第28話 次の目的地へ向かってみた
しばらく浮遊車を走らせていたら灰色の鳥がやってきた。
後部座席に籠を放り込むと、そのまま飛び立……たないな。後部座席に止まってこっちを見ている。
持っていったのと同じ鳥か?
ナッツを狙っているのか。
「はいありがとよ、お駄賃だ」
ポケットからナッツを出して放り投げると、嘴で受け止める。
「プェーッ」
って鳴くと、飛んでいった。
あの鳴き声って、もしかしてお礼を言っているのか?
「面白い鳥だな」
『賢いからの。危害を加えなければ有用じゃな。くれぐれも食べようと思うなよ?』
ヒヨドリっぽいから食べたいとは思わないね。おいしくなさそうだもん。
車を止めて、さっそくメッセージを聞いてみた。
『ラクシャリーです。……とんだ災難に遭ったわね。その長耳の魔道具をつけた不審者は、公務執行妨害および強盗罪で捕まえたわ。ただ……彼女、ずっと捕まえておくのは厳しいし、ちょっと面倒なことになるかもしれないの。簡単に言うと、彼女ってちょっとした有名人で、ある程度のワガママがきくのよ。でも、あなたには被害がないように食い止めるから安心してね』
俺はつい顔をしかめてしまう。
ラクシャリーさんはアレだな、仕事ができるからなのか余計な仕事が増えていくタイプだ。
俺としては、ラクシャリーさんみたいな人に余計な苦労を抱えさせたくない。
録音をタップして話す。
「どんなワガママ言い出してるのか知らねーが、アイツに『返り討ちにしてやるからかかってこい』って伝えてくれ。確かに古代遺跡物は借り物だけど、黙って譲る俺じゃねぇ。古代遺跡物にはもちろんだが、俺自身が認めなきゃ絶対に認証は解除しねぇ」
停止をタップし、籠に放り込んだ。
するとすぐに鳥がやってくる。
後部座席に止まって期待のまなざしでこっちを見ている……。
絶対さっきの鳥だろ? って思って振り返って目が合ったら、
「プェッ!?」
って飛び上がって翼をバサバサさせた。
「ゼロエロ、なんか鳥が驚いてるみたいなんだけど」
『お主の顔が怖すぎるのじゃ。とって食われると思ったのじゃ』
のじゃ、じゃねーよ。失礼な!!
「食うわけないだろ、失礼な。……ホラ、コレ食え」
ナッツを放り投げたら慌てながらもキャッチする鳥。
「プェッ、プェッ」
とか鳴きながら籠をつかんで飛び立っていった。
「脅したわけじゃないってのに、なんで驚いてたんだ?」
俺が鳥を目で追いながらつぶやいたら、ゼロエロが返した。
『だから、お主がとって食おうと思っているような顔をしているからじゃ! 現実と鏡を見るとよいぞ?』
失礼な奴め。
また車を走らせると、ゼロエロが言う。
『魔王のくせに下々の戯れ言などを気にするのだな。お主に敵う者はおらんし、我の遣い手であるという時点で世界征服もできるのじゃぞ? あんな小娘が何をさえずろうが無視しておけば良いのじゃ。そもそも我らはお前にしか扱えん』
「俺は魔王じゃなくて、英雄!」
ゼロエロに言い返す。
『魔王じゃなければ〝癒やしのロッド〟を、あ~んな凶悪な見た目にするわけなかろうが!』
ゼロエロが変なことを言い出した。
癒やしのロッド? なんだソレ?
俺がキョトンとしたら、ゼロエロが叫んだ。
『お主が〝釘バット〟と名付けたアレじゃ!』
…………。
マジかよ、アレ、武器じゃないのかよ!
な、なんと、釘バットは棍棒でもバットでもなく、癒やし棒だったらしい。
アレを不調の部分にコロコロ転がしたり押したりすると、癒やしの魔法で体調が良くなるそうだ。うん、ツボ押し棒だな。
そりゃー、釘を刺されるのは嫌だったろう。用途が違う。
「いやいや、釘をイボイボだと思えばワンチャンアリだろ? イボイボの刺激で血行が良くなる感じ!」
って俺がつぶやいたら釘バットが釘を引っ込め、イボイボを出してきた。
俺は釘バットを片手に持ってかざす。
「おぉ、これならツボ押し棒っぽい」
『今さら取り繕っても遅いのじゃ』
ボソッとゼロエロがつぶやいた。
知らなかったからセーフなの!




