第40話 魔獣と亜人の区別を教わってみた
俺が猫をかわいがっているのを見てなんか言ってるゼロエロとそれに同意するブランドー氏。
聴こえなかったことにして礼を言う。
「んじゃ、ありがとよ。……おーし、お前ら行くぞー」
猫たちを籠に入れて出ようとしたら、ブランドー氏に引き止められた。
「おっと、ちょっと待ってくれ。害獣駆除討伐の依頼が出ているんだ。頼まれてくれないか?」
それで思い出した。
「あ、俺もまだ用があったんだ。引き受けるけど、駆除していい生物を駆除しちゃまずい生物を教えてくんないかな? 俺、区別がつかなくて」
っつったら、ブランドー氏がドン引きした。なぜだ。
「言っておくけど、俺の元いた世界じゃ虫以外は気軽に駆除出来ないからな?」
と念押しで言ったら、
「そ、そうなのか?」
と、冷や汗を拭くブランドー氏。
「……そうか、生態系が違うのか。俺とヒムロ氏は同じ生物に見えるから生態系も同じかと思ったが……。いや、よく考えればヒムロ氏と我々は結構違ったな、そうか、ヒムロ氏の世界は人間が生物の頂点に立っているのか」
ブツブツ言い出したよ。
いやいや、俺とブランドー氏は同じ人間だと思うけどね?
「古代遺跡物に棲みついてたデッカい熊は、いなかったな」
熊は確かにデッカいけど、ゾウみたいな大きさはしていない。
「ジャイアントキラーベアに遭遇したのか! よく無事だったな」
ブランドー氏に驚かれた。
「なんとかしたよ。でもって、アレは駆除して良かったんだよな?」
ダメって言われても困るけど。襲ってきたし。
「あぁ、大丈夫だ。……そうだな……。ヒムロ氏は、猫は殺さなかったんだろう?」
「そりゃ、もちろん」
ブランドー氏が思案する。
「……基本の考え方は、『人を襲うか否か』だ。人を襲った魔獣は、人の味を覚えてまた襲う。だから駆除する」
わかりやすいな。
「どの生物が魔獣で、人を襲うかなのだが……。ちなみに、ソレを殺さなかったのはなぜだ?」
ブランドー氏が猫を指さした。
「ん? これか? 同じ生き物があっちの世界にいたんだよ。ちなみにあっちの世界でこいつらは益獣。人間と共存関係にある生き物」
「なるほど……。では、こう考えてくれ。『我々が駆除を申し出ない魔獣は、基本不殺でお願いしたい』と」
あー……。
そういう感じか。
「襲ってきた場合は?」
「それは積極的に駆除してくれ。ヒムロ氏を襲う魔獣なんて、間違いなく理性が飛んでいる。どのみち駆除対象になるだろう」
「おい」
なんか言われたぞ?
「……ま、いいけどな。じゃあ、襲ってくる獣は皆殺しだな!」
「あ、あぁ……」
ブランドー氏が、「大丈夫かな?」って不安げな顔してるんだけど、そもそも襲ってきたら殺すしかないでしょ。
向こうは殺す気なんだ、こっちも殺す気で挑まなけりゃ殺されるじゃないか。
『おい待て魔王。……ブランドーとやら、コヤツ、亜人を知らんのじゃ。亜人を魔獣と間違えて殺すかもしれんぞ』
「えぇっ!?」
ブランドー氏が飛び上がって驚いた。
それから俺は、席に座らされ、ブランドー氏から亜人の種族、生態、特性とは、の講義をみっちりと受けた。
……寝るかと思った。
大学の講義かっつーの……。
「……ゼロエロ、任せた」
『お前、やる気がゼロじゃな。くれぐれも魔獣と間違えて殺すなよ? 好戦的なのもおるが、手合わせじゃからの? 本気で殺すなよ?』
向こうが本気なら、こっちも本気でいきたいけどな。
襲ってくるのが悪い!
「ゼロエロ様! くれぐれもよろしくお願いしますよ!? 友好国との関係性が絡んできますからね!『魔獣と間違って殺しました』なんて言ったら外交問題ですよ!」
ブランドー氏が声を裏返して叫んだ。
俺は手をひらひらと振って朗らかに返す。
「大丈夫だって。ブランドー氏も言っただろ、襲ってくるのは駆除対象だ。犯罪者に決まってる」
「そうじゃないのもいるんですよ! お願いしますから!」
ブランドー氏が悲鳴を上げた。




