第31話 キャンプしてみた
休憩した後、片付けてまた伐採して道作り。
『乾燥してさっきくらいの木片にカットするくらいならハリーにできるぞ』
って、ゼロエロが言い、ハリーを振り返って見たら「ピッ!」とどこかしら誇らしげに鳴いた。うちのハリーが出来る子過ぎる。
「じゃあ、細かい木片と、俺の腕くらいの薪とを作ってくれ。段階的に燃えやすい木片から、火を維持するために太めの薪を足していくってのがいいからさ」
そう教えると、せっせと木をぶち込んでいった。
日が暮れそうなほどになって、ようやく到達した。
「ちょっとヤバいかなと思った」
ゼロエロは人じゃないから夜中だろうと方向感覚を狂わせることはなく作業はするが、俺はさすがに山の闇だと見えなくなる。
ライトで照らせばその辺りだけは見えるだろうが、すっ転んで転落したくない。
途中から木が生えていない岩になったりしていたので、ゼロエロの魔法である程度ならしておいた。
だが、基本はハリーが通れるくらいの道があればいい。別に頼まれて道を作っているワケではないからな。
古代遺跡物のある場所付近には、けっこう大きめの広場があった。古代遺跡物は、その奥の社にあるらしい。
「日が暮れそうだから、今日はここまでにしようぜ。古代遺跡物の調査は明日の朝にしよう」
俺が言うと、ゼロエロが弾んだ声で言った。
『ならば、また先ほどの〝たき火〟をやるのじゃな!?』
ウキウキしているのが伝わる。
「そうだな。……なんだよ? キャンプが好きなのか?」
剣なのに?
いやタロウや釘バットも好きそうだから、古代遺跡物はキャンプやドライブが好きなのか?
『カッコよさげなのじゃ!』
ゼロエロが答えた。意味不明。
「剣なら『強敵を斬り伏せるのが快感なのじゃ~』とか言えよ」
『怖ッ! ――その発想が魔王なのじゃ!』
世界征服を企む魔剣が何を言うか。
たき火セットを用意して火をおこす。
「フツーに焼くかな」
タロウに肉と野菜を出してもらう。テキトーに切って塩とスパイスを適当にまぶして、網に乗せてただ焼くだけ。
『雰囲気があるのう』
よくわからないが、ゼロエロはこういったのが好きらしい。
……と思ったら、同意するようにタロウと釘バットが縦に動いたな。ピッとかいう音も聴こえてきたのでハリーも同意したのか。
古代遺跡生物、キャンプ好き。
「前の持ち主はこういうことやらなかったの? っつーかお前らって、過去の記憶があるのか?」
何の気なしに尋ねたら、珍しくゼロエロが沈黙した。
しばらくして、ゼロエロが語り出した。
『――我の話の前に、まずはハリーじゃが、倉庫にずっと眠っておったな』
それは聞いた。
『タロウは、作られたものの飾られておったらしいぞ』
つまりは売れなかったのか?
『釘バットは、神殿から出たことがない』
箱入りお嬢様みたいだな。
『…………我は…………城におった。たまに、城から出た』
ポツリとゼロエロが話した。
『…………我は、我ほど優れているものはいないと思っておったのじゃ。そう自惚れておったのじゃ。だから…………これほどまで永く遣い手が現れぬとは思っておらなんだ』
ん? つながらない。けど、あんまり思い出したくないようなので聞き流した。
そして、沈んでいるゼロエロを掴み鞘を払うと、思いっきり投擲した。
『わぁあぁあああ!』
悲鳴を上げながら飛んでいき、ズガーン! とぶっとい木の幹に突き刺さるゼロエロ。
ビィィィイーン……と震えるゼロエロに向かって歩き、声をかけた。
「よう。元気出たか?」
『…………お、おぬ、お主はっ! な、なんてことをするのじゃ! び、ビビったわ!』
剣なのにビビるのか。
柄を掴んで思いっきり木の幹から引っこ抜く。
「お前でもちょっとしか刺さらないって、けっこう固い木なんだなコレ」
『どうでもいいのじゃ! なんで投げるのじゃ!?』
ゼロエロが叫ぶ。
「いやなんか、元気出るかなと思って」
『お主の慰め方はおかしいぞ!』
キーキー叫ぶゼロエロを、もう一度鞘に戻して立てかけた。
「嫌なことを思い出すとろくなことがないからな。俺はそう。だから、忘れようぜ。お前らは食えないだろうから、たき火を楽しめ」
そう言うと俺は、ちょっと焦げた肉と野菜をガツガツ食った。




