔をボンヤリと思い出しながら俺はキラータイガーを運んだ。
ブランドー氏が間に入ってくれたようで、途中でエルフの金切り声とが止まり、ブランドー氏のなだめる声がした。
ハリーが俺に向かって走ってきて、後ろ向きで止まり、後部のドアを開けた。
「入るかな?」
『無理やり突っ込めば入るじゃろ』
と、ゼロエロが言ったので無理やり押し込んだら吸い込まれるように入っていった。
「……ゼロエロを怖がらせてまで助ける価値はなかったな」
俺がボソリとつぶやいたら、ゼロエロが心なしか嬉しそうな声で返した。
『お主は本当に魔王じゃのう。……だが、ま、恩知らずは我の作られた時代にもいたぞ。いちいち気に病むな。でももう投げないでたもれ』
最後の言葉に笑う。
「わかった、悪かったよ。反省してる。もう投げないから」
『ならいいのじゃ。許すのじゃ!』
弾んだ声でゼロエロが言った。




