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異世界転移者、魔剣を携え旅をする~魔法が使えないけど、愉快な古代遺跡(生)物たちが助けてくれるので問題ナシです  作者: サエトミユウ


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第2話 魔法世界で生活してみた

 しばらく暮らしてみて。


「魔法が使えないと生活できない」って言ってたけど、そこまで言うほど不便じゃないってのが感想だ。

 そもそもがココって、俺の元いた世界くらいの文明がある。

 一部遅れていたり進んでいたりはあるけど、アニメやゲームでよくある中世ヨーロッパとかではない。

 建物は石造りだったり木造だったり照明がランタンだったりと古めかしいが、驚くほど綺麗だ。

 聞いたら洗浄魔法で維持しているらしい。

 修繕も修繕魔法、明かりも魔法、何もかも魔法。

 向こうの電気並みになんでも魔法を使っている。


 正直、トイレもそうだったらどうしようと思っていたんだけど、そういうのは魔道具らしい。

 めっちゃくちゃホッとした。

 いちいちトイレに行くたびに汚物処理をお願いするとか、心がくじける案件だよ……。

 魔道具は俺の世界で言う『電化製品』みたいな感じで、魔法が使えなくても使える。

 なんでも、魔法も人により種類により得手不得手があり、不得手な魔法を使うと大惨事になるので魔道具の開発が進んだ歴史がある、とのことだ。


 しゃべるのはカタコトだけど、なんとなく言葉の理解は出来るようになってきて、迷惑をかけつつもまあまあうまく過ごして慣れてきたころ。

 現れたラクシャリーさんに、だいたいの経過がわかったので説明すると言われた。


 一番最初に現れた場所に俺は案内された。

 既にそこには一番最初に現れたときにいた人たちが集まっていた。


 ラクシャリーさんが今回も説明するようだ。

 なんか、説明するのっていつもラクシャリーさんだなと思いつつ、俺の向かい側に座って真剣な顔で俺を見ているラクシャリーさんを見返した。


 ラクシャリーさんは杖を振って呪文を唱える。

「だいぶ言葉が上達しているのはわかっているのだけれど、齟齬があると困るから魔法を使うわね」

 申し訳なさそうに言ったので俺は手を軽く横に振った。

「いいから気にするなって。理解できないところを何度も聞き直したり言いたいことが伝わらなかったりで時間を食うのもバカらしいからさ」

 そう言ったら安心したようだ。

「では……説明するわね。まずは、君がここに飛ばされた原因だけど。……予想通りだったわ。予想より厄介だけど」


 現在、アヤツことドークリー・マクラーレン氏の行方がわからなくなっているという。

 捜査局に所属する追跡チームが調査し、居場所までは特定出来なかったが何があったかはあらかた判明したってことだ。


 ――事件当日。寝坊したドークリー氏は、起きぬけで転移魔法を使った。

 ちなみに、転移装置を使わない転移魔法ってのは、杖を振るだけではダメらしい。どうやるのかっていうと、扉に向かって〝ポータルフラワーの粉〟を撒き、呪文と座標を唱えて扉を開けて入ることで移動ができる。

 寝ぼけて慌てていたドークリー氏はポータルフラワーをうっかりひっくり返し大量にまき散らした結果、最近調査していたという呪文を唱え、さらには舞い上がる粉を吸い込んで咳き込んだせいで、まるで違う座標になって入れ替えが行われてしまった、とのことだった。


 説明が終わると、沈黙が降りる。

 ……ドークリー氏には言いたいことが山ほどあるが、まず思う。

 魔法って危険じゃね?


 呪文をちょっと間違えただけでまるで知らないところに飛ばされたとか、ヤバくないか!?

 いや、車の運転とかもちょっと間違えたら一大事だけど、そのために訓練して試験して免許証を渡すし、事故を起こしたら罰金で免許証を剥奪されることもある。

 この世界、魔法を使えるのが当たり前すぎて、こういう事故が起きても「しょーがないなー」で済ませている気がする。

 だってそのドークリー氏って、役人……どうやらエリートに連なるお仕事のメンバーなんだよな、雰囲気的に。

 異世界に住む奴と入れ替えるようなドジっ子がエリートに連なるってのがもう、事故ってもさほど問題視しない証拠じゃないか。


 俺は無意識にしかめっ面していたらしく、気づいたら全員がものすごく恐縮した顔で俺を見ていた。

 俺はハッとして顔を引き締め、尋ねた。

「……いろいろ尋ねたいことはあんだけど、まずは……そのドークリー氏が使ったって入れ替え呪文、使える人って他にいるのか?」

 俺の質問に、ラクシャリーさんの隣に座っていたベイン・マーナガル氏という、俺の父さんくらいの年齢に見える人が答えた。

「この中にいる何人かは使えることは使える。……だが、意味が無い」

 自分と他人の位置を入れ替えるので、ドークリー氏が使わないと俺は元の世界に帰れないってことだ。

 ドークリー氏が使うのを待てばいいのだが、それには問題がある。

「貴方の国に、ポータルフラワーはあるか?」

 って聞かれて、俺は首を横に振った。

 魔法がないのにあるわけないだろ!


 ここで、ドークリー氏の自力生還が無理とわかった。

 現在は他人と他人を入れ替える呪文を探しているそうだ。そもそも入れ替え呪文自体が危険な魔法なので禁呪となっているらしい。

 それを使い、異世界の俺をここに呼びよせ家族と離別させさらには生命の危険にさらしたドークリー氏は、もしもこの世界に生還しても厳しい刑罰が待っているそうだ。


 ドークリー氏、帰るの拒否るんじゃね? と、チラッと思ったが、言葉が通じない魔法のない世界に行ったら不便かもしれないって思い直した。それに、あちらはこの世界ほど綺麗じゃない。潔癖症だったら耐えられないかもしれない。


 あと、危険な魔法は禁呪にしてて、やらかしたらそれなりに罰則があるんだ。ちょっと安心した。

 巻き込み事故起こしといて「ごめーん☆」で済まされたらマジ切れしてたかもしれない。


 マーナガル氏に「入れ替え呪文が見つかるまで待ってほしい」と言われた。

 ドークリー氏の座標指定もしないといけないので時間がかかりそう、とも。


「どのくらいかかりそうなんだ?」

 俺が尋ねると、黙ってしまった。


 しばらくして、言いづらそうに答えた。

「……入れ替え呪文は、探せば見つかるだろう。だが、異世界に行った者の座標指定が非常に難しい」

 失敗した場合どうなるかわからないので、安全を期するならばドークリー氏とコンタクトを取り、向こうとタイミングを合わせたいってことだった。

 そりゃそうだ。

 俺も深くうなずく。


 次に、俺の今後の話になった。

 ラクシャリーさんが厳かに言った。

「ドークリーの個人資産は差し押さえになり、慰謝料としてヒムロ氏に支払われます」

 その金で、付添人……平たく言うなら介護する人を雇わないか、と提案された。


 この世界でも魔法を使えない人はいるので、〝付添人〟という、専門の介護士いるそうだ。

 その人を紹介する、合う合わないがあると思うので互いに納得したら専属契約してもいいし、派遣として交代で来てもらっても良い、残った金で魔法を極力使わない家を作れば不自由なく暮らせると思う、と言われた。


 ……確かに、ずっと面倒を見てもらうわけにもいかない。見るからに忙しそうだしな。

 俺はうなずいた。


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