第38話 ラクシャリーさんから顛末を聞いてみた
俺とビーネさんが会話している間にも続々と局員が現れた。
「じゃ、行くか。力作業は言ってくれ」
俺が声をかけ、皆でゾロゾロと建物の中に入っていった。
遺失物管理局が建物内部を調査した結果、『建物自体が有用』という結論になった。
「かつての療養所の研究になる」
とのことだ。
中の物は運び出さず、そのまま管理するとのことだった。
調査が一段落して俺とビーネさんが建物から出たころ、ラクシャリーさんが疲れた様子で現れた。
ビーネさんがラクシャリーさんに気づくと苦笑する。
「大変だったようだな」
俺も気がついた。
「どうしたんだ?」
「君の送ったメッセージが波紋を呼んだんだ」
ラクシャリーさんの代わりにビーネさんが答える。
「……あぁ。あの贋作娘か」
俺が眉を寄せる。
ビーネさんが苦笑する。
「そう言われると我々も耳が痛い。だが、古代遺跡物の解析は歴史を紐解きこれからの発展につながると我々は信じているので、模倣をそう嫌わないでほしい」
俺は肩をすくめた。
「アンタ達が作り上げた物を簡単に真似されて儲けられても文句を言わないのなら別にいいだろうな。でも、作った古代人は苦労して試行錯誤して作りあげたと思うよ。ま、もういないから文句は言わないか。でも贋作は贋作だ」
ならばせめて古代遺跡物の発掘に力を入れるなりすればいいのに、手に入れた獲物を横から攫うような真似をして、しかも言うに事欠いて「価値がわからない奴」ときたもんだ。
俺からしたら、それはどっちだって言いたくなる。
「……そうね。彼女は古代遺跡物を自分の欲求のために借り受けたいとは思っているけれど、手に入れるための努力はしないし自分の作った物を簡単に模倣されたら怒り狂うでしょうね。そこが遺失物管理局との違いよ」
ラクシャリーさんが言った。
「彼女は魔道具を作りたいの。ただひたすら作りたい。だから、遺失物管理局に入局はしなかった。よけいなことは一切やりたくなかったから。ただし、彼女の祖父は、遺失物管理局に入局していたわ。途中で魔道具作りに専念するために退局したけれど。だから、ある程度局員に顔が利くのよ」
ラクシャリーさんの話を聞いた俺はうんざりした顔をした。
また親の……この場合は祖父の七光りで無理難題を通そうとする奴がいるのか、と。
ラクシャリーさんは続ける。
「孫の身柄引き受けと、ついでにあの浮遊車を借り、さらには解析を手伝わせるようにゴリ押しするために局に居合わせて……ついでだから貴方のメッセージを聞いてもらったのよ。――二人とも怒り狂ったわ」
ここまで話したラクシャリーさんが、満面に笑みを浮かべた。
「『贋作家などではない!』って怒鳴り散らして、『二度と古代遺跡物など目にするものか! 私の作品は私が考え作りあげたものだ!』って言い切って、孫の手をひいて出て行ったわ。彼女はそこまでは言ってないけど、怒っていたのは確かね。――というわけで、二度と貴方の前にも現れないと思うわ。確約は出来ないけれど」
「しなくていいよ。それに、現れたら『盗作のニセモノヤロウ』って言ってやるわ」
俺はラクシャリーさんに返した。
「確かにヒムロ氏の言うことにも一理ある。今後、『魔道具作りのために貸し出してほしい』という頼みは、作品の設計図を開示する技師のみにしよう」
と、ビーネさんが言い出した。
局で開発された魔道具については設計図が開示される。
それこそ、俺の言った『簡単に真似されて儲けられても文句を言わない』状態だ。
なぜなら局は、国の文化や生活の発展のために古代遺跡物の仕組みを解明しているのだから。
それに嫌気が差したのが、先ほどの偽兎獣人の祖父らしい。
技師としては非常に優秀だったが局勤めだと他の事もやらなければならないし、何より大変な思いをして解析し自分が作りあげた魔道具の設計図が無料で公開され模倣されることに対して納得がいかなかった。
退局して魔道具技師となり、より改良した魔道具を作り売り捌き、新作を作るために元遺失物管理局局員という伝手を利用し古代遺跡物を解析するということを行っていたのだ――と、ラクシャリーさんがブリザードスマイルで語り聞かせてくれた。
薄ら寒くなったので、
「じゃ、俺、いったん戻って診察と世話の仕方を聞いてくる」
そう言ってハリーに乗り込もうとした。
すると、さっきの笑顔とは違う、明るい笑顔のラクシャリーさんとビーネさんが、
「私もいったん戻ろうと思っていたところだ」
「私は伝えにきただけだから」
って口々に言ってきた。
つまりはドライブしたいってことだなとわかり、笑った。




