第41話 魔剣を投げてみた
けっきょく、今回の駆除にはブランドー氏がついてくることになった。
俺がやらかしそうで不安らしい。
不安って言ってるわりに、ハリーに乗ってはしゃいでいるんですけど。
「我らも古代遺跡物が使えたらいいのだがなぁ」
ブランドー氏がぼやいているので即言い返す。
「魔法に頼りっきりにならないで、自分自身の身体を鍛えろよ。まずは歩け。ちょっとした移動で魔法を使うな」
そして、さっきの講義のお返しとばかりに説教を垂れる。
「いいか? 俺だって、最初っからこうじゃないっての。鍛えたんだよ。……確かにフィジカルはある方らしいけど、ものっすごく努力したからな。今からでも遅くない。地道に身体を鍛えろ」
「えぇ……」
ブランドー氏、ものすごく嫌そうな顔になったよ。
説教をかましている間に、目的地に着いた。
到着したのは丘もある草原。木々もそこそこ生えているので見通しは良くない。
「ここです。……かなり大型の魔獣が出ますので気をつけてくださいね!」
ハリーから降りるとキリッとした顔で杖を構えるブランドー氏。
俺はブランドー氏を見て尋ねる。
「なぁ、こんな足場の悪い場所でブランドー氏は戦えるのか? 歩くのだってやっとだろ」
もやしっ子だろうに。
ブランドー氏がキョトンとする。
「歩くわけないじゃないですか。というか歩ける場所ではないでしょう? 魔法で移動しますよ」
……ホント、なんでも魔法だな!
『お主にもかけてやろうか?』
とゼロエロが言ったが俺は頭を振る。
「戦うのにそんなんかけられたらうまく動けないだろ。というか、俺は普通に歩けるから」
ぬかるんでいて足が取られるとかならまだしも、俺にとってはまったく問題のない場所だよ。
俺とブランドー氏が移動すると……なるほど。
「なんかいるね」
さほど遠くないところから、鳴き声が聴こえてきた。
ブランドー氏がうなずく。
「あれは、キラータイガーです。倒してしまって大丈夫な魔獣ですよ」
「了解。ブランドー氏は自衛してくれ。ちょっと戦ってくる」
鳴き声のほうに向かうと……うん? もう誰か戦っているな。
「先を越されているな」
俺が額に手をかざして見ていると、ゼロエロが返した。
『運悪く遭遇したのではないか? 倒せそうにないぞ。というか、死ぬんじゃないか?』
そうなのか。
隙を突こうとしているように感じるんだけど、どうしようかな。
下手に声をかけると邪魔しそう。
ブランドー氏もやってきた。
「あれは……助けなくていいのですか?」
「助けてほしいなら助けるんだけど。どうなんだろう?」
ブランドー氏はちょっと考え込み、
「魔獣の気を引いてみましょうか」
そう言って、軽く杖を振る。
「スカンキースモーク」
何かが杖から発射され、魔獣の近くで破裂する。
魔獣がそちらを見た。
とたんに対峙していた誰かが何かを撃ち出す。
……だが。
『無理じゃ』
当たったものの、致命傷ではない。
「うん、確かに死ぬかもしれないな」
隙を作って何かの攻撃魔法を当てたものの、殺せなかった。
しかも、本人それで倒せたかのように攻撃をやめてしまったのだ。
いや、ガンガンやれよ!
そこはたたみかけるところだろ!
「しかたないから、助っ人してくるわ」
『いや、間に合わんじゃろ、死ぬじゃろ、アヤツ』
うん、そうかも。
魔獣が攻撃をやめて隙だらけの誰かさんに向かって前足を振り上げたからな。
普通の虎の攻撃ですら死ぬからな、それよりもデカい虎の、サーベルみたいな鉤爪で引っかかれたら綺麗にスライスされるよな。
……しょうがない、奥の手だ。
「ゼロエロ、特攻だ!」
俺は思いきりゼロエロを投げつける。
『……やめろぉぉぉおおお!』
ゼロエロが絶叫しながらキラータイガーに飛んでいった。
キラータイガー、完全に不意打ちだったらしい。
ゼロエロの声に振り向き、右目に深く突き刺さった。
『……お主、覚えておけよ! 【破壊せよ】』
ゼロエロが怒りながらも詠唱して、キラータイガーの頭を吹っ飛ばした。
「おぉ~。さすがだなゼロエロ」
「さすがですな! ゼロエロ様!」
俺とブランドー氏で拍手した。




