第27話 さっそく告げ口してみた
なんと、目の前の不審者Cは兎獣人ではなく、単なる駄々っ子コスプレイヤーだと判明した。
……そういやローブを着ているな。
ボコボコにしようと思っていたのに、呆れて毒気が抜かれてしまった。
「……ったく、今回は勘弁してやるから二度と俺に難癖つけんなよ。他人のものを勝手にブン捕ろうとするな。あと、知りもしない奴を見下すな。次やったら手じゃなくて頭にコレを当てるからな!」
俺は言い捨てるとハリーに乗り込み、出発した。
嫌な目に遭ったぜ。
ろくでもないことを思い出すと、ろくでもない目に遭うのかもしれない。
もう思い出すのはやめよう。
「タロウ、音声記録装置を出してくれ」
俺がタロウに向かって言うと、タロウが音声記録装置を袋の口にくわえるような形で出してきた。
犬だ。しかも賢い。
俺はタロウを撫でつつ受け取って録音の文字をタップし、さっきの出来事を話す。
停止をタップすると、タロウに配達籠を出してもらい、音声記録装置を入れると後部座席に置いてルーフをオープンにした。
すると、どこからともなく大きめの灰色の鳥がやってきて、後部座席にとまった。
俺はポケットに入れていたナッツを出すと鳥に放り投げる。
ナイスキャッチ。ちゃんと嘴で受け止めた。
「局に持っていってくれ。よろしくな」
鳥は「プェーッ」と一声返事して飛び立った。
……なんかイメージと違う鳴き声だったのでちょっと驚いたのは内緒にしておく。
ヒヨドリっぽいからピヨピヨ鳴くかと思ってた。なんというか、ちょっと下手くそなラッパみたいな鳴き声だな。
『……お主、さっきはずいぶんと殺気立っていたな?』
ん?
ゼロエロが変なことを言ったのでキョトンとした。
「そうか? なんか話が通じなさそうな上に強そうだったから、喧嘩を売買する気ではいたけど」
『どこが強そうだったのかさっぱりわからんが、お主に勝てる者は現在この国にはおらんと思うぞ』
ゼロエロがそう言ったので返した。
「んーまぁ、アイツを人間じゃない……いやこの世界じゃ人間のカテゴリなのかもしんないんだけど、兎の獣人……兎の身体能力を持った人間だと思ったんだよ。ホラ、耳が兎みたいだったからさ」
俺の言葉にゼロエロが啞然としたようだ。
『…………お主がいた世界には、兎の耳を持った人間がおったのか?』
あ、そういう勘違いね。
「いやいないけど。この世界にはいるかもしれないって思った」
『いや、おらんじゃろ。我も世界中を旅したわけではないが、見かけたことはないぞ』
ゼロエロが言下に否定した。
獣人スキーの皆様へ、悲報です。
この世界、ファンタジー世界だというのに獣人は存在しないとのことです、まる。
俺はボソッと呟いた。
「そっか、亜人はいない世界か」
ま、俺の世界にもいないけどね。
ちょっと残念だなって考えてたら、ゼロエロが言った。
『いや、亜人はおるぞ』
「どっちなんだよ!?」
いるのかよ!
『お主が言ったような亜人はおらん。じゃが、人族から見て〝亜人〟と呼ばれる種族はおるぞ』
……なるほど。そういうこと。
「たとえばどんな?」
『ゴブリン族じゃな。北東の森と山に囲まれた国におる。温厚で世話好きな種族じゃ』
ゴブリンは亜人の分類の世界か。
……ヤバいな、退治していい魔物を教えてもらった方がいいかもしれない。
俺、人殺しにはなりたくない。




